薔薇の令嬢と守護騎士の福音歌(ゴスペル)

ももちく

文字の大きさ
44 / 81
第4章:浮島に至る道

9:高司祭

しおりを挟む
 温泉付きの宿屋で1泊したロージー、クロード、コッシローの2人と1匹はふかふかベッドで十分な休息を取ることに成功する。やはり1泊銀貨3枚の安宿とはベッドの質はまったく違うモノであった。それでもロージーが貴族時代に使っていたベッドと比べれば温泉付き宿屋のベッドでも物足りない柔らかさと弾力ではあったのだが……。

 しかし、ロージーは2年振りの快眠を得ることになる。なんといっても、ベッドで眠っても身体が布団に住処とする小さな虫に噛まれることがないのだ。寝起きの良さとすれば、火の国:イズモに流れ着いてきてから、1番の心地よさだったといわざるをえないのであった。

「ふわあ。むにゃむにゃ。クロ。おはよう……。なんだか久しぶりによく眠れたって感じ……」

 ロージーは眼を覚ましたものの、まだ頭の中がボーっとするのであった。右眼をごしごしと手でこすりながら、隣のベッドで眠るクロードにおはようの挨拶をする。しかし、クロードはベッドから上半身を起こしていたモノの、顔は向こうを見ていたのである。

「ん? クロ。どうしたの? そっちの方に何か気になるものでもあるの?」

「い、いや……。ロージー……。浴衣がはだけて、へそが丸見えになってる……」

 クロードがそう言うなり、えっ? どういうこと? と寝ぼけまなこでロージーは自分の身体を見る。するとだ。浴衣の帯がほどけ、前がガバッと観音開きになっており、そこから自分の透き通るような白い肌と淡いスミレ色のブラと婦人用ショーツが丸見えになってしまっていたのである。

(!?)

 ロージーは自分の寝ぼけた頭に急速に血が昇り、それにより、ロージーは覚醒するのであった。そんなロージーが最初にとった行動は掛け布団を頭から被ることであった。そして布団にくるまれながら、帯がどこにいってしまったのかと懸命に捜索するのであった。

(うーーー。見られた……。ださい婦人用のショーツを履いてるのをクロにばっちりと見られた……。恥ずかしいよ……)

 ロージーとしては肌を見られることよりも、自分でとてつもなくダサいと思っている婦人用ショーツを身に着けている姿を見られたことのほうがよっぽど恥ずかしいのであった。

「ちゅっちゅっちゅ。乙女心は複雑でッチュウね? いつもクロードにパンツまでも洗濯させているんでッチュウよ? 何を今更、恥ずかしがっているんでッチュウ?」

「うっさいっ! ひとの心を読まないでよっ! 洗濯してもらうのはそりゃ別で恥ずかしい気持ちだけど、そこは仕方ないんだから良いのっ! でも、わたしがそれを履いてる姿を見られるのは、もっと嫌なのよっ!」

 ロージーが頭から掛け布団をすっぽり被りながらも、ガルルルッ! と唸り声をあげながらコッシローに文句を言うのであった。コッシローは両手を大袈裟に広げて、首を左右に振りながら、やれやれとポーズを取るのであった。

 クロードはクロードとして、ロージーが乱れた浴衣を着直している最中に、静まれ静まれ……と自分の息子を鎮めるべく、自制心を高めるのであった。

 そんな朝からのトラブル? に見舞われながらも平静を取り戻したロージーとクロードたちは、朝食にありつくために1階にある食堂へと向かう。そこで、天麩羅てんぷらをおかずに銀シャリのごはんをパクパクとお腹いっぱいにかきこむのであった。

「ふう……。さすが1泊銀貨15枚も請求してくるだけあって、朝食からお米のご飯を食べさせてもらえるのは嬉しい限りよね……」

「そうだな。久しぶりに米のご飯を食べたけど、普段食べているひえあわのごはんとは段違いに美味いな……。俺、ごはんのお代わりをとってくるわ」

「ちゅっちゅっちゅ。ネズミはひえあわのみに生きるにあらず。白い米や天かすはお腹だけでなく、心も潤すのでッチュウ!」

 2人と1匹はご満悦で朝食を終えるのであった。そして、部屋に戻り、浴衣を脱いで、普段着に着替え終わるのであった。ロージーとしては、宿屋を出るまでにもう1度、温泉に浸かりたい気持ちではあったが、このオダニの街にやってきたのは、旅行のためではないと自分に言い聞かせ、後ろ髪を引かれる気分ではあるが、ぐっと我慢する。

 ロージーたちは宿屋の出入り口で、ご主人に一礼をしたあと、宿屋をあとにする。そして、大神殿に向かって、歩を進めるのであった。その道中の折、ロージーは再確認のために、コッシローへと質問をするのであった。

「ねえ、コッシロー。大神殿におわす高司祭ハイ・プリースト・ファースとは話をつけているって言ってたわよね? コッシローの姿を見せれば、顔パスで転移門ワープ・ゲートを使わせてくれるって……」

「そうでッチュウ。高司祭ハイ・プリーストのファースはハジュンの小僧に色々と便宜を図ってもらって、今の地位に就いたのでッチュウ。それゆえに、ボクとは既知なのでッチュウ。ロージーちゃんは何も心配いらないでッチュウよ?」

 ロージーはそれなら安心ねと、ほっと安堵するのであった。ポメラニア帝国において、刑に服している者は、移動の制限を喰らう。ポメラニア帝国の各地に点在する神殿には、その神殿間を繋ぐ転移門ワープ・ゲートが存在するのであるが、罪を犯したニンゲンは当然、それを利用できるわけがなかった。

 そのため、ロージー一行は乗り合い馬車を乗り継いで、一軒家からここオダニの街までやってきたわけなのだ。

 しかしだ。コッシローの思惑は完全に外れることになる……。

「罪人に使わせる転移門ワープ・ゲートは存在しないのだゴマー! とっとと流刑地である一軒家に帰ると良いのだゴマー!」

「ちゅちゅっ!? なんで、お前がここに居るのでッチュウ!? 高司祭ハイ・プリースト・ゴーマ! お前は半年前に左遷させられたはずでッチュウよね!?」

 コッシローが驚くのも無理はなかった。ハジュンの介入により、高司祭ハイ・プリースト・ファースがこの大神殿の管理人となったはずなのに、そのファースの姿はどこにも無く、あろうことか前任者である高司祭ハイ・プリースト・ゴーマがコッシローの眼の前に現れたからである。

 これはコッシローにとっては完全に誤算であった。高司祭ハイ・プリースト・ゴーマの存在は、ハジュンとコッシローが自分たちの計画を推し進めるために邪魔だったので、彼をへき地へと左遷したのである。

 代わりにファースを高司祭ハイ・プリーストへと推したのに、そのファースが行方をくらましただけでなく、邪魔者であった前任者のゴーマが復権を果たしていたのであった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

処理中です...