【完結】華麗なるマチルダの密約

氷 豹人

文字の大きさ
32 / 114

悪役令嬢の誘惑4 ※

しおりを挟む
「もう終わりだ、終わり」
 マチルダに背を向けるなり、ロイはシャツを羽織って、その鍛えられた筋肉の盛り上がりを隠した。
「待って。ここまでしたのだから、最後まで試してみたいわ」
 唇を尖らせながら、マチルダはシャツの裾を引っ張る。
「何だと? 」
 第二ボタンを引っ掛かけていたロイの手が止まった。
「教科書にはまだ続きがあるわ」
 まだ男女の生殖器官について確かめただけ。
 教科書にはその生殖器をどう使うかが示されていたはずだ。
 興味津々のマチルダを、ロイは素っ気なく一瞥する。
「それは婚姻後まで取っておけ」
 結婚前に教科書を上回る「お勉強」をする女もいるにはいるが、誰しもがそうとは限らない。
 将来、夫となる人物のために貞操を守る女もちゃんと存在している。マチルダはそちら側だ。
「お願い、ロイ」
 ぞくり、とするくらいに艶めいた声。
「苦しくて堪らないの」
 マチルダはわざとではない。
 ふんだんに色香を放つのは、媚薬のせいだ。
「このままじゃ、屋敷には戻れないわ」
 媚薬の効果が切れるのは、口に含んでからおよそ半日。まだ三時間以上残されている。
 未だに愛液で湿るマチルダを屋敷に戻せば、アニストン家がひっくり返るほどの騒ぎとなるのは目に見えている。
 ロイは、やれやれと溜め息をついた。
 首元まで留めたシャツのボタンを再び外しにかかる。
「君を相手にしていると、どうも調子が狂ってしまう」
「軽蔑しているの? 」
「いや。自分の情けなさに呆れているだけだ」
「『愚かな知恵者になるよりも、利口な馬鹿者になれ』」
「またシェイクスピアで口説くつもりか? 」
「駄目? 」
「『閉じ込められている火が一番強く燃えるものだ』確かにそうだな」
 ニヤリと笑うなり、ロイは脱いだシャツを床に放り投げた。


「どの場所を使って、どうするか。本当にわかっているんだな? 」
「勿論よ」
 窮屈なベッドで自分の腹の上にマチルダを乗せながら、ロイは挑発気味に尋ねた。
 マチルダは腰をくねらせ、豊かな胸を揺する。挑発の仕返しだ。
 つい今しがた精を吐き出したというのに、尾てい骨に当たるロイの男根はもう力を持ち直していた。
 待ち切れなくて、マチルダは蜜を彼の臍に擦り付ける。
「こんな状態なら、馴らさなくても大丈夫そうだな」
 ロイは熱に浮かされたように呟くと、マチルダの腰に手を添えた。
 媚薬で滴る上、これでもかとロイに舌先で愛撫されたマチルダの花弁は、すっかり開ききり、小刻みにひくついている。
「初めてが私相手で良いのか? 」
「ええ。ロイしか考えられないわ」
 マチルダは下方へ体をずらすと、滾る彼のものを探り、誘導する。
「ああ! 」
 弓形に体が反り、マチルダは目を閉じて堪えた。
 先端が己の内部に潜る。予想以上の熱さだ。
「熱い! 熱いわ! 」
「こら。静かにしろ」
「ああ! ロイ! 」
 熱塊がマチルダの狭い道をぐいぐいと押し入ってくる。内壁がパンパンに膨らみ、容量でいっぱいになる。
 熱い。熱くて堪らない。ヒリヒリと火を吹く内部に、マチルダはいやいやと首を振った。
 何者も受け入れたことのないマチルダの中は、ロイにも苦しさを与えた。獣の唸りが喉奥で滞る。
 彼は戻るより、先へ進むことを選択せざるを得なかった。マチルダがぎゅうぎゅうに締め付けて食らいついていたからだ。
 マチルダの襞が蠢いて、道がロイの形通りに作られていく。
 ようやく最奥まで届いたとき、マチルダもロイも全身の毛穴から汗が吹き出して、シーツをぐっしょりと濡らした。
 ロイは腹筋を使って上半身を起こす。
 マチルダはごく自然に彼の首筋にしがみついた。
 それを合図として、上下に揺すられる。
 安っぽいベッドは、二人分の重みで軋みっぱなし。
 密着する肌は、汗でじっとりと湿っている。真下から腰を打ちつけられるたびに、乳房の先端が彼の胸板に擦って、余計にマチルダは快楽の渦に引き込まれた。
 首筋を甘噛みされる。ロイの所有物になった気分だ。
 この男が欲しい。マチルダの欲が湧き立つ。
 彼が自分につけたのと同じ場所に、マチルダも甘噛みをし返した。
「悪い女だな、君は」
 ニヤリと口元を吊るロイは、なんてセクシーなのだろう。まさに、オリンポスの住人のよう。目を見張るほど美しく、囚われてしまう。
「訂正しよう」
「え? 」
「氷の悪女の異名だよ」
「何? 」
「氷じゃない。君は男を欲望で火だるまにさせる激しい女だ」
「悪女に代わりないじゃない」
「まあな」
 言うなり、殊更荒々しく子宮を打ちつけてくるロイ。
 じゅぷじゅぷと結合部からの卑猥な水音が激しくなった。
 目が回る。
 マチルダの体が上下に跳ね飛ばされ、豊満な胸がゆさゆさ音を立てた。
 肉食獣が荒々しく唸る。
 まさにそれは、獣同士のぶつかり合い。
「ああ! ロイ! 何だか体が変だわ! 」
 絶頂間近だ。
 子宮を荒々しく叩かれて、マチルダは下腹がうねるような感覚を味わう。
 ロイへの締め付けが増した。
「マチルダ! 」
 一際、声高らかに名を呼ばれる。
 内壁が蠕動する。
「あ……ああ……」
 熱情の中に放り込まれたマチルダは、ぐるぐる回る視界に、最早、返事すらまともに出来なくなってしまっている。
 ロイは素早くマチルダから自身を引き抜くと、彼女の腿に熱く滾る白濁をぶちまけた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

処理中です...