オメガの僕が、最後に恋をした騎士は冷酷すぎる

虹湖🌈

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第三章 命は巡り、愛は受け継がれることで永遠となる

第28話 炎の祭典

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「フロンティア」の建国記念祭の朝、共同体は祝福の光に満ちていた。
 広場には色とりどりの手作りの旗がはためき、子供たちの歓声と、市場の賑わいが混じり合っている。この日のために、ジンが発明した新しい照明装置が街路を飾り、それは「夜明けの子供たち」が近くを通ると、彼らの生体エネルギーに反応して虹色に輝くという、夢のような仕掛けだった。

「見てくれよ、アキさん! まるで街全体が、あの子たちを祝福してるみたいだろ!」
 ジンが、興奮した少年のような顔で笑う。
「馬鹿」と、警備の指揮を執っていたサラが、その頭を軽く叩いた。「そんな不安定なもんで遊ぶんじゃないよ。何が起こるか分かったもんじゃない」
「大丈夫だって! これは平和の象徴なんだからさ!」

 そんな仲間たちのやり取りを、俺は少し離れた場所から、笑顔で見ていた。
 だが、その笑顔は、薄いガラスのように脆いものだった。隣に立つレオンとの間に流れる、冷たい緊張のせいで。

「たくさんの人が、祝ってくれていますね」
 俺がそう言うと、レオンは広場に視線を向けたまま、短く応えた。
「ああ。だからこそ、お前は無理をするな。今日のスピーチが終わったら、すぐに書斎へ戻れ」
 その言葉は、俺を気遣う優しさの皮を被った、紛れもない命令だった。彼の愛は、今や俺を見張るための、美しい檻となっていた。

 平穏の仮面が剥がれ落ちたのは、祭りが最高潮に達した、昼過ぎのことだった。
 広場の隅で、一人の少年が、年上の子供たち数人に囲まれているのが見えた。
「夜明けの子供たち」の一人、カイトだ。

「おい、怪物! お前のせいで、アキ代表の顔色が悪いんだぞ!」
「そうよ! 代表に近づかないで!」
「お前みたいなのがいるから、街が危なくなるんだ!」

 心ない言葉の石礫が、カイトの小さな心を抉っていく。
 やめて、と叫びたかった。だが、俺が駆け寄るよりも早く、カイトの堪えていた感情が、爆発した。

「――うるさいッ!」

 少年の悲痛な叫びと同時に、凄まじいエネルギーの波が彼から放たれた。それは、悪意のない、ただ「やめてほしい」という純粋な拒絶の力。だが、その力はあまりにも強大すぎた。エネルギーの奔流は、広場の中心にそびえ立つ、共同体の生命線であるエネルギータービンへと直撃した。

 キィン、と金属の断末魔のような音が響き渡り、次の瞬間、タービンは轟音と共に爆発した。
 街を彩っていたジンの照明が火花を散らして消え、祝福の歓声は、恐怖の悲鳴へと変わる。

「皆さん、落ち着いてください!」

 俺は、混乱の極みにある大衆を前に、演説台の上から必死に叫んだ。リーダーとして、俺が、みんなを導かなければ。
「大丈夫です! まずは落ち着いて、怪我人がいないか――」
 だが、その時だった。
 カイトが放ったエネルギーと共鳴するように、俺の身体の内側から、生命力がごっそりと奪い去られていく感覚に襲われた。

「が……ッ……!」

 立っていられないほどの激しい目眩。胸が焼けつくように熱い。
 群衆の中から、恐怖に歪んだ声が上がる。
「今のも、あの子の仕業だ!」
「怪物め!」
「子供たちは呪いだ! アキ代表を殺す気だ!」

 違う、と叫びたかった。
 違うんだ、あの子たちは、呪いなんかじゃない。
 だが、俺の喉から漏れたのは、言葉にならない喘ぎと、そして、鮮やかな赤色の血だった。

「――かはっ……!」

 俺は、自らの口から溢れた熱い液体に、一瞬だけ驚いた。
 そして、血に染まった純白の式典服のまま、糸が切れた人形のように、ステージの上へと崩れ落ちた。
 遠のいていく意識の中、俺が見た最後の光景。
 それは、血に染まる舞台の上で絶望に目を見開き、獣のような咆哮を上げながら、こちらへ向かってくるレオンの姿だった。

 彼の瞳の中で、長きにわたって彼の心を縛り付けてきた、最後の理性の鎖が、大きな音を立てて、砕け散るのが見えた。
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