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第76話「自己の恋人、または伴侶が無断で性行為を行った第三者に身心を奪われることによって発生する性的興奮・快楽に関する授業⑤」
しおりを挟む先生の異様に長かった御解説もようやく一区切りついた。
先生も口を閉じたし、ここからは質問タイムだろう。
さて、なにか訊いておきたいんだが一体なにをどう質問したものか、と迷い始めるよりも前に、恐らく俺よりも先に状況を呑み込んだであろう木梨さんが手を上げる。
「せんせーっ。さっきまでの話、ザックリとしか理解してないんですけれど、つまり“NTR”に興奮するのは男としての本能だ、仕方のない事なんだ。ってことですかーっ?」
先生はより一層目を細めて木梨さんを見る。
一見すると、温和で柔らかな表情だ。
「いやいやー。それじゃあただの言い訳だよ。今のは、現在“NTR”として確立されている、多様な性癖の一ジャンルについての、その成り立ちを語ったまでだよ。自己解釈でねー。男としてそういった行為に欲情するのは仕方ない、なんて言うつもりはないさー。……それでも、君たち!」
下田先生が機敏な動きで、人差し指で嵐山を、中指で俺を、それぞれ指してくる。
人を指ささないでください。
「“NTR”に性的興奮を覚えるのは男の本能だ、というのは実際問題事実だとも僕は思っている。にもかかわらず、君たちは一切の興奮を覚えないと言った。だとするとそれに対しては三つの原因が考えられる。」
「………。」
先生の急な叫弾に、俺と嵐山はほぼ同時に無言で顔を見合わせる。
(……あれ? 俺たち、今なんか悪者扱いされてる?)
(俺が知るか。)
無言のアイコンタクト。
その試みは初にして成功に及んだ。
奇跡だ。
俺たちに構わず、一同が見守る中、先生は続ける。
「まず一つ目。”NTR”に興奮しない君たちは、精神的に未熟か、或いは性的に未熟かのどちらか、または両方に属しているというケースだ。しかし、そこは仕方がない。君たちはまだまだ青春真っ盛りで思春期真っただ中の少年だからね。ゆっくりと、大人の階段を上っていく他ないだろう。」
……なんだろう、すげぇ悔しい。
馬鹿にされてる気がするのは気のせいか?
若干の怒りを腹に覚えてる間に、先生は次なる原因(やっぱ悪者じゃね?)を指摘してくる。
「二つ目。もしかしたら君たちは“NTR”に不快感、不愉快感を覚えているのかもしれない。それすらも通り越して怒りさえも覚えているのかも……。なぜそうなるのか……それは恐らく寝取られる側に感情移入してしまっているからだろうね。いや、作品形式上、NTRモノは寝取られる側視点の作品が多い……とりわけ最近は尚更なんだけれど、そういった場合は、感情移入、もとい自己投影対象を変更してみるのはどうかな? 例えば寝取る側に、とかね。」
確かに、スマホの広告なんかでNTR漫画が出てくるたびに気分を害しているのは事実だ。
女の子も男の子も可哀相だなー、と流れてくるあらすじが視界を過る度に考えてしまう。
視点を変えれば、考えも変わる、か?
「最後に三つ目。“NTR”に興奮するのは、異性に対して精神的な繋がりよりも、むしろ肉体的な繋がりをより強く求めている男性が多い傾向にある。…というか、大抵の男性はそういう傾向が強いと認識しているよ、僕は。ヤれればいいとさえ言う男性も多い…というより過半数がそうだろうと考えている。恋愛に愛を求める女性と、恋愛に肉欲を求める男性。”夜這い“や”処女権”誕生の要因ともなった性思考、および性志向なわけなんだけれど……、もしかしたら君たちは男性寄りではなく、女性寄りの性思考なのかもしれないね。もしそうだとしたら、多分”NTR”で興奮するのは難しいだろう。」
……それは、どうだろうか?
はっきり言って同級生の放尿音を聴きながらしこしこオナニーしている俺がそんなわけないと思うんだが……。
……ん? なんだろう?
なにか、忘れてるような……。
俺、本当に今まで“NTR”に興奮したことないんだったっけか?
「とにもかくにも、”NTR”も含めた全ての性癖には、興奮できるかできないかは各個人を構成するその者の人格、意思によっても変わってくる。“NTR”で興奮しろだなんて無理強いはやっぱりできないよ。……とは言え、」
先生は一つ咳払い。
「嵐山君はともかく、神室君。君は万能型の性質を持つエーラを宿しているんだ。新たな性癖の拡張は、新たな“性癖”を発現させるに等しい。だからもしも、食わず嫌いをしているのであれば、無理にとは言わないけれど、少しこの性癖にも向き合ってみてくれないかな? 今後行うであろう戦闘を考慮して、ね。」
む……。
それは確かに、その通りなのかもしれない。
「でも、向き合うって一体どうしたら……?」
先生はにこやかに片手を広げた。
「それはさっき言ったみたいに、訓練してみるとか、理解を深めるよう努めてみることだねー。まずは、やっぱりさっき言ったみたいに、感情移入の視点、自己投影の対象、立場を変えてみるところから始めてみるのはどうかな? 寝取られる側から寝取る側へ……対象の女性に自己投影してみるのもいいかもねー。」
そんな訓練したくないっ!
「まぁ、色々言ったけれど、“NTR”。これは男性の一方的な欲望によって生み出されている側面が強い性癖だ。中には、寝取られる対象になることによって、自己顕示欲を満たす女性もいるにはいるけれど、それはレアケース。浮気はするなとは言わない。あまりお勧めもしないけれど、たまには違った相手を求めることは男女関わらずあるだろうし、それによって経験した過ちがより本命との繋がりを熱くする場合があるのも事実だ。だからこそ、そういったプレイを行う場合は秘密の保持よりもまず相手の了承を得なければやってはいけない。相手を無理矢理犯して、それをネタに脅し、秘密を守る。そんな行為は下衆の極みだ・変態以前の問題、人格が終わっていると言っていい。ただの強姦、犯罪行為だよ。」
先生はゆっくりと人差し指を立て、生徒全員に視線を送る。
「君たちも男女の行き掛かり、成り行きによる情事を経験する際は、絶対にこれだけは守ってね。」
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