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鈴蘭の紋章※

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 元々イザベラに対して際どい発言を繰り返していたが、ベッドの中でこれほど卑猥な言葉をぽんぽんと思いつくとは。イザベラはルミナスの頭の中を真っ二つに割って覗きたくなる。
「あなたがこれほど野蛮な方だったなんて、がっかりしたわ」
「男の頭の中なんて、こんなものだよ」
「女性は違うわ」
「一緒だよ。禁断のリンゴを食べるよう唆されたのは、イブの方だったじゃないか」
「アダムだって食べたじゃない」
「だから、男も女も所詮、考えてることは同じなんだよ」
 もっともらしく諭され、ぐっとイザベラは奥歯を噛む。ふざけたことを抜かしているが、知識も口もこの男の方が格上だ。
「現実がわかって結構なことじゃないか」
 そしてルミナスは、今から身をもって現実をわからせようとする。
「いつまでそんな男に夢見ている気だ? 」
 指を三本、根元まで一気に押し込むと、イザベラの蜜壺を弄り回した。今晩、二度も彼を味わっていたから、その場所はすっかり蕩けて、少しの刺激でぐずぐずに湿り、たちまち蜜を滴らせる。
「君を早く大人にしたかった。そうに違いない」
「どうしてそう言い切れるの? 」
「そりゃ、決まっているだろう。昼間は貞淑、夜は淫乱。堪らないじゃないか」
「娼婦みたいに言わないで」
「褒めているんだよ。おまけに学識もある。最高の女性だとね」
「あ、あん。もう」
 イザベラのどこを刺激すれば痙攣するか、ルミナスはとっくに学習している。
「やっぱりアークライト卿は、先進的ね。女に学はいらないって、そんなふうに考える方はまだまだ多いわ」
「くだらないやつは、一定数いるからね」
 まだまだ男性上位の社会。男が権限を奮い、女はそれに従う。そのような中で、ずけずけと意見するイザベラのような女性は異質さえあった。
「それより、聞き捨てならないな」
 ルミナスはイザベラから指を引き抜くと、ぐずぐずに蕩けた内部で熟れて腫れ上がった小さな豆を指先で摘んだ。びくびくっとイザベラの体が魚のように跳ねた。
「夫婦なのだから、敬称ではなく名前で呼びたまえ」
 まるでお仕置きだと言わんばかりに、強めに引っ張られる。
「ルミナス、と」
 形容出来ない痛みで顔をしかめ、イザベラは彼の胸板を叩いて抗議する。
 まだ刺激に慣れないイザベラ。ルミナスは渋々と手を引いた。
「ルミナスと呼びたまえ」
「そんな。恐れ多いわ」
「何故だ? 」
「私は家庭教師よ」
「そこに、私の妻という役目を付け加えるんだ。簡単なことだ」
 ルミナスのルビー色の瞳は、いつになく赤く、潤んでさえいた。それが妙に色気を冗長させている。
「わかったかい? イザベラ? 」
 すっかりルミナスに翻弄されていた。
「……わかったわ。ルミナス様」
 彼の求めに素直に応じてしまう。
「上出来だ」
 ルミナスはイザベラが応えたことに満足し、目を細めた。イザベラはこの顔に弱い。いつもは油断ならない笑みを携えているから、優しさ全開の笑顔に調子を狂わされる。
「左手を貸して」
 言われるままに、ルミナスに左手を差し出す。彼はその手を取ると、イザベラの薬指に金色の指輪を嵌めた。
「夫婦の証だ」
 純度の高い金に、鈴蘭の紋章が細工されている。
「そんな。仮初なのに。勿体ないわ」
 偽りの関係なのに、これほど価値の高いものを贈られて、イザベラは申し訳なさに俯く。
「仮初だろうが何だろうが、君が私の妻であることに違いない」
「そうだけど。こんな高価なもの」
「子爵夫人として当然だ」
 社会的地位のある者に相応しい品物。彼がそれを造らせることで様々な職人が動き、経済は活性化されて、いづれは投資家の彼に還元される。決して無駄ではない。
「何だか魔法にかかったみたい」
 御伽話のお姫様になった気分で、イザベラは指輪を目線に掲げた。
 まさか自分がこれを身につける日が来るとは。
「私は騎士の次は魔法使いか? 」
 イザベラの例え話を、ルミナスは優しく問いかけた。だが、声とは裏腹にその瞳は明らかにギラギラと抜け目なく光っている。
「それなら、魔法が解けないように努力しないとな」
「どんな? 」
 ルミナスの内心には気づかず、陶然としてイザベラは首を傾げる。
「例えば……」
 そこで、イザベラにかけられた魔法の種類が変わり、彼女は男女の現実を知らしめられる。
 ルミナスの寝室からは、明け方まで嬌声がひっきりなしに続いた。
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