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第5章:ハジュン=ド・レイ
10:伝家の宝刀
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「はい。その通りです。ミサくんにしてはよく覚えていましたね? 先生、驚きの余りに失神してしまいそうですよ……」
「ハジュンさまは失敬ですニャン! コッシローさまにハジュンさまをカエルに変えてもらえるように頼んでやるのニャン!」
「ちゅっちゅっちゅ。ミサちゃんに頼まれても黒い湖の大魔導士と呼ばれたボクでも変化の魔術は無理だッチュウ。何度、言ったらわかってもらえるんでッチュウ?」
コッシローがクロードの左肩に乗ったまま、あきれた表情をその顔に浮かべていた。クロードはコッシローの言いに引っかかるモノを感じてしまうのであるが、それが何であるかは言葉に出来ないのであった。
それから執務室の片づけが終わったミサ=ミケーンはドアの前で一礼したあと、さっさと退出してしまうのである。その姿を見送った2人と1匹は、話を再開させるのであった。
「さて、クロードくん。ローズマリーくんには少しショッキングな話をしてしまいました。こうなることは予想外でしたので、謝罪の言葉を送るのはアレなんですが……」
「いえ、お構いなく。俺もあそこまでロージーが取り乱すなんて思っていなかったんで……。ハジュンさまが話をされたのが引き金になっただけだと思います……」
クロードは前にハジュンからカルドリア=オベールさまの話を聞いて、それをロージーに伝えた時は、ロージーは気丈にも涙をこらえていたのだ。その姿を見ていたために、ハジュンがロージーに告げた時も最初は大丈夫だろうとタカを括ってしまっていたのだ。
しかし、そんなクロードの予想を通り越して、ロージーはおおいに取り乱してしまった。ロージーはクロードの前だからこそ、必死に感情を抑えていただけなのであることをクロードは思い知らされることとなる。クロードは思わず、右手をギュッと力強く握りしめるのであった。
(ロージー。ごめんな? 俺が気づいてやれないばかりに……。そりゃ悔しいに決まっているよな……)
「さて。かなり話をすっとばしてしまうのですが、クロードくん。キミはローズマリーくんが宰相:ツナ=ヨッシーに復讐をしたいと言い出したら、クロードくんは彼女を止めますか? それとも、彼女の復讐に手を貸しますか?」
ハジュンの唐突な質問にクロードは眼を白黒させてしまう。いったい、何を言っているのかわからないと言った困惑の表情をクロードは顔に映してしまうのである。それもそうだろう。クロードはロージーを『護る』とはロージーの父親であるカルドリア=オベールと『約束』をしたが、復讐につきあってやってほしいと言われた覚えはないからだ。
そして、ロージーからもそのようなことは直接的に言われたことはない。それゆえにハジュンの言葉はクロードの心に突き刺さる結果となる。
「すい、ません……。ハジュンさまが言わんとしていることが俺にはわかりません……」
「ふむ。素直で良いですね、キミは。自分がわからないことを相手にわからないと言えることは、それは一種の才能です。ですが、先生が言ったことの応えを先生に求めるのは間違っています。ただ、クロードくんがローズマリーくんと共に何を成し遂げようとしているのか? それを自分にいつでも問いかけておけというだけの話なのですから」
(俺がロージーと共に成し遂げたいこと? それはロージーがもし復讐を望むのであれば、俺は共にロージーと復讐を遂げろってことなのか? いや、でも……)
「わかりません……。ハジュンさまが何を言いたいのか、俺にはわかりませんっ!」
クロードは強い拒否感を持ってして、ハジュンに自分の意思を伝える。ハジュンはそれを受けて、ふむっとひと呼吸置く。そして、執務室の片隅にある武器が飾られた台のところに移動して、カチャカチャと何かを物色し始めるのであった。
クロードはハジュンがいったい何をしているのかがさっぱり理解できない。
「ああ、あったあった……。これですね。いやあ、これを宰相派から取り戻すには苦労しましたよ……。利権をひとつ、彼らに渡すことになりましたからねえ……」
ハジュンがそう言いながら、鞘に収まったままの1本の剣を左手に持って、クロードの眼の前までやってくるのであった。そして、クロードの右手にしっかりとその剣を持たせるのであった。
(え!? こ、この細剣は!!)
クロードは右手に持たされた細剣に自分の眼が釘付けになる。彼が持たされた細剣はオベール家の家宝である【薔薇乙女の細剣】だったからだ。
「何故、この細剣をハジュンさまが持っているんですか!?」
クロードの疑問も当然であった。宰相:ツナ=ヨッシーが派遣した騎士:モル=アキスに屋敷ごと、オベール家の家宝であるこの【薔薇乙女の細剣】も奪われたからだ。オルタンシア=オベールはそのことを特に気に病んでいた。
――薔薇乙女の細剣。かつて、オルタンシア=オベールがカルドリア=オベールと結婚する際に、彼女の父親から結納品としてオベール家に贈られたモノである。オルタンシアの父親は土の国:モンドラに数あるの有力部族のひとつであった。その部族の象徴でもあるこの細剣をオベール家に譲ったのは、それほどまでにオルタンシアの父親がオルタンシアの無事を願ってのことだとも言われている。
その薔薇乙女の細剣はオルタンシア=オベールの手を経て、その娘であるローズマリー=オベールに受け継がれる予定であったのだ。しかし、その日はついぞやってくることはなかった。オベール家は没落し、ローズマリー=オベールとクロード=サインの結婚は流れてしまった。いや、それよりもそもそも、この細剣をモル=アキスに奪われてしまったのだ。
そのいわくつきの細剣がハジュン=ド・レイからクロード=サインの手に渡されたのである。
オベール家の、オルタンシアが属する部族の象徴が巡り巡って、クロードの右手に収まることになったその意味を、クロードは理解できなかった。彼の右手はズシリとした細剣の重み以上の何かを感じ取ることになる。
クロードはじんわりと右の手のひらに汗がにじみ出てくるのを感じるのであった。
「俺は……いったい、何を成し遂げたら良いんだ……」
「悩むことですね。悩むのは若者の特権です。しかし、残念なことに悩んでいられる時間は有限であることです。キミが悩んだ先に選んだ未来のために、この薔薇乙女の細剣を使いなさい。先生から言えることはただそれだけです」
「ハジュンさまは失敬ですニャン! コッシローさまにハジュンさまをカエルに変えてもらえるように頼んでやるのニャン!」
「ちゅっちゅっちゅ。ミサちゃんに頼まれても黒い湖の大魔導士と呼ばれたボクでも変化の魔術は無理だッチュウ。何度、言ったらわかってもらえるんでッチュウ?」
コッシローがクロードの左肩に乗ったまま、あきれた表情をその顔に浮かべていた。クロードはコッシローの言いに引っかかるモノを感じてしまうのであるが、それが何であるかは言葉に出来ないのであった。
それから執務室の片づけが終わったミサ=ミケーンはドアの前で一礼したあと、さっさと退出してしまうのである。その姿を見送った2人と1匹は、話を再開させるのであった。
「さて、クロードくん。ローズマリーくんには少しショッキングな話をしてしまいました。こうなることは予想外でしたので、謝罪の言葉を送るのはアレなんですが……」
「いえ、お構いなく。俺もあそこまでロージーが取り乱すなんて思っていなかったんで……。ハジュンさまが話をされたのが引き金になっただけだと思います……」
クロードは前にハジュンからカルドリア=オベールさまの話を聞いて、それをロージーに伝えた時は、ロージーは気丈にも涙をこらえていたのだ。その姿を見ていたために、ハジュンがロージーに告げた時も最初は大丈夫だろうとタカを括ってしまっていたのだ。
しかし、そんなクロードの予想を通り越して、ロージーはおおいに取り乱してしまった。ロージーはクロードの前だからこそ、必死に感情を抑えていただけなのであることをクロードは思い知らされることとなる。クロードは思わず、右手をギュッと力強く握りしめるのであった。
(ロージー。ごめんな? 俺が気づいてやれないばかりに……。そりゃ悔しいに決まっているよな……)
「さて。かなり話をすっとばしてしまうのですが、クロードくん。キミはローズマリーくんが宰相:ツナ=ヨッシーに復讐をしたいと言い出したら、クロードくんは彼女を止めますか? それとも、彼女の復讐に手を貸しますか?」
ハジュンの唐突な質問にクロードは眼を白黒させてしまう。いったい、何を言っているのかわからないと言った困惑の表情をクロードは顔に映してしまうのである。それもそうだろう。クロードはロージーを『護る』とはロージーの父親であるカルドリア=オベールと『約束』をしたが、復讐につきあってやってほしいと言われた覚えはないからだ。
そして、ロージーからもそのようなことは直接的に言われたことはない。それゆえにハジュンの言葉はクロードの心に突き刺さる結果となる。
「すい、ません……。ハジュンさまが言わんとしていることが俺にはわかりません……」
「ふむ。素直で良いですね、キミは。自分がわからないことを相手にわからないと言えることは、それは一種の才能です。ですが、先生が言ったことの応えを先生に求めるのは間違っています。ただ、クロードくんがローズマリーくんと共に何を成し遂げようとしているのか? それを自分にいつでも問いかけておけというだけの話なのですから」
(俺がロージーと共に成し遂げたいこと? それはロージーがもし復讐を望むのであれば、俺は共にロージーと復讐を遂げろってことなのか? いや、でも……)
「わかりません……。ハジュンさまが何を言いたいのか、俺にはわかりませんっ!」
クロードは強い拒否感を持ってして、ハジュンに自分の意思を伝える。ハジュンはそれを受けて、ふむっとひと呼吸置く。そして、執務室の片隅にある武器が飾られた台のところに移動して、カチャカチャと何かを物色し始めるのであった。
クロードはハジュンがいったい何をしているのかがさっぱり理解できない。
「ああ、あったあった……。これですね。いやあ、これを宰相派から取り戻すには苦労しましたよ……。利権をひとつ、彼らに渡すことになりましたからねえ……」
ハジュンがそう言いながら、鞘に収まったままの1本の剣を左手に持って、クロードの眼の前までやってくるのであった。そして、クロードの右手にしっかりとその剣を持たせるのであった。
(え!? こ、この細剣は!!)
クロードは右手に持たされた細剣に自分の眼が釘付けになる。彼が持たされた細剣はオベール家の家宝である【薔薇乙女の細剣】だったからだ。
「何故、この細剣をハジュンさまが持っているんですか!?」
クロードの疑問も当然であった。宰相:ツナ=ヨッシーが派遣した騎士:モル=アキスに屋敷ごと、オベール家の家宝であるこの【薔薇乙女の細剣】も奪われたからだ。オルタンシア=オベールはそのことを特に気に病んでいた。
――薔薇乙女の細剣。かつて、オルタンシア=オベールがカルドリア=オベールと結婚する際に、彼女の父親から結納品としてオベール家に贈られたモノである。オルタンシアの父親は土の国:モンドラに数あるの有力部族のひとつであった。その部族の象徴でもあるこの細剣をオベール家に譲ったのは、それほどまでにオルタンシアの父親がオルタンシアの無事を願ってのことだとも言われている。
その薔薇乙女の細剣はオルタンシア=オベールの手を経て、その娘であるローズマリー=オベールに受け継がれる予定であったのだ。しかし、その日はついぞやってくることはなかった。オベール家は没落し、ローズマリー=オベールとクロード=サインの結婚は流れてしまった。いや、それよりもそもそも、この細剣をモル=アキスに奪われてしまったのだ。
そのいわくつきの細剣がハジュン=ド・レイからクロード=サインの手に渡されたのである。
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