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第7章:脱出
2:晴れぬ疑念
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「これは想像以上にまずいことになりましたね。コッシローくん。チクマリーンさまに何があったのですか?」
エヌル=ボサツ、テリア=フランダールの逮捕劇で玉座の間が混乱に陥った隙に、ハジュン=ド・レイはそこからいち早く脱出していた。かの両名が捕らわれた以上、次にメアリー帝が名指しで非難する相手はハジュンそのヒトなのは彼にもわかりきっていたからである。
ハジュンはメアリー帝が何かの魔術で理性を失っているのではないかと疑い、魔術の専門家であるコッシローに問いかけたのであった。
コッシローは走るハジュンから振り落とされないように前足で必死にハジュンの左肩に捕まっていた。そのコッシローはうーーーん? と唸り、推測で良ければと前置きして話し出す。
「ボクの眼では、メアリー帝が何かしらの魔術にかかっているようには思えなかったのでッチュウ。アレはメアリー帝が隠していた本性だと思うのでッチュウ」
「うっそでしょおおお!? あんな淑女ぜんとしていた彼女の本性がアレなんですか!? じゃあ、今までチクマリーン、いえ、メアリー帝が周りに見せていた態度は全て偽物だったとでも言いたいんですか?」
ハジュンにはとてもではないが、コッシローの回答は受け入れるモノではなかった。ハジュンはチクマリーン=フランダールとは彼女が幼き日から交流があったのだ。それは単にシヴァ帝の娘と、彼らに臣従する貴族との間の付き合いだったとしても、そこまでヒトの本性を見抜けぬほど間抜けなハジュンではない。
さらに言えば、同じ四大貴族のひとりであるエヌル=ボサツも彼女の本性について知りえなかったことにもなる。大の男ふたりがチクマリーン=フランダールの正体に気づけなかったというそんなことが起きえるのだろうか? 拭えぬ疑問がハジュンの頭の中を駆け巡る。
ハジュンは走りながら、さらにコッシローに自分の疑念をぶちまける。
「先生の見立てでは、彼女はナギッサ=フランダールのことを毛嫌いしているゆえに、彼を謀殺し、シヴァ帝を捕らえ、無理やりにこの一件をなかったことにしろと譲歩を迫るという流れだと思っていたのですが、そう先生が考えていたこと自体がそもそもの間違いだったということですか?」
「そんなのボクにわかるわけが無いのでッチュウ。結果論になってしまうでッチュウけど、ひとつ言えることは、メアリー帝はそもそもとして先代のシヴァ帝が邪魔だったということでッチュウね。現にシヴァ帝は行方不明のままなのでッチュウ。メアリー帝がその件に関わっているとみても良いのではないのでッチュウ?」
(まあ、ボクには関係ない話でッチュウけどね? ハジュンがやろうとしていることと、ボクがやろうとしていることは利害は一致しているッチュウけど、根本的なところが違うでッチュウ)
コッシローがそう心の中で呟いていると、ハジュンが足を止めてコッシローを疑わしい眼で視るのであった。
「コッシローくん? もしかして、コッシローくんまで、先生の邪魔をしようとしていたりします?」
「ちゅっちゅっちゅ。そんなことは無いのでッチュウ。ハジュンがやろうとしていたことは、ボクがやろうとしていることと交差しているのでッチュウ。まあ、それもメアリー帝が誕生したことで、瓦解してしまったかもでッチュウが」
あくまでもしらばっくれるコッシローに対して、ハジュンは、はあやれやれとため息をつかざるをえないのであった。そして、ハジュンは逃走を再開するのであった。自分の子飼いの者たちが控える兵舎へと。
それから10数分後、ハジュンはやっとのこと、兵舎に飛び込むことが出来るのであった。そして、そこに居たロージーとクロード、ヌレバ=スオー、そして筆頭侍女:ミサ=ミケーン、さらには准男爵:セイ=ゲンドーと合流を果たす。ハジュンは5人に宮中で今何が起きているのかを手短に説明するのであった。
「えっ!? 宰相:ツナ=ヨッシーと騎士モル=アキスが殉死扱いで、ハジュンさまとエヌルさまが犯罪者扱いってどういうことなんですか!?」
ロージーが驚くのも無理は無い。彼女はナギッサ=フランダールを救うべく行動していたのだ。それがいきなり自分たちはポメラニア帝国を揺るがす反逆者扱いだ。これに不満が無い者など居ようはずがない。
「はい……。先生はチクマリーンさま。いえ、メアリー帝を見誤っていたようです。とにかく、先生たちは宮廷の掃除に失敗しました。メアリー帝と新たな宰相:オレンジ=フォゲットが、先生たちを捕らえようと兵を差し向けてくるでしょうね」
「そんな……。じゃあ、わたしたちがやったことは全て無駄だっていうことなの? パパは冷却の牢獄から出してもらえないの?」
ロージーの質問に対して、ハジュンは眼を閉じ、ただ黙って首を縦に振る。そんなハジュンを見て、ロージーは身体から力の全てが抜け落ちていく感覚に襲われるのであった。ひざから崩れ落ちそうになっていた彼女の身を背中から支えたのはクロードであった。
彼はロージーの背中側から身体の前に両腕を持っていき、彼女を力強く抱きしめる。
「ロージー。今は逃げよう。カルドリア=オベールさまを救い出す機会はきっとやってくる。今、俺たちがここで捕まったら、誰がロージーのお父さんを救えるんだっ!」
クロードは彼女にそう力強く言いのける。ロージーはクロードの体温を感じて、抜け落ちていた身体の力が再び戻ってくるのを感じるのであった。ロージーはクロードの右腕に自分の両手を重ね、うん、うん……と二度うなずく。
「わかった。クロード。わたしはパパを救うためにも今は逃げるわっ! ハジュンさま! わたしたちはどうやって、この宮廷から逃げ出せば良いの!?」
ロージーの蒼穹の双眸には、はっきりとした意思を示す力強い光が宿っていた。
(パパ、ごめんねっ! 今はまだ救い出せないけれど、必ず、わたしとクロで助け出してみせるからっ!)
ハジュンはロージーの意思のこもった視線を受けて、彼もまた勇気づけられる気分になるのであった。そして、ハジュンは逃走ルートについて説明を開始する。
「一番良いのは、宮廷にある馬小屋で馬車を失敬して、宮廷の裏門を抜けることでしょう。ですが、オレンジ=フォゲットは抜け目の無い女性です。必ず裏門にまで兵士を配置しているでしょう」
「ガハハッ! ならば、我輩の出番でもうすな! 兵の50人や100人。我輩にとっては朝飯前の茶漬けと行ったところなのでもうす!」
ヌレバ=スオーが豪快に笑いながら、自分に任せろとばかりに言い放つ。確かにヌレバならば、それも可能なのだろうが、ハジュンは渋い顔のままであったのだった。
エヌル=ボサツ、テリア=フランダールの逮捕劇で玉座の間が混乱に陥った隙に、ハジュン=ド・レイはそこからいち早く脱出していた。かの両名が捕らわれた以上、次にメアリー帝が名指しで非難する相手はハジュンそのヒトなのは彼にもわかりきっていたからである。
ハジュンはメアリー帝が何かの魔術で理性を失っているのではないかと疑い、魔術の専門家であるコッシローに問いかけたのであった。
コッシローは走るハジュンから振り落とされないように前足で必死にハジュンの左肩に捕まっていた。そのコッシローはうーーーん? と唸り、推測で良ければと前置きして話し出す。
「ボクの眼では、メアリー帝が何かしらの魔術にかかっているようには思えなかったのでッチュウ。アレはメアリー帝が隠していた本性だと思うのでッチュウ」
「うっそでしょおおお!? あんな淑女ぜんとしていた彼女の本性がアレなんですか!? じゃあ、今までチクマリーン、いえ、メアリー帝が周りに見せていた態度は全て偽物だったとでも言いたいんですか?」
ハジュンにはとてもではないが、コッシローの回答は受け入れるモノではなかった。ハジュンはチクマリーン=フランダールとは彼女が幼き日から交流があったのだ。それは単にシヴァ帝の娘と、彼らに臣従する貴族との間の付き合いだったとしても、そこまでヒトの本性を見抜けぬほど間抜けなハジュンではない。
さらに言えば、同じ四大貴族のひとりであるエヌル=ボサツも彼女の本性について知りえなかったことにもなる。大の男ふたりがチクマリーン=フランダールの正体に気づけなかったというそんなことが起きえるのだろうか? 拭えぬ疑問がハジュンの頭の中を駆け巡る。
ハジュンは走りながら、さらにコッシローに自分の疑念をぶちまける。
「先生の見立てでは、彼女はナギッサ=フランダールのことを毛嫌いしているゆえに、彼を謀殺し、シヴァ帝を捕らえ、無理やりにこの一件をなかったことにしろと譲歩を迫るという流れだと思っていたのですが、そう先生が考えていたこと自体がそもそもの間違いだったということですか?」
「そんなのボクにわかるわけが無いのでッチュウ。結果論になってしまうでッチュウけど、ひとつ言えることは、メアリー帝はそもそもとして先代のシヴァ帝が邪魔だったということでッチュウね。現にシヴァ帝は行方不明のままなのでッチュウ。メアリー帝がその件に関わっているとみても良いのではないのでッチュウ?」
(まあ、ボクには関係ない話でッチュウけどね? ハジュンがやろうとしていることと、ボクがやろうとしていることは利害は一致しているッチュウけど、根本的なところが違うでッチュウ)
コッシローがそう心の中で呟いていると、ハジュンが足を止めてコッシローを疑わしい眼で視るのであった。
「コッシローくん? もしかして、コッシローくんまで、先生の邪魔をしようとしていたりします?」
「ちゅっちゅっちゅ。そんなことは無いのでッチュウ。ハジュンがやろうとしていたことは、ボクがやろうとしていることと交差しているのでッチュウ。まあ、それもメアリー帝が誕生したことで、瓦解してしまったかもでッチュウが」
あくまでもしらばっくれるコッシローに対して、ハジュンは、はあやれやれとため息をつかざるをえないのであった。そして、ハジュンは逃走を再開するのであった。自分の子飼いの者たちが控える兵舎へと。
それから10数分後、ハジュンはやっとのこと、兵舎に飛び込むことが出来るのであった。そして、そこに居たロージーとクロード、ヌレバ=スオー、そして筆頭侍女:ミサ=ミケーン、さらには准男爵:セイ=ゲンドーと合流を果たす。ハジュンは5人に宮中で今何が起きているのかを手短に説明するのであった。
「えっ!? 宰相:ツナ=ヨッシーと騎士モル=アキスが殉死扱いで、ハジュンさまとエヌルさまが犯罪者扱いってどういうことなんですか!?」
ロージーが驚くのも無理は無い。彼女はナギッサ=フランダールを救うべく行動していたのだ。それがいきなり自分たちはポメラニア帝国を揺るがす反逆者扱いだ。これに不満が無い者など居ようはずがない。
「はい……。先生はチクマリーンさま。いえ、メアリー帝を見誤っていたようです。とにかく、先生たちは宮廷の掃除に失敗しました。メアリー帝と新たな宰相:オレンジ=フォゲットが、先生たちを捕らえようと兵を差し向けてくるでしょうね」
「そんな……。じゃあ、わたしたちがやったことは全て無駄だっていうことなの? パパは冷却の牢獄から出してもらえないの?」
ロージーの質問に対して、ハジュンは眼を閉じ、ただ黙って首を縦に振る。そんなハジュンを見て、ロージーは身体から力の全てが抜け落ちていく感覚に襲われるのであった。ひざから崩れ落ちそうになっていた彼女の身を背中から支えたのはクロードであった。
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「ロージー。今は逃げよう。カルドリア=オベールさまを救い出す機会はきっとやってくる。今、俺たちがここで捕まったら、誰がロージーのお父さんを救えるんだっ!」
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