130 / 186
第130話「エーラの局所集中を体得する修行①」
しおりを挟む六月五日(日)二十時二十分 真希老獪人間心理専門学校・体育館
「今から貴様に教えるのは、エーラの維持だ!」
腕を組んで吠えるように話し出す梶先生。
そういやこんなテンションの人だったなぁ……。
「エーラの維持って…先生。それはもう俺、できてますよ。」
「貴様ができているのはエーラを全身に纏う方の維持だろう。今回俺が教えるのはそれとは別のものだ。」
言って、梶先生は腕組みを解いた。
「今、俺はエーラを纏っている。全身に、万遍に。貴様と同じ状態だ。」
「はい。」
それは視えている。
梶先生の、力強くも落ち着いた流れのエーラ。
「言うなればこれは初級。エーラを身に着けたばかりの者でも、無意識にやれてしまう程度の技術だ。」
「俺は全くできてませんでしたけどね。」
「黙れ。」
「すいません。」
そんな威圧的に怒んなくたっていいじゃんかよ。
「しかし、ここから先は意識的に鍛錬を積んだ者でしか辿り着けぬ領域、技術だ。」
梶先生が徐に右手を掲げると、驚くことに先生の全身を流れていたエーラが徐々にその形を歪めていき、掲げられた右手に集まっていった。
先生の全身を包んでいた鎧は、いまや目を凝らさねば視認できないほどに薄く儚くなっており、対照的に先生の右手には濃いエーラの球体が出来上がっていた。
「これは……」
「これがエーラの更なる維持。エーラを全身ではなく局所的に纏うことにより、その纏った部位の身体能力を向上させる技術だ。」
説明しながら、先生のエーラ球体は右手のみならず左手や両足など、実に様々な個所を巡っていた。
「エーラの局所維持による身体能力の向上率は全身に纏った時に比べ著しい。全身に広げているものを一部に集中してるんだ、当然だな。」
エーラの局所集中を解くと、先生は舞台の上に置いてあった二つの空き缶を持ってきた。
「今から貴様に、纏いと集中の違いを見せてやる。」
そして、先生は紫陽花色の鉄製の棚(こんな物まで置いてあんのか)を持っちより、その上に空き缶の一つを置き、右手を大きく振り上げ、
「まずはエーラを纏っている状態だ。」
握った拳を一直線に振り下ろした。
館内に轟音が響き渡り、棚からは軋む音が聞こえた。
ゆっくりと持ち上がった拳、その下敷きとなっていた空き缶はものの見事にぺちゃんこになっていた。
「これがエーラを纏っている状態で空き缶を叩いた結果だ。全身に広げているとはいえエーラによる身体能力向上の恩恵は享受できている。が、エーラを局所集中している時に比べれば、まだ弱い。」
潰れた空き缶を棚の端に寄せると、もう一つの空き缶を真ん中に置いた。
「次はエーラを拳に集中させた状態だ。」
静かに言うと、全身を流れていたエーラが再び先生の右拳に集中していく。
そして、小さな球体を纏い、握りしめられた拳を振り上げ、空き缶目掛けて一気に振り下ろす。
館内に響く轟音、鉄製の棚が軋む音、そのどちらも、先ほどよりも大きく聞こえた。
思わず耳を塞いでいると、先生はまたゆっくりと拳を持ち上げた。
「………。」
下敷きとなった空き缶は、やはりぺしゃんこに潰れていたが、しかしどうだろう……さっき潰された物とそう変わらないように見える。
「これが拳にエーラを集中させている状態での結果だ。」
「さっきとあんま変わらないように見えるんですが……」
「何を言う。」
先生は二つの潰れた空き缶をそれぞれ掴み上げる。
「エーラを拳に集中させたときの方が三ミリも潰れているだろう。」
「わかるかっ!」
なんだその微妙な差は!
「微妙な差だろうが、戦場ではその僅かな差が生死を分かつこともある。それに、」
スクラップとなった缶を再び棚に置く。
「俺程度のエーラ量の持ち主ならば確かにこのくらいの違いしか出んが…秀青、貴様のように常軌を逸したエーラ量の持ち主が局所集中を体得すればどうなる?」
「っ!」
それは……。
例えば俺がエーラを拳に一点集中できたなら、自分で言うのもなんだが、かなりの攻撃力を発揮できる気がする。
「わかったようだな。」
にやりと、本当ににやりという擬音が相応しい程ににやりと、梶先生は髭を歪めて笑みをこぼした。
「ならば早速、エーラを局所集中させる修行に入るぞ! 貴様らのその軟弱な根性を徹底的に叩き直してやる! 覚悟しろ!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる