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第一章:大英雄の産声《ルクス・ゲネシス》
28 英雄とは程遠い評判
しおりを挟む「おぉ『蒼銀等級の元勇者の先鋒。魔王に加担か』って。すげぇ見出しだな」
「こっちは『悪しき英雄を孕んだ勇者一党の悲劇』と書いてありますよ」
「まったく、あくびが出るな……。どこも同じ文字、同じ見出し。同じ編集者が書いてんのか?」
新聞を読みながらマルコが勝ってきた牛串を頬張る。優雅な一日だ。
としても、ここは王都だから油断をするわけにもいかないんだが。
涸沢からの襲撃のあとは何事もなく、王都にたどり着くことができた。
オレを呼び出した人物とは昼過ぎから会う予定だから、かなり時間がある。
だからこその情報収集だ。新聞といっても王国の手が回っている広報機関ではあるが、新聞を読む層は貴族や各都市を治めるような者たちだ。新聞で語られる話がこの王都から東にかけて伝わっていると思えば、偏った情報であっても知る理由がある。
「……まだ、被りをして歩かないとダメか。難儀だな」
書かれていた内容は、慈悲はなし、擁護もなし――エレは魔王に加担する悪者とされていた。
「どうしました?」
「なぁーんでも。ただ、寒いなぁって」
それを知っていても乗せてくれる行商人には感謝をしないといけない。
新しくもらった白湯を飲み、うん、と頷く。
情報収集も出来た。腹も満ちた。夜這いを毎晩されてヨダレ塗れにされた外套も買い替えた。
時間は有限なのだから、そろそろ動かなければならないか。
「じゃあ、そろそろ行くかな」
「前に仰ってた人と会うというやつですかな?」
「まぁな。昔にお世話になった相手だから邪険にもできないしな……王都にはあんまし近づきたくなかったんだが仕方ない」
ぐいと飲み干した空の洋杯をマルコに押し付け、幌馬車から飛び降りた。
「ま。用事ほど後に取っといて良いもんはない。どうせ、何を言ってくるかはなんとなく分かるしな。それと、まぁ、色々だ」
流れるように身支度を整えると、マルコは休憩していた馬に荷車を牽かせようようと体を立たせる。
「あー、休憩しとけばいい。こっちの仕事だからな。アンタは都の観光でもしてくりゃあいい」
「それでも……いいのですか?」
「いーのさ。気にすんな。じゃあな、また」
悪戯っ子のように笑って、街に向かって歩いていく。
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