アブノーマル・ラプソディー

星ノ宮幻龍

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第131話「エーラの局所集中を体得する修行②」

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  六月五日(日)二十時二十三分 真希老獪人間心理専門学校・体育館

「よし、頑張ろうぜ嵐山!」
「やるのはお前だけだ。」
「えっ」
 差し出した握り拳を拒否するように、嵐山は両手をポケットに突っ込む。
「エーラの局所集中なら俺はもうできる。つーか、多分この学校でできないのはお前だけだ。」
「マジか……。じゃあ、お前はなんでここにいるんだ?」
「楓には別の課題を出してある。」
 梶先生が俺たちの会話に割って入る。
「それ兼、貴様の修行相手だ。とは言え、まずは貴様がエーラの局所集中を体得せねば話にならん。早速、訓練に入るぞ。」
 そう言って、先生は両手を大きく広げた。
「まず。秀青、貴様はもう無意識下で行ってると思うが、エーラを全身に流し、巡らせているこの状態。頭のてっぺんから爪先の先へと時計回りに、鳩尾へエーラを流し込むように留めておくこの状態に、もう一つ意識を付け加える。そこからだ。」
「意識…ですか?」
「そう、意識だ。」
 先生の全身を走っていたエーラが、徐々に右拳へと集まっていく。
「エーラを集中させたい箇所へ、エーラを纏わせる流れに逆らわないよう、エーラを徐々に溜めていくイメージ。最初は焦らず、ゆっくりとで良い。何度も行っていけば、瞬間的に集中させられるようになる。まずは、エーラを集中させる時の流れを体に叩き込むところから始めろ。集中させる箇所は、最初のうちは頭頂部がやりやすい。」
 説明が終わる頃には、先生の右手には今日何度も見たエーラの球体が出来上がっていた。
 多分、俺にわかりやすいようにゆっくりと集中させていったんだろう。
 それも説明しながら。
 すげぇ。
「どうだ、わかったか?」
 理解度を確かめてくるあたり、なんだか前よりも優しくなってるような気がする。
 そんな梶先生に返す言葉は、決まっていた。
「まったく意味がわかりませんけど、わかりました!」
「貴様はキュアビ●ーティか!」
 意外過ぎるツッコミ。
「……先生、今のボケ通じるんスね。」
「ええい! いいからさっさと始めろ!」
「はっ、はいっ!」
 怒られてしまった。
 顔が赤くなってたが、怒ってるからなのか恥ずかしいところを指摘されたからなのかは知る由もない。
 ただ、今は集中。
 エーラの局所集中をさっさと体得せねば。
「いざ!」
 先生同様大きく両手を広げ、エーラの流れを意識する。
 頭頂部。
 まずは頭頂部にエーラを集めていく。
 焦らず、ゆっくり、確実に。
「ふぐぅ…ぬぅううううおおおおおおおおお‼」
 そのまま三十秒。
 一分。
 十分経った。
 俺のエーラに変化はない。
「……こいつ、声だけだな。」
「いつも通りです。」
 遠くにいる二人の声が聞こえた。


  六月八日(水)二十三時九分 埼玉県上尾市・綾瀬川


 深夜の河原で、うなじの下からナイフを生やした女性が一人、倒れていた。
 女性は僅かに体を震わし、何かを訴えかけようと口をパクパク動かしているが、声は出せない。
 恐怖のあまり声が出ないのではなく、出せないのだ。
 その女性を見下ろすように、別の人物がすぐ横に立っていた。
 薄汚れた水色のレインコートを着て、二連吸収缶のガスマスクを被った人物。
「結構早く回るでしょ、その毒。」
 深夜の穏やかな川のせせらぎに、ガスマスク越しのくぐもった声が混じる。
「………っ! ………っ‼」
 地を這って、女性はこの人物からの逃走を試みる。
 しかし。
「逃げちゃ駄目だよ。」
 レインコートの人物は、女性の体に追加のナイフを落とした。
 背中の中央と左太ももの裏。
 瞬間的に、女性は身動きを封じられる。
「………っ⁉」
「声を封じ、身動きも封じた。もう君に出来るのは、瞬きと呼吸くらいだね。」
 ゆっくりと、女性の前でレインコートの人物は腰を下ろす。
「でも、安心して。なるべく血が出ない箇所を刺したんだ。これでじっくり楽しめる。そうだろ?」
「……………っ!」
 次第に、女性の息の荒さは加速していき、それと同調するようにレインコートの人物の息遣いも色を帯びてきた。
「さぁ、もっとその怯える顔を見せておくれ。夜はまだまだこれからだよ。」
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