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第5章:ハジュン=ド・レイ
5:パイプ煙草
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箱馬車を降りたロージーとクロードはセイ=ゲンドーの案内に従い、いよいよハジュン=ド・レイの屋敷に足を踏み入れることになる。その屋敷は外から見れば赤や白、そして黒色のレンガが積み立てられた比較的新しい建築方法の屋敷であった。
しかし彼女たちが一歩、その屋敷に踏み入れるとだ……
「うわっ……。白を基調とした玄関ホールのところどころを金箔で飾っているわ……。しかも天井からぶら下がっているのって最新式の照明灯よね?」
「おゥ? ロージーのお嬢ちゃん。眼のつけどころが良いねェ? あれは火の国:イズモの職人たちに無理を言って、付け替えたものらしいよォ?」
ロージーは一軒家の暮らしで時間が空いた時にはよく書物に眼を通していた。その書物の中には屋敷の家具を収録したカタログも含まれていた。なんといっても、そういうカタログ類は訪問販売のニンゲンが無料でくれるモノである。
質素な生活を強いられていたロージーたちにとって、無料でもらえる書物はありがたいモノであった。クロードはもっぱら、近くの町の総合食品店のチラシをじっくり読む役目ではあったが……。
とにもかくにも、ハジュンの屋敷内は白と金を基調として装飾が施されていた。白い壁、白い柱、白い階段。そこに金色の糸で刺繍された赤の絨毯がしかれることにより、絨毯の模様が一層、映えるように工夫されている。
この絨毯を土足で踏んでいいものなのかと躊躇せざるをえないロージーとクロードであるが、セイ=ゲンドーはたいして気にもせずに玄関・ホールの中を土足でずかずかと歩いていく。そして、ロージーたちに遅れないようにちゃんとついてきてくれよォ? と声をかける。
ロージーたちは階段を登っていこうとしているセイ=ゲンドーに少し足早になって、黙ってついていくことにする。彼女らが登って行こうとする階段の手すりは金箔が押されており、べたべたと触っていいのかと戸惑ってしまうのだが、セイ=ゲンドーはその金箔押しの手すりを左手でゴンゴンッと叩いていくのである。
(なんだか、セイさまに全てを見透かされている気分だわ……。絨毯の上は土足でずかずか歩いていくし、階段の手すりを荒っぽく扱っているし。これはわたしたちに気にするなって言いたいことなんだろうけど……)
ロージーは少し迷った後、階段の手すりを左手でしっかりと掴み、やや急こう配である階段を登っていくのであった。セイ=ゲンドーは少しだけ後方を確認し、ちょっとだけニヤリと笑みを浮かべて、また前を向いて階段を登っていくのであった。
セイ=ゲンドーに連れられて、ロージーとクロードが屋敷の2階にたどり着くと、白と金で統一されていた1階とは対照的に、赤と黒を基調としたモノに変わっていたのである。
ロージーとクロードは何故、1階部分と2階部分でこれほどまでに変えているのだろうかと不思議に思っていると、それを察したセイ=ゲンドーが口を開く。
「1階はお客さま用に『昼』をイメージした色調にしているって話だよォ? んで、2階はハジュンさまのプライベート空間だから、ヴァンパイア族らしく『夜』をイメージしているってわけだァ。まあ、僕ちゃん、そんなところに金をかけるんじゃないって一喝してやりたい気分なんだけどねェ?」
「ちゅっちゅっちゅ。テーマを持つのは悪いことではないでッチュウけど、5~6年ごとに屋敷の色調を替えるのはやめて良いと思うでッチュウけどね?」
「それだけ金を持っているって証だけどねェ? ハジュンさまは言っていたぜェ? 『金は持っているだけでは駄目なんです。庶民のために上がバンバン、金を落とさないと、富が分配されなくなってしまいますからね?』ってさァ。何を言ってんだコイツって僕ちゃんは思っちゃうんだけどォ?」
ロージーとクロードは、セイ=ゲンドーの軽口に対して、はぁ……としか言いようがなかった。確かに富を持っているモノが蓄財ばかりすれば、金の流れは滞ることは確かだが、だからと言って、5~6年に一度、屋敷全体の色調を一変させるのもどうなのだろうかと思わざるをえないのであった。
(ハジュンさまって、わたしにはよくわからない矜持を持っているのかしら? だけど……。わたしには金持ちの道楽のような気がしてならないんだけど……)
ロージーは、うーーーん? と悩みながら歩を進めることになる。やがて、セイ=ゲンドーはとある部屋の前で足を止めて、コンコンッと軽快にその部屋のドアをノックするのであった。
「おーーーい、ハジュンさま。例の2人を連れてきたんだよォ? 中に入って良いかィ? まあ、嫌だと言われても勝手に入っちゃうんだけどねェ?」
セイ=ゲンドーがそう言うと、部屋の主に確認も取らずにドアのノブをガチャリと回して、ドアを開いてしまうのである。ロージーとクロードはそんなことをしても良いのか!? と驚いてしまうが、セイ=ゲンドーはドアを開いたあと、部屋の中にズカズカと入っていってしまう。
ロージーとクロードは互いの顔を一度、見合ったあと、意を決して、セイ=ゲンドーが入っていった部屋に緊張を伴いながら入っていくのであった。2人が入った部屋はどうやら、執務室のようで、装飾の施された本棚が壁にくっついた状態でいくつか並び、大きな仕事用の机がドア側から見て、真正面に配置されていたのである。
その仕事机の椅子に座っているのがヴァンパイア族のハジュン=ド・レイであった。彼は木製のパイプを口に咥えて、そのパイプの先から紫色の煙をたゆされていた。
ハジュンはそのパイプを右手に取り、いきなりゲホッゲホッと咳込むのである。
「あーーー。ちょっと格好つけて、ローズマリーくんとクロードくんを出迎えようとしたのですが、パイプの煙を誤って吸い込んでしまって、咳込んでしまいました……。だいたい、何が美味しくて、皆さんはパイプで煙草を吸うんでしょうね? 馬鹿か何かなんですか?」
(えっと……。何かよくわからないけど、煙草に対して八つ当たりしはじめたんだけど……? てか、今、恰好つけてって言ってたわよね? もしかして、吸えもしない煙草を吸ってたわけなの!?)
ロージーは、このヒト、いったい何をしているのかしら? と不思議に思う気持ちでいっぱいである。ちょっと背伸びをしたい年頃の男性が煙草に手を出して、激しく吸い込むことを、眼の前のれっきとした大人の男性がやっているのである。
しかも、どうにも煙草が合わないのか、未だにハジュンは涙目になりながらゲホンゲホンッ! と咳込むのである。ロージーに一抹の不安がよぎるのは仕方なかったのかもしれない……。
しかし彼女たちが一歩、その屋敷に踏み入れるとだ……
「うわっ……。白を基調とした玄関ホールのところどころを金箔で飾っているわ……。しかも天井からぶら下がっているのって最新式の照明灯よね?」
「おゥ? ロージーのお嬢ちゃん。眼のつけどころが良いねェ? あれは火の国:イズモの職人たちに無理を言って、付け替えたものらしいよォ?」
ロージーは一軒家の暮らしで時間が空いた時にはよく書物に眼を通していた。その書物の中には屋敷の家具を収録したカタログも含まれていた。なんといっても、そういうカタログ類は訪問販売のニンゲンが無料でくれるモノである。
質素な生活を強いられていたロージーたちにとって、無料でもらえる書物はありがたいモノであった。クロードはもっぱら、近くの町の総合食品店のチラシをじっくり読む役目ではあったが……。
とにもかくにも、ハジュンの屋敷内は白と金を基調として装飾が施されていた。白い壁、白い柱、白い階段。そこに金色の糸で刺繍された赤の絨毯がしかれることにより、絨毯の模様が一層、映えるように工夫されている。
この絨毯を土足で踏んでいいものなのかと躊躇せざるをえないロージーとクロードであるが、セイ=ゲンドーはたいして気にもせずに玄関・ホールの中を土足でずかずかと歩いていく。そして、ロージーたちに遅れないようにちゃんとついてきてくれよォ? と声をかける。
ロージーたちは階段を登っていこうとしているセイ=ゲンドーに少し足早になって、黙ってついていくことにする。彼女らが登って行こうとする階段の手すりは金箔が押されており、べたべたと触っていいのかと戸惑ってしまうのだが、セイ=ゲンドーはその金箔押しの手すりを左手でゴンゴンッと叩いていくのである。
(なんだか、セイさまに全てを見透かされている気分だわ……。絨毯の上は土足でずかずか歩いていくし、階段の手すりを荒っぽく扱っているし。これはわたしたちに気にするなって言いたいことなんだろうけど……)
ロージーは少し迷った後、階段の手すりを左手でしっかりと掴み、やや急こう配である階段を登っていくのであった。セイ=ゲンドーは少しだけ後方を確認し、ちょっとだけニヤリと笑みを浮かべて、また前を向いて階段を登っていくのであった。
セイ=ゲンドーに連れられて、ロージーとクロードが屋敷の2階にたどり着くと、白と金で統一されていた1階とは対照的に、赤と黒を基調としたモノに変わっていたのである。
ロージーとクロードは何故、1階部分と2階部分でこれほどまでに変えているのだろうかと不思議に思っていると、それを察したセイ=ゲンドーが口を開く。
「1階はお客さま用に『昼』をイメージした色調にしているって話だよォ? んで、2階はハジュンさまのプライベート空間だから、ヴァンパイア族らしく『夜』をイメージしているってわけだァ。まあ、僕ちゃん、そんなところに金をかけるんじゃないって一喝してやりたい気分なんだけどねェ?」
「ちゅっちゅっちゅ。テーマを持つのは悪いことではないでッチュウけど、5~6年ごとに屋敷の色調を替えるのはやめて良いと思うでッチュウけどね?」
「それだけ金を持っているって証だけどねェ? ハジュンさまは言っていたぜェ? 『金は持っているだけでは駄目なんです。庶民のために上がバンバン、金を落とさないと、富が分配されなくなってしまいますからね?』ってさァ。何を言ってんだコイツって僕ちゃんは思っちゃうんだけどォ?」
ロージーとクロードは、セイ=ゲンドーの軽口に対して、はぁ……としか言いようがなかった。確かに富を持っているモノが蓄財ばかりすれば、金の流れは滞ることは確かだが、だからと言って、5~6年に一度、屋敷全体の色調を一変させるのもどうなのだろうかと思わざるをえないのであった。
(ハジュンさまって、わたしにはよくわからない矜持を持っているのかしら? だけど……。わたしには金持ちの道楽のような気がしてならないんだけど……)
ロージーは、うーーーん? と悩みながら歩を進めることになる。やがて、セイ=ゲンドーはとある部屋の前で足を止めて、コンコンッと軽快にその部屋のドアをノックするのであった。
「おーーーい、ハジュンさま。例の2人を連れてきたんだよォ? 中に入って良いかィ? まあ、嫌だと言われても勝手に入っちゃうんだけどねェ?」
セイ=ゲンドーがそう言うと、部屋の主に確認も取らずにドアのノブをガチャリと回して、ドアを開いてしまうのである。ロージーとクロードはそんなことをしても良いのか!? と驚いてしまうが、セイ=ゲンドーはドアを開いたあと、部屋の中にズカズカと入っていってしまう。
ロージーとクロードは互いの顔を一度、見合ったあと、意を決して、セイ=ゲンドーが入っていった部屋に緊張を伴いながら入っていくのであった。2人が入った部屋はどうやら、執務室のようで、装飾の施された本棚が壁にくっついた状態でいくつか並び、大きな仕事用の机がドア側から見て、真正面に配置されていたのである。
その仕事机の椅子に座っているのがヴァンパイア族のハジュン=ド・レイであった。彼は木製のパイプを口に咥えて、そのパイプの先から紫色の煙をたゆされていた。
ハジュンはそのパイプを右手に取り、いきなりゲホッゲホッと咳込むのである。
「あーーー。ちょっと格好つけて、ローズマリーくんとクロードくんを出迎えようとしたのですが、パイプの煙を誤って吸い込んでしまって、咳込んでしまいました……。だいたい、何が美味しくて、皆さんはパイプで煙草を吸うんでしょうね? 馬鹿か何かなんですか?」
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