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1-2 世界把握編:小さき転生者、旅に同行する
24 風呂場に来襲
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「おぉぉ……僕の体」
着ていた服を脱いで姿見の前を横切ると、自分の全裸に目が留まった。
太っているわけでもなく、痩せこけているわけでもなく。子どもならではの肉付き具合というかなんというか。
「そもそも、この世界の僕は12歳……だっけ」
ステータスボードには書いてなかったよな。
「……んぐぐ」
鏡の自分をじぃぃっと見つめていると、自分の体なのに段々と恥ずかしくなってきた。
「はぁ、年齢とかどうでもいいか……。そんなことより今はお風呂だ」
ガララとお風呂場に入り、かけ湯をして体と頭を丁寧に洗った。
この時間がお風呂への期待を膨らませる、ということを理解してもらえないことが多い。
お風呂に入る前にこうやって体を洗うことで早く入りたいという自分の気持ちを我慢して、入った時の気持ち良さを何倍にも大きくしてくれるのだ
「よしっ、お風呂に入る準備は万端だ。この世界で初めてのお風呂はいかようなモノか!」
なんてテンションが上がって声を出して、浴槽に飛び込んだ。
バサァッ、と浴室に音が響く。
「あぁぁぁぁぁぁぁ……溶ける……………」
感想、最高。以上。
なんでこんなにお風呂は僕をあったかくしてくれるのだろうか……。
浴槽の縁に顎を置いて、口から自然と声が漏れでる。
体全体を伸ばしてもぎりぎりぶつからなさそうな大きさだから、首元まで浸かって頭だけ外に出して天井を見上げてみたり、浮いてみたり、顔を沈めてみたりした。
いい、とてもいい。よろしいです。
「うぅぅぅえぇぅあぁぁぁぁ…………」
体が本当に溶けて湯舟の湯になっているんじゃないかと思ってしまうほど、久々のお風呂を堪能していった。
満足してゆっくりと浸かっていると最初に入った喜びに慣れていき、お風呂独特の暇な時間がやってくる。
その時間を使って自分の手を握ってみたり、体をペタペタと触ってみたり。
「やわらかい……。若い……」
いや、それよりも何でこんなに肌がスベスベなんだ? まるで女性の体みたい。
手も小さいし、頬もむにむにしている。若いってこんな感じだったっけ?
「……僕は自分の体で何をしてるんだ」
姿見で自分の裸体を見て照れるなんて変な話だ。
自分の体という実感がまだまだ薄い。この体がいつ僕のものだと理解するのにどれくらい時間がかかるのかしら。
「はぁ~……それも、まぁ、どうでもいいか」
そういえばゆっくりと湯舟に浸かったのはいつぶりだろう。
あのバイトの日々が始まって以来入ってない気がする……二年と少しぶりってことか。
お風呂に入っただけで幸せを感じるって、どれだけ思いつめてたって話だよな。
「ははは。君に教えたいことがこの数日で沢山できたよぉ~、明人」
エリルが言ってくれた「ますたーは自由なんですよ!」という言葉が頭に過って、小さく笑った。
「……今の僕は自由だよ、とても」
転生前の世界から結果的に逃げたみたいになっているのはとても心苦しい。出来ることなら佳奈と一緒に大学に行ってみたかった。
けれど、それを後悔していても仕方がない。
「……他愛のない会話が楽しいってことも……忘れてたんだもんな」
エルシアさんの元気一杯で話しかけてくれるあの感じ。
レヴィさんの落ち着きのある声で話をしてくれる小難しい話。
ムロさんの寝息がうるさいこととか。
四人で釣りをしたり、料理をしたり、話をするだけで幸せを感じることができた。
転生前の世界が嫌いってわけじゃない。やり残したことも沢山ある。
だからこそ、この世界では悔いの無いように生きていきたい。
「佳奈も探さないと……だし……」
独り言が多くなってきたな……そろそろ出るか。
湯船からゆっくりと腰をあげてシャワーを浴びていると、ガララララッとお風呂場の引き戸が開く音が聞こえた。
「クラちゃ~ん! 一緒に入ろ~!!」
「……え」
そこにいたのは、既に脱衣を済ませていたエルシアさんだった。
着ていた服を脱いで姿見の前を横切ると、自分の全裸に目が留まった。
太っているわけでもなく、痩せこけているわけでもなく。子どもならではの肉付き具合というかなんというか。
「そもそも、この世界の僕は12歳……だっけ」
ステータスボードには書いてなかったよな。
「……んぐぐ」
鏡の自分をじぃぃっと見つめていると、自分の体なのに段々と恥ずかしくなってきた。
「はぁ、年齢とかどうでもいいか……。そんなことより今はお風呂だ」
ガララとお風呂場に入り、かけ湯をして体と頭を丁寧に洗った。
この時間がお風呂への期待を膨らませる、ということを理解してもらえないことが多い。
お風呂に入る前にこうやって体を洗うことで早く入りたいという自分の気持ちを我慢して、入った時の気持ち良さを何倍にも大きくしてくれるのだ
「よしっ、お風呂に入る準備は万端だ。この世界で初めてのお風呂はいかようなモノか!」
なんてテンションが上がって声を出して、浴槽に飛び込んだ。
バサァッ、と浴室に音が響く。
「あぁぁぁぁぁぁぁ……溶ける……………」
感想、最高。以上。
なんでこんなにお風呂は僕をあったかくしてくれるのだろうか……。
浴槽の縁に顎を置いて、口から自然と声が漏れでる。
体全体を伸ばしてもぎりぎりぶつからなさそうな大きさだから、首元まで浸かって頭だけ外に出して天井を見上げてみたり、浮いてみたり、顔を沈めてみたりした。
いい、とてもいい。よろしいです。
「うぅぅぅえぇぅあぁぁぁぁ…………」
体が本当に溶けて湯舟の湯になっているんじゃないかと思ってしまうほど、久々のお風呂を堪能していった。
満足してゆっくりと浸かっていると最初に入った喜びに慣れていき、お風呂独特の暇な時間がやってくる。
その時間を使って自分の手を握ってみたり、体をペタペタと触ってみたり。
「やわらかい……。若い……」
いや、それよりも何でこんなに肌がスベスベなんだ? まるで女性の体みたい。
手も小さいし、頬もむにむにしている。若いってこんな感じだったっけ?
「……僕は自分の体で何をしてるんだ」
姿見で自分の裸体を見て照れるなんて変な話だ。
自分の体という実感がまだまだ薄い。この体がいつ僕のものだと理解するのにどれくらい時間がかかるのかしら。
「はぁ~……それも、まぁ、どうでもいいか」
そういえばゆっくりと湯舟に浸かったのはいつぶりだろう。
あのバイトの日々が始まって以来入ってない気がする……二年と少しぶりってことか。
お風呂に入っただけで幸せを感じるって、どれだけ思いつめてたって話だよな。
「ははは。君に教えたいことがこの数日で沢山できたよぉ~、明人」
エリルが言ってくれた「ますたーは自由なんですよ!」という言葉が頭に過って、小さく笑った。
「……今の僕は自由だよ、とても」
転生前の世界から結果的に逃げたみたいになっているのはとても心苦しい。出来ることなら佳奈と一緒に大学に行ってみたかった。
けれど、それを後悔していても仕方がない。
「……他愛のない会話が楽しいってことも……忘れてたんだもんな」
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レヴィさんの落ち着きのある声で話をしてくれる小難しい話。
ムロさんの寝息がうるさいこととか。
四人で釣りをしたり、料理をしたり、話をするだけで幸せを感じることができた。
転生前の世界が嫌いってわけじゃない。やり残したことも沢山ある。
だからこそ、この世界では悔いの無いように生きていきたい。
「佳奈も探さないと……だし……」
独り言が多くなってきたな……そろそろ出るか。
湯船からゆっくりと腰をあげてシャワーを浴びていると、ガララララッとお風呂場の引き戸が開く音が聞こえた。
「クラちゃ~ん! 一緒に入ろ~!!」
「……え」
そこにいたのは、既に脱衣を済ませていたエルシアさんだった。
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