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第5章:ハジュン=ド・レイ
3:汚水
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ロージーの皮肉たっぷりの仕返しに、思わずセイ=ゲンドーは、はっはっはと笑い出してしまうのであった。
「こりゃ一本取られたねェ。こんなわかりやすいクロードくんの想い人だから、きっと、そのお方も同じような直情型だと思ったけど、なかなかによく出来たお嬢ちゃんだよォ」
「ちゅっちゅっちゅ。さすがロージーちゃんは生まれながらにして、貴族社会に属していただけはあるでッチュウ。嫌味と皮肉まみれの貴族社会で、これくらいの言葉の応酬なんて、当たり前なのでッチュウ。ロージーちゃんの爪の垢を煎じて、クロードに飲ませてやりたくなってしまうのでッチュウ」
「お生憎さま。クロはわたしの爪の垢を煎じて飲むだけじゃ、飽き足らない男よ? クロはこう見えても貪欲なのっ。もし、クロが本気を出して、貴族たちと渡り合っていこうって考えているなら、クロは順応していくと思うわよ?」
ロージーが自分でそう言ったものの、クロは貴族社会に染まることは多分無いだろうと思うのである。クロはどこまで行ってもクロのままであろうと。クロは自分の信じたことをとことんまで信じきるニンゲンだ。例え、信じた相手に裏切られるようなことがあろうとも、その相手を一時は恨むであろうが、水に流すことが出来るニンゲンだと。
(クロはわたしと違って、純粋すぎるわ。清らかで透明な川のせせらぎにも似ているわ。その川に汚水が流れ込んでも、時が経てば洗い流せる……)
キレイな水ほど、汚れた水により、その姿を変えやすい。だが、クロは違う。クロだけは他の誰とも違うとロージーは思うのであった。そんなクロだからこそ、わたしはクロに心底から惚れたのだとロージーは思うのであった。
「やれやれ。おじさん、これは惚気話を聞かされちゃったのかなァ? おじさんもこんな青春を送りたかったよォ……」
「ちゅっちゅっちゅ。お前にキレイな青春なんて、へそでヤカンを沸かすレベルの笑い話なのでッチュウ。そんな生活を送りたいと思っている奴をハジュンの小僧が子飼いにするわけがないのでッチュウ」
「そう、まさにそこだよォ、コッシローさま。僕ちゃん自身はさっさとこんな世俗にまみれた貴族社会から引退したい気分でいっぱいなんだよォ? でも、ハジュンさまがそれを許してくれないんだよォ?」
セイ=ゲンドーが身を乗り出して、箱馬車の椅子にちょこんと座っているコッシローに物申すのであった。だが、こっしろーは、ちゅっちゅっちゅと鼻で笑い
「ボクが今まで見てきた貴族の中で、貴族らしい貴族と言えば、セイ=ゲンドー。お前が一番なのでッチュウ。いい加減、しらばっくれているのなら、お前のあらゆる悪事をここの2人に告げ口するでッチュウよ?」
「おっと、待ってくれよォ。僕ちゃん、それをされたらかなわいんだよォ? ここは、ハジュンさまの食堂からパンを盗ってくるから、それで手打ちにしようじゃないのォ?」
ロージーにとっては、コッシローとセイ=ゲンドーのやり取りが芝居がかっているように見えるのであった。まるで、自分たちはロージーとクロードにとって危害を加える存在ではないことを、おちゃらけた話を展開することで、警戒心を解こうとしているような。そんな予感がするロージーである。
(わたしの考えすぎなのかしら? セイさまは気さくな振りをしているだけなような気がしてならないわ……。コッシローは、うーーーん、まあ、これが自然体なのだろうけど……。クロにはセイさまに胸襟を開けすぎないようにと後で注意を促しておこうかしら? でも、クロのことだから……)
「ん? どうしたんだィ? ロージーのお嬢ちゃん? 僕ちゃんの顔を真剣に見つめちゃってェ?」
「い、いえ? ただ、セイさまの無精髭が気になっただけよ?」
「ああ、これかい? 僕ちゃん、髭を剃っちゃうと、意外と若造に見られちゃうだよねェ。貫禄を出すためにも、髭を伸ばしたほうが良いって、ハジュンさまに言われちゃってねェ?」
それなら、せめて、ちゃんと手入れをすれば良いのにと思ってしまうロージーである。クロードは毎朝、きちんと髭を剃っている。ロージーとしては髭を伸ばして、今風の髭にセットするのはどうかとクロードには提案しているのだが、クロード自身はまだまだ髭をどうにかするような年齢でもないし……と、やや否定気味である。
ロージーは自分の父親が髭をきちんと手入れしていたことと、その髭の姿が父親に似合っていたので、髭自体に忌避感をもっているわけではない。それゆえに、クロードに髭を伸ばして、整えてみたら? と提案しているというわけだ。まあ、クロード本人が乗り気じゃないので、あまり強く言えない現状なのだが……。
ハジュンが住む屋敷に向かって進む箱馬車の中では世間話に花を咲かせている状況であった。クロードがあまり話の輪の中に入ってこないことにロージーは遠慮することないのにと思ってしまう。もし、ハジュンの計画に乗り、自分が貴族へと復権することになれば、自分の夫となるクロードは嫌がおうにも貴族社会との付き合いが増えていくことになる。
そのためにも、何を考えているかはわからないが、まだ話易いセイ=ゲンドー相手に慣れておけば良いのでは? とロージーは先ほどとは矛盾を抱えつつもそう思うのである。
(うーーーん? クロって、どことなく、セイさまと距離を開けたがっているような? わたしの思い過ごしかしら?)
ロージーがそう思いながらも箱馬車は進んでいく。時折、牛が道の上で寝っ転がっていたりして、箱馬車が衝突を回避するために急停止したりなどのハプニングがあったりもした。
箱馬車が急停止したために、ロージーが前方へつんのめりしそうになるが、クロードが素早くロージーを抱え込んで、彼女が箱馬車内で倒れ込まないように配慮するのである。
「クロ……。倒れそうになるわたしを支えてくれるのは良いんだけど……。胸をわしづかみするのはやめてほしいんだけど……?」
「い、いやいやいや!? 俺は決してやらしい気持ちで、ぶごあああっ!」
ロージーが顔を真っ赤に染めながら文句を言ったためにクロードが意識してしまった。そのことにより、『清い関係でいましょ?』という『制約』が発動することになる……。
突然、前のめりであったクロードの首級が後方にゴンッ! と揺らされることになる。クロードはヤオヨロズ=ゴッドから唐突に『罰』を与えられて、軽い脳震盪に襲われることになるのであった。
「いたたっ……。おめこぼししてくれるのか、くれないのか、はっきりさせてほしいよ……。これじゃ、おちおち、ロージーを護れなくなるだろうが……」
はっきりしない意識を覚ますためにクロードは頭を左右に振りながら、ヤオヨロズ=ゴッドに対して文句を言うのであった。
「こりゃ一本取られたねェ。こんなわかりやすいクロードくんの想い人だから、きっと、そのお方も同じような直情型だと思ったけど、なかなかによく出来たお嬢ちゃんだよォ」
「ちゅっちゅっちゅ。さすがロージーちゃんは生まれながらにして、貴族社会に属していただけはあるでッチュウ。嫌味と皮肉まみれの貴族社会で、これくらいの言葉の応酬なんて、当たり前なのでッチュウ。ロージーちゃんの爪の垢を煎じて、クロードに飲ませてやりたくなってしまうのでッチュウ」
「お生憎さま。クロはわたしの爪の垢を煎じて飲むだけじゃ、飽き足らない男よ? クロはこう見えても貪欲なのっ。もし、クロが本気を出して、貴族たちと渡り合っていこうって考えているなら、クロは順応していくと思うわよ?」
ロージーが自分でそう言ったものの、クロは貴族社会に染まることは多分無いだろうと思うのである。クロはどこまで行ってもクロのままであろうと。クロは自分の信じたことをとことんまで信じきるニンゲンだ。例え、信じた相手に裏切られるようなことがあろうとも、その相手を一時は恨むであろうが、水に流すことが出来るニンゲンだと。
(クロはわたしと違って、純粋すぎるわ。清らかで透明な川のせせらぎにも似ているわ。その川に汚水が流れ込んでも、時が経てば洗い流せる……)
キレイな水ほど、汚れた水により、その姿を変えやすい。だが、クロは違う。クロだけは他の誰とも違うとロージーは思うのであった。そんなクロだからこそ、わたしはクロに心底から惚れたのだとロージーは思うのであった。
「やれやれ。おじさん、これは惚気話を聞かされちゃったのかなァ? おじさんもこんな青春を送りたかったよォ……」
「ちゅっちゅっちゅ。お前にキレイな青春なんて、へそでヤカンを沸かすレベルの笑い話なのでッチュウ。そんな生活を送りたいと思っている奴をハジュンの小僧が子飼いにするわけがないのでッチュウ」
「そう、まさにそこだよォ、コッシローさま。僕ちゃん自身はさっさとこんな世俗にまみれた貴族社会から引退したい気分でいっぱいなんだよォ? でも、ハジュンさまがそれを許してくれないんだよォ?」
セイ=ゲンドーが身を乗り出して、箱馬車の椅子にちょこんと座っているコッシローに物申すのであった。だが、こっしろーは、ちゅっちゅっちゅと鼻で笑い
「ボクが今まで見てきた貴族の中で、貴族らしい貴族と言えば、セイ=ゲンドー。お前が一番なのでッチュウ。いい加減、しらばっくれているのなら、お前のあらゆる悪事をここの2人に告げ口するでッチュウよ?」
「おっと、待ってくれよォ。僕ちゃん、それをされたらかなわいんだよォ? ここは、ハジュンさまの食堂からパンを盗ってくるから、それで手打ちにしようじゃないのォ?」
ロージーにとっては、コッシローとセイ=ゲンドーのやり取りが芝居がかっているように見えるのであった。まるで、自分たちはロージーとクロードにとって危害を加える存在ではないことを、おちゃらけた話を展開することで、警戒心を解こうとしているような。そんな予感がするロージーである。
(わたしの考えすぎなのかしら? セイさまは気さくな振りをしているだけなような気がしてならないわ……。コッシローは、うーーーん、まあ、これが自然体なのだろうけど……。クロにはセイさまに胸襟を開けすぎないようにと後で注意を促しておこうかしら? でも、クロのことだから……)
「ん? どうしたんだィ? ロージーのお嬢ちゃん? 僕ちゃんの顔を真剣に見つめちゃってェ?」
「い、いえ? ただ、セイさまの無精髭が気になっただけよ?」
「ああ、これかい? 僕ちゃん、髭を剃っちゃうと、意外と若造に見られちゃうだよねェ。貫禄を出すためにも、髭を伸ばしたほうが良いって、ハジュンさまに言われちゃってねェ?」
それなら、せめて、ちゃんと手入れをすれば良いのにと思ってしまうロージーである。クロードは毎朝、きちんと髭を剃っている。ロージーとしては髭を伸ばして、今風の髭にセットするのはどうかとクロードには提案しているのだが、クロード自身はまだまだ髭をどうにかするような年齢でもないし……と、やや否定気味である。
ロージーは自分の父親が髭をきちんと手入れしていたことと、その髭の姿が父親に似合っていたので、髭自体に忌避感をもっているわけではない。それゆえに、クロードに髭を伸ばして、整えてみたら? と提案しているというわけだ。まあ、クロード本人が乗り気じゃないので、あまり強く言えない現状なのだが……。
ハジュンが住む屋敷に向かって進む箱馬車の中では世間話に花を咲かせている状況であった。クロードがあまり話の輪の中に入ってこないことにロージーは遠慮することないのにと思ってしまう。もし、ハジュンの計画に乗り、自分が貴族へと復権することになれば、自分の夫となるクロードは嫌がおうにも貴族社会との付き合いが増えていくことになる。
そのためにも、何を考えているかはわからないが、まだ話易いセイ=ゲンドー相手に慣れておけば良いのでは? とロージーは先ほどとは矛盾を抱えつつもそう思うのである。
(うーーーん? クロって、どことなく、セイさまと距離を開けたがっているような? わたしの思い過ごしかしら?)
ロージーがそう思いながらも箱馬車は進んでいく。時折、牛が道の上で寝っ転がっていたりして、箱馬車が衝突を回避するために急停止したりなどのハプニングがあったりもした。
箱馬車が急停止したために、ロージーが前方へつんのめりしそうになるが、クロードが素早くロージーを抱え込んで、彼女が箱馬車内で倒れ込まないように配慮するのである。
「クロ……。倒れそうになるわたしを支えてくれるのは良いんだけど……。胸をわしづかみするのはやめてほしいんだけど……?」
「い、いやいやいや!? 俺は決してやらしい気持ちで、ぶごあああっ!」
ロージーが顔を真っ赤に染めながら文句を言ったためにクロードが意識してしまった。そのことにより、『清い関係でいましょ?』という『制約』が発動することになる……。
突然、前のめりであったクロードの首級が後方にゴンッ! と揺らされることになる。クロードはヤオヨロズ=ゴッドから唐突に『罰』を与えられて、軽い脳震盪に襲われることになるのであった。
「いたたっ……。おめこぼししてくれるのか、くれないのか、はっきりさせてほしいよ……。これじゃ、おちおち、ロージーを護れなくなるだろうが……」
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