113 / 114
甘い時間は永遠に2
しおりを挟む
「ま、まさか、君。まさか」
「何? 」
「まさか、私の目を盗んで男娼を買おうとしてるんじゃなかろうな? 」
ロイは大袈裟に両手を広げ、マチルダに迫った。
マチルダはがっくりと肩を落とす。
「どんな思考をしたら、そう飛躍出来るの? 」
「おい! 否定しなかったな! 」
「呆れて、出来なかったのよ」
「わ、私は君を毎晩可愛いがっているではないか! 駄目なのか? あれでは、まだ物足りないないのか? 」
「ちょ、ちょっと。ロイ」
「抜かずの五連発は、まだ不満か? それなら今夜は、その倍に挑戦してやる」
などと拳を震わせ、脇目もふらず宣言する。
マチルダはズキズキとこめかみが疼いた。
「おいおい、絶倫野郎。さすがにそれは死ぬぞ」
ロイが本気と知るや、ミハエルが苦笑いで止めた。
「は、恥知らず! 人前で大声で喋る内容ではなくてよ! 」
夫婦がどのような夜を過ごしているか筒抜けになって、カーッとマチルダの血圧が上昇する。
「確かに奥さんの言う通りだ」
「だから、お前は黙っていろ」
またしても横入りするミハエルにロイは舌打ちすると、続いてマチルダの両肩を掴むや思い切り揺さぶった。
「マチルダ。私の何が不満だ? もしや、夜だけでは足りないのか? それなら、仕事先にも君を連れて、休憩の合間に励むから」
「おいおい。ケジメはつけろ」
「うるさい」
ロイは必死だ。
マチルダを満足させる、あらゆる手段を捻り出してくる。
「マチルダ。君を満足させるためなら、何でもする。また湖畔でするか? そろそろ肌寒くなってきたが、それを忘れさせるくらい熱く交われば良いだけだからな」
「お前らも、なんだかんだと激しいな」
「黙ってろ」
呆れ果てたミハエルを、ロイは早口で遮る。
「アークライトのように、三日三晩、君をベッドから出させない。だから、男娼なんて買うな。買わないでくれ」
片膝をつき、祈りを捧げるポーズまで。
本気なのか冗談なのか、最早、わからない。
「この、底抜けのバカ! 」
ついにマチルダの堪忍袋の緒が切れた。
「わ、私が男娼を買うと誰が言いました!? 」
耳から湯気を吹かんばかりに顔を真っ赤にして、唾を飛ばす。あんまりむかついて、まだ娼婦が眠っていると言うことも忘れて、だんだんと床を踏み締める。
「ベラベラベラと。よくも、大っぴらに閨のあれこれを! 」
そのあまりの剣幕に、ロイもようやく失言に気付いたらしい。
ふらふらと足取り悪く、ソファに座り込むや、叱りつけられたら子供のようにしょんぼりと項垂れた。
かつて界隈で鳴らしたプレイボーイは、どこにもいない。
「何? 」
「まさか、私の目を盗んで男娼を買おうとしてるんじゃなかろうな? 」
ロイは大袈裟に両手を広げ、マチルダに迫った。
マチルダはがっくりと肩を落とす。
「どんな思考をしたら、そう飛躍出来るの? 」
「おい! 否定しなかったな! 」
「呆れて、出来なかったのよ」
「わ、私は君を毎晩可愛いがっているではないか! 駄目なのか? あれでは、まだ物足りないないのか? 」
「ちょ、ちょっと。ロイ」
「抜かずの五連発は、まだ不満か? それなら今夜は、その倍に挑戦してやる」
などと拳を震わせ、脇目もふらず宣言する。
マチルダはズキズキとこめかみが疼いた。
「おいおい、絶倫野郎。さすがにそれは死ぬぞ」
ロイが本気と知るや、ミハエルが苦笑いで止めた。
「は、恥知らず! 人前で大声で喋る内容ではなくてよ! 」
夫婦がどのような夜を過ごしているか筒抜けになって、カーッとマチルダの血圧が上昇する。
「確かに奥さんの言う通りだ」
「だから、お前は黙っていろ」
またしても横入りするミハエルにロイは舌打ちすると、続いてマチルダの両肩を掴むや思い切り揺さぶった。
「マチルダ。私の何が不満だ? もしや、夜だけでは足りないのか? それなら、仕事先にも君を連れて、休憩の合間に励むから」
「おいおい。ケジメはつけろ」
「うるさい」
ロイは必死だ。
マチルダを満足させる、あらゆる手段を捻り出してくる。
「マチルダ。君を満足させるためなら、何でもする。また湖畔でするか? そろそろ肌寒くなってきたが、それを忘れさせるくらい熱く交われば良いだけだからな」
「お前らも、なんだかんだと激しいな」
「黙ってろ」
呆れ果てたミハエルを、ロイは早口で遮る。
「アークライトのように、三日三晩、君をベッドから出させない。だから、男娼なんて買うな。買わないでくれ」
片膝をつき、祈りを捧げるポーズまで。
本気なのか冗談なのか、最早、わからない。
「この、底抜けのバカ! 」
ついにマチルダの堪忍袋の緒が切れた。
「わ、私が男娼を買うと誰が言いました!? 」
耳から湯気を吹かんばかりに顔を真っ赤にして、唾を飛ばす。あんまりむかついて、まだ娼婦が眠っていると言うことも忘れて、だんだんと床を踏み締める。
「ベラベラベラと。よくも、大っぴらに閨のあれこれを! 」
そのあまりの剣幕に、ロイもようやく失言に気付いたらしい。
ふらふらと足取り悪く、ソファに座り込むや、叱りつけられたら子供のようにしょんぼりと項垂れた。
かつて界隈で鳴らしたプレイボーイは、どこにもいない。
65
あなたにおすすめの小説
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる