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微睡の午後※
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アークライト邸に戻ったイザベラは、そのまま迷いなくルミナスの部屋に運び込まれた。
意識の朦朧とする令嬢の自室に男が入るのは憚れたからだ。
お前の部屋に運ぶのも、どうかと思うぞ。こんな場合は客間だろ。ジョナサンは思ったが、それどころではないルミナスが考えに及んでいないだけで、下心など微塵もないことがわかっていたから、心に留めておいた。
待ち構えていたアリアも加わり、ルミナスを始め、ジョナサンとその愛人、マリリン、マークスが部屋に入ると、室内の酸素は幾分か薄くなった気さえする。
ベッドに横たわり、苦しそうに呼吸するイザベラのスカートからは、透明のねっとりとした情事特有の液体が脚を伝って流れ落ちていた。
「子供は見ちゃ駄目よ」
言いながらジョナサンの愛人はアリアの背後に回り込むと、手で目隠しする。
「……アークライト様」
吐き出す息に乗る彼を呼ぶイザベラの声は、艶めいている。
町で一番人気の娼婦でさえ敵わない色っぽさ。その場の男連中はおろか、女性陣まで顔を赤らめ、くらくらと熱に浮かされている。
そんな淫靡を空咳で散らしたのは、ジョナサン。
「おそらく、媚薬を飲まされたんだな。幸い飲んだ量が少なかったからか、廃人にはなっていない」
「治るのか? 苦しそうだぞ」
ルミナスが不安そうに目を眇める。
「ああ。だが、体が疼いて仕方ないらしいな。可哀想に」
目元を赤らめ、声を上擦らせつつ、ジョナサンは冷静に分析する。
「どうしたら良いんだ」
弱り切ってルミナスが呟く。
「そんなのお前が何とかしてやれよ」
「何とかって何だ」
「おいおい。お前、童貞じゃねえだろうな」
「そんなわけあるか! 」
ジョナサンの軽口にブチ切れ、ルミナスは拳を握り込んで真っ赤になった。
「なら、わかるだろ。アークライト」
意味深にニタニタ笑いの友人に、ルミナスはこれでもかと顔をしかめる。紳士たるもの、弱味に付け込むのは人道に劣るとか何とかと、葛藤しているのだ。
「なあ、お嬢さん? 」
いつまでも愚図愚図して焦ったいルミナスを放って、ジョナサンはイザベラの方を向いた。
「俺みたいな他人より、気心知れたアークライトの方が良いよな」
頭に靄がかかって冷静な判断の出来ないイザベラは、言葉通りに受け止めて、素直に頷く。
「え、ええ」
よくわからないが、ルミナスの方が良いに決まっている。
「ほらな。お嬢さんはお前を所望してるぞ」
どうだ、とジョナサンはニヤニヤと含み笑いでルミナスを横目した。
ルミナスはますますしかめっ面になってしまった。
イザベラは彼がどうして憮然としているのかわからない。
ルミナスが必死になって紳士ぶっているだけだとは、彼女以外の大人はちゃんと見透かしている。生温かい目が集中して、ルミナスはますますムスッと口元を引き結んだ。
「お嬢さん、こいつは性欲が強い方だから、ちょっとやそっと子種を吸い取ったくらいじゃ、へばらねえよ」
下衆な台詞を言ってのける友人に、ルミナスは我慢がならず、容赦なくその頬に鉄槌を下した。
「子供は聞いちゃ駄目よ」
苦笑しながらアリアの前に立ったマリリンは、アリアの両耳を塞いだ。
社交デビューしたての十六の初心な子供であるマークスには、誰も目も耳も塞いではくれなかったので、顔から火を吹いて俯くしかなかった。
意識の朦朧とする令嬢の自室に男が入るのは憚れたからだ。
お前の部屋に運ぶのも、どうかと思うぞ。こんな場合は客間だろ。ジョナサンは思ったが、それどころではないルミナスが考えに及んでいないだけで、下心など微塵もないことがわかっていたから、心に留めておいた。
待ち構えていたアリアも加わり、ルミナスを始め、ジョナサンとその愛人、マリリン、マークスが部屋に入ると、室内の酸素は幾分か薄くなった気さえする。
ベッドに横たわり、苦しそうに呼吸するイザベラのスカートからは、透明のねっとりとした情事特有の液体が脚を伝って流れ落ちていた。
「子供は見ちゃ駄目よ」
言いながらジョナサンの愛人はアリアの背後に回り込むと、手で目隠しする。
「……アークライト様」
吐き出す息に乗る彼を呼ぶイザベラの声は、艶めいている。
町で一番人気の娼婦でさえ敵わない色っぽさ。その場の男連中はおろか、女性陣まで顔を赤らめ、くらくらと熱に浮かされている。
そんな淫靡を空咳で散らしたのは、ジョナサン。
「おそらく、媚薬を飲まされたんだな。幸い飲んだ量が少なかったからか、廃人にはなっていない」
「治るのか? 苦しそうだぞ」
ルミナスが不安そうに目を眇める。
「ああ。だが、体が疼いて仕方ないらしいな。可哀想に」
目元を赤らめ、声を上擦らせつつ、ジョナサンは冷静に分析する。
「どうしたら良いんだ」
弱り切ってルミナスが呟く。
「そんなのお前が何とかしてやれよ」
「何とかって何だ」
「おいおい。お前、童貞じゃねえだろうな」
「そんなわけあるか! 」
ジョナサンの軽口にブチ切れ、ルミナスは拳を握り込んで真っ赤になった。
「なら、わかるだろ。アークライト」
意味深にニタニタ笑いの友人に、ルミナスはこれでもかと顔をしかめる。紳士たるもの、弱味に付け込むのは人道に劣るとか何とかと、葛藤しているのだ。
「なあ、お嬢さん? 」
いつまでも愚図愚図して焦ったいルミナスを放って、ジョナサンはイザベラの方を向いた。
「俺みたいな他人より、気心知れたアークライトの方が良いよな」
頭に靄がかかって冷静な判断の出来ないイザベラは、言葉通りに受け止めて、素直に頷く。
「え、ええ」
よくわからないが、ルミナスの方が良いに決まっている。
「ほらな。お嬢さんはお前を所望してるぞ」
どうだ、とジョナサンはニヤニヤと含み笑いでルミナスを横目した。
ルミナスはますますしかめっ面になってしまった。
イザベラは彼がどうして憮然としているのかわからない。
ルミナスが必死になって紳士ぶっているだけだとは、彼女以外の大人はちゃんと見透かしている。生温かい目が集中して、ルミナスはますますムスッと口元を引き結んだ。
「お嬢さん、こいつは性欲が強い方だから、ちょっとやそっと子種を吸い取ったくらいじゃ、へばらねえよ」
下衆な台詞を言ってのける友人に、ルミナスは我慢がならず、容赦なくその頬に鉄槌を下した。
「子供は聞いちゃ駄目よ」
苦笑しながらアリアの前に立ったマリリンは、アリアの両耳を塞いだ。
社交デビューしたての十六の初心な子供であるマークスには、誰も目も耳も塞いではくれなかったので、顔から火を吹いて俯くしかなかった。
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