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超魔の目覚め
ぶつかる黒鉄の魔人と白銀の超獣
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誘導弾の爆発によって発生した煙に紛れながら、黒鉄の装甲に覆われた機体が白銀の巨体に突っ込もうとしていた。
「ン゙マッ!」
そして両者が激突する寸前にクサマは右の鉄拳を繰り出した。
ヴァナルガンはその一撃を白銀の左手で受け止める。
金属同士の大激突、夜の上空に凄まじい音が響き渡った。
千トンを越える魔人からの強烈な一撃を受け止めて、滞空中のヴァナルガンは少しばかり後退する。
しかし、それだけであった。
「ジュオッ!」
白銀の超獣は左手で受け止めた鉄拳をそのまま掴みとり、凄まじいパワーでクサマを引き寄せた。
まだ修復中で完璧ではないとは言えクサマの膂力を上回るパワーである。
そして力任せに引き寄せられたクサマの顔面に、白銀の右拳が叩き込まれた。
引っ張られたいきおいも加わり、その一撃はより強力なものになる。
またも夜の上空に大音量が轟く。
「……ン゙マッ」
魔人の左頬の装甲にビキビキと亀裂が入り、左目のカバーが砕け散り眼球のような部品が露になった。
そしてあまりの衝撃だったためか一瞬だけクサマの動きが停止する。
「ジュオォッ!」
その隙を見逃すほど、ヴァナルガンは間抜けではなかった。
ヴァナルガンは掴んでいたクサマの手をまた力強く、降り下ろすように引っ張る。
それによりクサマは体勢を崩し、前のめりになり、無防備な背面があらわになった。
そして超獣はクサマの手を解放し、素早く魔人の真上まで上昇し、自重を乗せて無防備な背を踏み抜くように蹴り飛ばした。
六万トンを越える質量を加えた凄まじい蹴りを真上から食らったクサマは高速で落下し大地に激突、大量の土煙を舞い上がらせた。
機動の魔人と金属の悪魔が激突した位置から北方に約五百メートル。
「クサマぁ!」
そこから墜落するクサマを見ていた忍服の少女が悲鳴のような声を響かせる。
上空一千メートルから高速で叩き落とされたのだ、クサマがいかに頑丈とは言えかなりのダメージを受けただろう。
そう思ってナルミは手にした声紋式の懐中時計に語りかける。
「クサマ! 大丈夫?」
するとズンッと大地が揺れ、落下した位置から砂煙を振り払うように黒鉄の巨体が姿を現した。
ヴァナルガンの拳で顔にこそ破損が見受けられるが、落下によるダメージはあまり無さそうであった。
(さすが機転が利くな)
と、いきなりにナルミの頭の中に言葉が響き渡った。
「副長の師匠!」
さすがにもう慣れた。
ナルミは多少驚きはしたものの、呆気にとられることなく応じた。
声が聞こえたわけでも、文字が見えたわけでもない。
言葉そのものが意識の中に浮かび上がってくる感覚、脳間での情報通信。
魔術なしでこんなことができる人物は限られる。
(地面に激突する寸前に斥力場を発生させて、強制動をかけ落下の威力を最小限に押さえ込んだんだ。飛び散った土砂のほとんどは斥力場の反作用によって吹き飛ばされたものだろう)
クサマに登載されているブラックボックスたる機体の周囲に反発力を発生させるシステム。
それにより飛行や浮遊が可能だが、とっさにそれを落下のブレーキに用いるとは、さすが優れた判断力と行動力と言えよう。
「……そんな指示なんか出してないのに、すごい」
ナルミは遠く離れた機械仕掛けの魔人を見ながら囁いた。
改めて実感できる。
建造魔人は機動兵器ではあるが、けして指示を受けて命令通り行動する機械ではない。
クサマは確実に人格を有していると。
……しかし今は、そんなことに感心している場合ではない。
「ジュオッ!」
ヴァナルガンの無機質な鳴き声が響き、その両肩に備わる計六門の砲口から青白い閃光が漏れだしていた。
(いかん、奴の攻撃が来るぞ!)
「えっ!」
ハクラの声が頭の中に響いて、思わずナルミが声をあげた瞬間、爆音とともにヴァナルガンから強力なエネルギーを秘めた光弾が発射された。
超獣の砲口部に閃光が確認できた時点で、ある程度予測していた。
「ン゙マッ!」
クサマは素早く後方へと跳躍し、熱プラズマの破壊光弾を避けた。
先程まで立っていた位置に無数のエネルギー弾が着弾し爆炎が上がり、融解した土砂が飛び散る。
「ジュオッ!」
そしてまたヴァナルガンはクサマに照準をつけてくると、上空から電離体破壊光弾を発射してくる、しかも今度は連射であった。
「ン゙マッシ!」
クサマはすぐさまに足底部に斥力場を形成し、その巨体を地面からわずかに浮遊させ滑るよう左に移動してエネルギー弾を回避した。
そして、そのまま大地を素早く滑走する。
足底に斥力場を発生させ機体を浮遊させることでホバー走行のような移動を可能にしている。
地面との摩擦がないため移動速度が速く、次々と発射される光弾をクサマは避けきる。
ヴァナルガンの破壊光弾は高速ではあるものの、軌道が直進のみなので、しっかり見極めれば回避はそう難しくはないのだ。
無論、それはクサマのように優れた人工頭脳があってこそできることではあるが。
(クサマ!)
と、その人工頭脳にハクラの言葉が伝わる。
(オボロか兄弟機がそちらに到着するまで、どうにか粘れ。超獣は魔獣とは比較にならないのは分かっているだろう? 無理に戦う必要はない)
その指示を承諾したのか。
「ン゙マッシ!」
クサマは了解と言いたげに声をあげる。
その間にもヴァナルガンから破壊光弾の砲撃は次々に降り注ぐ。
しかしクサマは冷静に見極め、大地を滑走し巧みに避け続ける。
それに合わせ外れた光弾により、黒鉄の巨体を追い回すかのように爆炎も上がり続けた。
「ジュオッ!」
だがやはり超獣は通用しない攻撃を継続するほどバカではない。
クサマを狙い撃ちつつ、彼が移動する先にも光弾を発射するのであった。
「ン゙マッ!」
クサマは直撃こそまぬがれたものの、爆風で大きく姿勢を崩し転倒しそうになった。
ヴァナルガンの砲撃は着弾までのタイムラグを考慮したもの、つまり偏差射撃である。
量子デバイス中枢器官による火器統制能力によって、これほどの器用かつ精密な砲撃を可能としているのだろう。
クサマはどうにか見極め直撃こそまぬがれ続けるが、いつ光弾が着弾してもおかしくな際どい状況である。
あんな高エネルギー弾を受ければ致命傷は確実、それに今のクサマは修復の途中で万全ではないのだ。
いつもよりやはり動きは遅く、グランドドス戦の時に両腕を破損しているため機関砲は使えない。
使用できる火器は両肩部に備わる誘導弾のみである。
(クサマ! 火力は超獣の方が遥かに上だよ、遠距離じゃ不利すぎるよ。危険ではあるけど、格闘戦に持ち込んで)
魔人は両肩部の誘導弾のみ、しかし超獣は今のところ分かっているものだけで六門の電離体破壊光弾砲、四門の電磁加速機関砲、胸部に隠された大口径中性子ビーム砲、目には赤外線レーザー照射器。
ナルミの言うとおり、このまま距離をとったままでいるのは間違いなく自殺行為。
無論、格闘戦も危険だがこのまま遠距離にいるよりかはマシである。
「ン゙マッシ!」
クサマは破壊光弾を掻い潜りながら、両肩部の装甲を展開し複数の誘導弾を発射した。
すると光弾の砲撃が止んだ。
「ジュオッ!」
ヴァナルガンが誘導弾の迎撃行動に移ったのだ。
目からのレーザーと頭部の電磁加速機関砲で誘導弾を精密に迎撃され爆炎となりはてる。
そしてクサマとヴァナルガンのあいだの空間が濃い黒煙に覆い尽くされた。
これが狙いである、クサマは飛翔し再び黒煙に紛れてヴァナルガンに接近する。
格闘戦に持ち込むために。
……しかし黒煙の中を通過中に、ブォーンと言う何とも形容しがたい音を察知する。
そして黒煙を抜けてみると、待ち構えていたのは両手首の穴から鋭い光を形成したヴァナルガンであった。
そしてクサマの頭脳にハクラの声が響き渡る。
(電離体刀! ……プラズマを剣状に固定した生体ビームサーベルだと)
「ン゙マッ!」
そして両者が激突する寸前にクサマは右の鉄拳を繰り出した。
ヴァナルガンはその一撃を白銀の左手で受け止める。
金属同士の大激突、夜の上空に凄まじい音が響き渡った。
千トンを越える魔人からの強烈な一撃を受け止めて、滞空中のヴァナルガンは少しばかり後退する。
しかし、それだけであった。
「ジュオッ!」
白銀の超獣は左手で受け止めた鉄拳をそのまま掴みとり、凄まじいパワーでクサマを引き寄せた。
まだ修復中で完璧ではないとは言えクサマの膂力を上回るパワーである。
そして力任せに引き寄せられたクサマの顔面に、白銀の右拳が叩き込まれた。
引っ張られたいきおいも加わり、その一撃はより強力なものになる。
またも夜の上空に大音量が轟く。
「……ン゙マッ」
魔人の左頬の装甲にビキビキと亀裂が入り、左目のカバーが砕け散り眼球のような部品が露になった。
そしてあまりの衝撃だったためか一瞬だけクサマの動きが停止する。
「ジュオォッ!」
その隙を見逃すほど、ヴァナルガンは間抜けではなかった。
ヴァナルガンは掴んでいたクサマの手をまた力強く、降り下ろすように引っ張る。
それによりクサマは体勢を崩し、前のめりになり、無防備な背面があらわになった。
そして超獣はクサマの手を解放し、素早く魔人の真上まで上昇し、自重を乗せて無防備な背を踏み抜くように蹴り飛ばした。
六万トンを越える質量を加えた凄まじい蹴りを真上から食らったクサマは高速で落下し大地に激突、大量の土煙を舞い上がらせた。
機動の魔人と金属の悪魔が激突した位置から北方に約五百メートル。
「クサマぁ!」
そこから墜落するクサマを見ていた忍服の少女が悲鳴のような声を響かせる。
上空一千メートルから高速で叩き落とされたのだ、クサマがいかに頑丈とは言えかなりのダメージを受けただろう。
そう思ってナルミは手にした声紋式の懐中時計に語りかける。
「クサマ! 大丈夫?」
するとズンッと大地が揺れ、落下した位置から砂煙を振り払うように黒鉄の巨体が姿を現した。
ヴァナルガンの拳で顔にこそ破損が見受けられるが、落下によるダメージはあまり無さそうであった。
(さすが機転が利くな)
と、いきなりにナルミの頭の中に言葉が響き渡った。
「副長の師匠!」
さすがにもう慣れた。
ナルミは多少驚きはしたものの、呆気にとられることなく応じた。
声が聞こえたわけでも、文字が見えたわけでもない。
言葉そのものが意識の中に浮かび上がってくる感覚、脳間での情報通信。
魔術なしでこんなことができる人物は限られる。
(地面に激突する寸前に斥力場を発生させて、強制動をかけ落下の威力を最小限に押さえ込んだんだ。飛び散った土砂のほとんどは斥力場の反作用によって吹き飛ばされたものだろう)
クサマに登載されているブラックボックスたる機体の周囲に反発力を発生させるシステム。
それにより飛行や浮遊が可能だが、とっさにそれを落下のブレーキに用いるとは、さすが優れた判断力と行動力と言えよう。
「……そんな指示なんか出してないのに、すごい」
ナルミは遠く離れた機械仕掛けの魔人を見ながら囁いた。
改めて実感できる。
建造魔人は機動兵器ではあるが、けして指示を受けて命令通り行動する機械ではない。
クサマは確実に人格を有していると。
……しかし今は、そんなことに感心している場合ではない。
「ジュオッ!」
ヴァナルガンの無機質な鳴き声が響き、その両肩に備わる計六門の砲口から青白い閃光が漏れだしていた。
(いかん、奴の攻撃が来るぞ!)
「えっ!」
ハクラの声が頭の中に響いて、思わずナルミが声をあげた瞬間、爆音とともにヴァナルガンから強力なエネルギーを秘めた光弾が発射された。
超獣の砲口部に閃光が確認できた時点で、ある程度予測していた。
「ン゙マッ!」
クサマは素早く後方へと跳躍し、熱プラズマの破壊光弾を避けた。
先程まで立っていた位置に無数のエネルギー弾が着弾し爆炎が上がり、融解した土砂が飛び散る。
「ジュオッ!」
そしてまたヴァナルガンはクサマに照準をつけてくると、上空から電離体破壊光弾を発射してくる、しかも今度は連射であった。
「ン゙マッシ!」
クサマはすぐさまに足底部に斥力場を形成し、その巨体を地面からわずかに浮遊させ滑るよう左に移動してエネルギー弾を回避した。
そして、そのまま大地を素早く滑走する。
足底に斥力場を発生させ機体を浮遊させることでホバー走行のような移動を可能にしている。
地面との摩擦がないため移動速度が速く、次々と発射される光弾をクサマは避けきる。
ヴァナルガンの破壊光弾は高速ではあるものの、軌道が直進のみなので、しっかり見極めれば回避はそう難しくはないのだ。
無論、それはクサマのように優れた人工頭脳があってこそできることではあるが。
(クサマ!)
と、その人工頭脳にハクラの言葉が伝わる。
(オボロか兄弟機がそちらに到着するまで、どうにか粘れ。超獣は魔獣とは比較にならないのは分かっているだろう? 無理に戦う必要はない)
その指示を承諾したのか。
「ン゙マッシ!」
クサマは了解と言いたげに声をあげる。
その間にもヴァナルガンから破壊光弾の砲撃は次々に降り注ぐ。
しかしクサマは冷静に見極め、大地を滑走し巧みに避け続ける。
それに合わせ外れた光弾により、黒鉄の巨体を追い回すかのように爆炎も上がり続けた。
「ジュオッ!」
だがやはり超獣は通用しない攻撃を継続するほどバカではない。
クサマを狙い撃ちつつ、彼が移動する先にも光弾を発射するのであった。
「ン゙マッ!」
クサマは直撃こそまぬがれたものの、爆風で大きく姿勢を崩し転倒しそうになった。
ヴァナルガンの砲撃は着弾までのタイムラグを考慮したもの、つまり偏差射撃である。
量子デバイス中枢器官による火器統制能力によって、これほどの器用かつ精密な砲撃を可能としているのだろう。
クサマはどうにか見極め直撃こそまぬがれ続けるが、いつ光弾が着弾してもおかしくな際どい状況である。
あんな高エネルギー弾を受ければ致命傷は確実、それに今のクサマは修復の途中で万全ではないのだ。
いつもよりやはり動きは遅く、グランドドス戦の時に両腕を破損しているため機関砲は使えない。
使用できる火器は両肩部に備わる誘導弾のみである。
(クサマ! 火力は超獣の方が遥かに上だよ、遠距離じゃ不利すぎるよ。危険ではあるけど、格闘戦に持ち込んで)
魔人は両肩部の誘導弾のみ、しかし超獣は今のところ分かっているものだけで六門の電離体破壊光弾砲、四門の電磁加速機関砲、胸部に隠された大口径中性子ビーム砲、目には赤外線レーザー照射器。
ナルミの言うとおり、このまま距離をとったままでいるのは間違いなく自殺行為。
無論、格闘戦も危険だがこのまま遠距離にいるよりかはマシである。
「ン゙マッシ!」
クサマは破壊光弾を掻い潜りながら、両肩部の装甲を展開し複数の誘導弾を発射した。
すると光弾の砲撃が止んだ。
「ジュオッ!」
ヴァナルガンが誘導弾の迎撃行動に移ったのだ。
目からのレーザーと頭部の電磁加速機関砲で誘導弾を精密に迎撃され爆炎となりはてる。
そしてクサマとヴァナルガンのあいだの空間が濃い黒煙に覆い尽くされた。
これが狙いである、クサマは飛翔し再び黒煙に紛れてヴァナルガンに接近する。
格闘戦に持ち込むために。
……しかし黒煙の中を通過中に、ブォーンと言う何とも形容しがたい音を察知する。
そして黒煙を抜けてみると、待ち構えていたのは両手首の穴から鋭い光を形成したヴァナルガンであった。
そしてクサマの頭脳にハクラの声が響き渡る。
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