公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に

ゆっこ

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 神殿での騒乱から三日後——。

 王国上層部は、封印の間に関する情報をすべて封鎖し、神官長を中心に再調整を進めていた。
 セシリアの姿は消えたままだが、彼女が“堕ちた神”の封印を狙っていたという事実だけは、重く受け止められていた。

「リシェル様、例の“反応”が強くなっています」

 神官補キールが焦った表情で報告してきたのは、神殿の地下封印が再び脈動し始めたということだった。
 私は既に、覚悟を決めていた。

「行くわ、封印の間へ。……もう終わらせる時よ」

 神殿の地下深く。
 かつて訪れた禁忌の間は、今や結界によって封じられていた。だが、その結界は脆く、すでにひびが入っている。

(封印の破壊が進んでる……間に合うかしら)

 私が結界を解除し、再び中に踏み入った瞬間——。

「待っていましたわ、リシェル様」

 セシリアがそこにいた。

 以前とは違う。
 その身体からは明確に“人外”の気配があふれ出していた。
 まるで、人としての枷を脱ぎ捨てた存在。

「あなたが最後の“鍵”。来てくださらなければ、封印は開けられませんでした」

「そう……。なら、ここで終わらせてあげる」

 私は光神と闇神、火神と理神の力を同時展開した。
 七柱の神々の加護が、それぞれの魔法陣となって私の周囲に広がる。

 一方、セシリアの背後には黒き翼のような魔力の波。
 それはもはや“祝福”ではない。“堕神の意志”そのもの。

「来なさい、リシェル=フォン=アルトレーネ。今こそ、すべてを終わらせる時です!」

 魔力の奔流がぶつかり合い、空間が歪む。
 私とセシリアの一撃が交差するたび、神殿の石床が砕けていく。

(彼女は、もう人ではない。けれど……)

 私は七神の加護をすべて重ね、一つの“核”を作り出した。
 それは——“調律”。神々の力を統一し、均衡を取る究極の魔法。

「——聖なる調和よ、七柱の名のもとに、理を貫け!」

 放たれた光は、セシリアの魔力を切り裂き、封印へと届く。
 その瞬間、異空間が開かれた。

「このまま……ノクト様は……!」

「止まりなさい、セシリア! あなたはもう——」

「うるさいッ!」

 彼女の魔力が暴走し、封印が完全に割れる寸前——。

「我は見ていた。汝らの争い、誠に愚かしい」

 低く、冷たい声が封印の奥から響いた。

 そして、そこに現れたのは——黒衣を纏った“男”の姿。

「……あなたが、堕神ノクト=エリミア?」

「否。我は、神々の“裏面”にして、均衡の外に在る者。混沌を司るもの、ただそれだけ」

 彼は穏やかに手を伸ばし、セシリアの額に触れた。

「お前の願いは、憎しみではなかった。ただ、愛されたかったのだろう?」

「……っ……そんな……私は……」

 セシリアの目から涙がこぼれた。その瞳には、ほんの僅かに人の光が戻っていた。

 堕神——否、“調停者”としてのノクトは静かに言った。

「この世界は、七柱によって保たれてきたが、それが正義というわけではない。我は、それを見守る者に過ぎぬ」

 彼は私へと顔を向ける。

「リシェル=フォン=アルトレーネよ。汝が、すべての加護を受け継ぐ者として“選ばれた”のは、均衡を保つ器だからだ」

「器……?」

「七柱の加護が同時に宿ることなど、本来あり得ぬ。だが汝の魂は、すべてを調和させる“核”として完成されていた。汝こそが、新たなる“加護の座”である」

 つまり——私はもう、ただの“人間”ではない。

「我は戻ろう。深淵へ。封印は、汝の力によって“再定義”された。必要があれば、再び現れる」

 その言葉と共に、ノクトは光の中に消えていった。

 残されたのは、力を失い、膝をついたセシリア。

「どうして……どうして、あなたは私を殺さなかったの……」

「あなたは、“救い”を求めていた。だから私は、最後まで、諦めなかっただけ」

 私の言葉に、セシリアは静かに涙を流した。

「もう、終わったのね……」

「ええ。これで、全部」



 数日後、王都では“偽聖女事件”と呼ばれる一件が王家によって公表された。

 セシリアは人目から遠ざけられ、静かな修道院で過ごすことになった。
 彼女はもう、二度と力を求めることはなかったという。

 そして私は——。

「リシェル様、そろそろお時間です」

 神官補のキールが、微笑みながら声をかけてくる。

「わかってる。もう、行くわ」

 私は、再建された聖堂の中央へと歩を進めた。
 そこでは、新たに制定された“七神の調律者”としての就任式が行われようとしていた。

 もう、聖女ではない。

 私は“神々の均衡を担う者”として、新たな使命を背負う。

「リシェル=フォン=アルトレーネ。あなたを、七柱の“調律者”として認定します」

 王太子——レオンハルトの宣言の声が響く。

 彼はもはや、私に愛を告げることはない。
 けれど、その瞳には確かな“敬意”と“誓い”が宿っていた。

 それだけで、もう充分だった。

 私は静かに、群衆を見渡し、微笑んだ。

(私の物語は、ここで終わる。だけど——)

 この世界には、まだ多くの“真実”と“運命”が眠っている。

 そして、私はそれを見届ける者として——この地に立つ。

 神の加護を受けし者ではなく、神の加護を“超えた”存在として。
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