21 / 26
必死の抵抗
しおりを挟む
「よ、寄らないで! 」
「隊長の運命を握っているのは、あなたですよ」
はっとレイノリアは動きを止める。
「そう。いい子だ。そうでなくては」
満足そうにデイビスは口角を吊り上げた。
うっとレイノリアは吐き気を催し、食道からせり上がる胃液を堪える。
押し付けられたデイビスの唇は妙にネバついている。
ライナードへ仕掛けたキスとは比べ物にならない。
ライナードの荒れた感触を思い出し、眦に涙が浮かんだ。
「キスくらいで、そんな悲しそうな目を。それ以上となると、どのような顔をしますかね。ああ。楽しみだ」
一旦口を離したデイビスは、レイノリアの顎を指で摘まんで上を向かせる。
舌まで入れられたら堪らない。奥歯を噛み締め侵入を阻むと、挑む目つきで睨みつける。
それに対するデイビスの反応といえば、酷薄な笑い方。
「私は心が広いですからね。そんな顔をされたくらいでは、怒りませんよ。なあに、すぐに気持ち良くさせますから」
デイビスの手が近づき、レイノリアのカッターシャツの釦に指先が絡む。
ぎくり、とレイノリアの頬が引き攣った。
「い……嫌だ! 」
「おとなしくしなさい」
「嫌だ! 」
体まで許すつもりはない。
抱かれてもいいと思える相手は、隊長だけだ。
レイノリアは手を振り乱して抵抗する。
デイビスの頬に拳をぶちかましてやろうと試みたが、空振りした。仕置きと称して、さらに手を頭上で捻り上げられ、あっけなく両手の動きを阻止されてしまう。
だが、まだ足が残っている。手が駄目なら足がある。騎士たる者、いかなる場合であろうと諦めない。ぎりぎりまで可能性を模索する。骨の髄まで叩きこまれている信念だ。レイノリアは素早くその信念を実行に移した。
右足をくの字に曲げ、すぐさま大きく伸ばした。足裏に重みを感じる。完璧にデイビスの鳩尾に蹴りが入った。
ぐうっと、獣の断末魔のような呻きを上げ、デイビスは真後ろに吹っ飛んだ。背中を壁に叩きつけられて、ずるずると崩れ落ちる。
今だ。隙を逃さず、ようやく手に入れた自由の体で、レイノリアは一直線に玄関扉へと駆けた。シャツのボタンをなおしている場合ではない。前が捲れ上がったまま三和土へ。ドアノブに指先が届く。あと少し。
だが、がくりと膝が折れ、四つん這いになってしまい、指先がノブから離れた。
必死の形相のデイビスが、逃すまいと両足首を掴んできたのだ。
再びレイノリアの体は部屋へと引き戻された。
それでも諦めるものかと、レイノリアは足首を動かして振り払おうともがく。
デイビスも逃すつもりはない。片手がレイノリアのシャツの裾に掛かった。
「この女! 」
デイビスが咆哮を上げた。
抵抗すればするほど、シャツの生地が揉みくちゃになり、釦が弾けて飛んだ。生地が引き裂かれ、開いたシャツの中から、日に焼けた素肌が剥き出した。そこへ、容赦なくデイビスの手が伸びてくる。
このままでは犯られる。
デイビスは、レイノリアの体を手に入れることだけに意識を集中させている。
デイビスの目は尋常ではない。
「隊長! 」
レイノリアは、ここに来るはずのない男の名を呼んだ。
「隊長の運命を握っているのは、あなたですよ」
はっとレイノリアは動きを止める。
「そう。いい子だ。そうでなくては」
満足そうにデイビスは口角を吊り上げた。
うっとレイノリアは吐き気を催し、食道からせり上がる胃液を堪える。
押し付けられたデイビスの唇は妙にネバついている。
ライナードへ仕掛けたキスとは比べ物にならない。
ライナードの荒れた感触を思い出し、眦に涙が浮かんだ。
「キスくらいで、そんな悲しそうな目を。それ以上となると、どのような顔をしますかね。ああ。楽しみだ」
一旦口を離したデイビスは、レイノリアの顎を指で摘まんで上を向かせる。
舌まで入れられたら堪らない。奥歯を噛み締め侵入を阻むと、挑む目つきで睨みつける。
それに対するデイビスの反応といえば、酷薄な笑い方。
「私は心が広いですからね。そんな顔をされたくらいでは、怒りませんよ。なあに、すぐに気持ち良くさせますから」
デイビスの手が近づき、レイノリアのカッターシャツの釦に指先が絡む。
ぎくり、とレイノリアの頬が引き攣った。
「い……嫌だ! 」
「おとなしくしなさい」
「嫌だ! 」
体まで許すつもりはない。
抱かれてもいいと思える相手は、隊長だけだ。
レイノリアは手を振り乱して抵抗する。
デイビスの頬に拳をぶちかましてやろうと試みたが、空振りした。仕置きと称して、さらに手を頭上で捻り上げられ、あっけなく両手の動きを阻止されてしまう。
だが、まだ足が残っている。手が駄目なら足がある。騎士たる者、いかなる場合であろうと諦めない。ぎりぎりまで可能性を模索する。骨の髄まで叩きこまれている信念だ。レイノリアは素早くその信念を実行に移した。
右足をくの字に曲げ、すぐさま大きく伸ばした。足裏に重みを感じる。完璧にデイビスの鳩尾に蹴りが入った。
ぐうっと、獣の断末魔のような呻きを上げ、デイビスは真後ろに吹っ飛んだ。背中を壁に叩きつけられて、ずるずると崩れ落ちる。
今だ。隙を逃さず、ようやく手に入れた自由の体で、レイノリアは一直線に玄関扉へと駆けた。シャツのボタンをなおしている場合ではない。前が捲れ上がったまま三和土へ。ドアノブに指先が届く。あと少し。
だが、がくりと膝が折れ、四つん這いになってしまい、指先がノブから離れた。
必死の形相のデイビスが、逃すまいと両足首を掴んできたのだ。
再びレイノリアの体は部屋へと引き戻された。
それでも諦めるものかと、レイノリアは足首を動かして振り払おうともがく。
デイビスも逃すつもりはない。片手がレイノリアのシャツの裾に掛かった。
「この女! 」
デイビスが咆哮を上げた。
抵抗すればするほど、シャツの生地が揉みくちゃになり、釦が弾けて飛んだ。生地が引き裂かれ、開いたシャツの中から、日に焼けた素肌が剥き出した。そこへ、容赦なくデイビスの手が伸びてくる。
このままでは犯られる。
デイビスは、レイノリアの体を手に入れることだけに意識を集中させている。
デイビスの目は尋常ではない。
「隊長! 」
レイノリアは、ここに来るはずのない男の名を呼んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
191
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる