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あの夜――。
カインが私の手に触れ、「俺の妻になる」と言った瞬間から、世界が少し違って見えた。
その言葉の余韻は、翌朝になってもまだ胸の奥に残っていた。
宿の厨房でパンを焼きながら、つい上の空になってしまう。
彼がそんな私を見て、くすりと笑った。
「アリア、今日は塩を入れ忘れている」
「えっ……あ、ほんとだ!」
「まぁ、焦るな。そんなお前も可愛い」
「か、かわ……っ、そんなこと言われても嬉しくありません!」
「顔が真っ赤だが?」
「……カインさんのせいです!」
思わず口を尖らせると、彼は穏やかな笑みを浮かべて肩をすくめた。
その仕草が、どうしようもなく優しくて、胸がきゅっと締めつけられる。
――どうして、こんなに優しいんだろう。
彼の過去をほとんど知らないのに、不思議とそばにいると安心する。
まるで、ずっと昔から知っていたような気がする。
それから数日後、カインは王都へ行く用があると言って宿を発った。
彼がいない間、私は宿の仕事をしながら静かに日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
宿の前に一台の豪華な馬車が止まった。
金と赤の紋章――それは間違いなく、グランベルト王国、つまり私の“元の国”の紋章だった。
「まさか……」
胸の鼓動が早まる。
馬車の扉が開くと、そこから降りてきたのは――懐かしくも見たくなかった顔だった。
「……アリア」
エドワード殿下。
私の“元婚約者”だ。
彼は以前より少しやつれたようで、その目にあった自信はもうどこにもなかった。
「どうして、ここに……」
「君を迎えに来た」
「……迎え?」
「君は、私の婚約者だ」
その一言に、私は言葉を失った。
周囲の宿の客たちがざわつく中、私は静かに口を開く。
「いいえ、違います。私はもう、ルグランの民です」
「そんなことは認めない!」
殿下の声が荒くなる。
「私は――君を手放してはいけなかった。あの日の言葉を撤回する!」
撤回? 今さら?
胸の奥に、苦いものが広がった。
あの日、彼の言葉で私はすべてを失った。
誇りも、居場所も、未来も。
なのに今になって、何を――。
「アリア。私と共に帰ってきてくれ。君がいなければ……私は――」
その言葉を遮ったのは、背後から響いた落ち着いた声だった。
「その“君”は、俺の妻だ」
ゆっくりと振り返ると、そこには旅装を脱ぎ、外套を羽織ったカインが立っていた。
青の瞳が、まるで氷の刃のように鋭く光る。
「……英雄カイン・アルベルト。ルグラン王国所属」
「っ、英雄……!?」
エドワードの顔が引きつる。
彼が“隣国の英雄”として知らぬ者などいない。
十年前、ルグランを滅亡寸前から救った伝説の将。だが、その姿を直接見た者はほとんどいない――。
「アリアを侮辱した王国の王太子殿下が、わざわざ彼女を奪い返しに来るとは……滑稽だな」
「な、何を……!」
「貧乏人とでも結婚すれば? そう言ったそうだな。だが――その貧乏人が、今は国を動かす英雄だったとは知らなかったようだ」
エドワードの顔から、血の気が引いていくのが見えた。
その光景を見て、私は初めて心の底から思った。
――あぁ、これが“ざまぁ”というものなのだ、と。
けれど、私は勝ち誇った笑みを浮かべることはできなかった。
それよりも、ただ静かに、目の前の男を見つめていた。
あの日、私を傷つけた人ではなく、今、私を守ってくれている人を。
「カインさん……」
「もう心配はいらない。どんな手を使おうと、お前を奪わせたりしない」
低く落ち着いた声が、耳の奥まで染み込む。
エドワードは唇を噛み、悔しそうに叫んだ。
「だが、そんな男と結婚して幸せになれると思うのか!? 君は王妃になるはずだったんだぞ!」
「……ええ。でも、今の私は“愛される妻”でいられます」
静かに言うと、殿下の目が揺れた。
彼は何かを言いかけたが、言葉を飲み込み、そのまま背を向けて馬車へと戻っていった。
馬車が遠ざかるのを見届けてから、カインは小さく息を吐いた。
「やれやれ……まるで子供だな」
「……本当に来るとは思いませんでした」
「俺もだ。だが、もう心配はいらん。お前のことは、俺が――」
そこで彼は言葉を切り、少しだけ顔を伏せた。
「……いや、まだ言うには早いか」
「え?」
「気にするな」
そう言って、私の頭を軽く撫でると、彼は宿の奥へ歩いて行った。
残された私は、胸の鼓動を押さえながら、月明かりの差す玄関先に立ち尽くした。
――妻。
彼は本気でそう言っていた。
でも、それは“守るための方便”なのか、それとも……。
その夜、宿の裏庭でカインが一人、剣を磨いている姿を見た。
月光が刃に反射し、青白い光を放つ。
普段の穏やかな彼とは違い、そこには“英雄”としての顔があった。
「……やっぱり、何か隠しているんですね」
思わず声をかけると、カインは少し驚いたようにこちらを見た。
「起きていたのか」
「眠れなくて……。さっきのこと、考えていました」
「殿下のことか?」
「いいえ、あなたのことです」
カインは小さく目を細めた。
「俺のことなど、気にするな」
「気になります。どうして、あんなふうに……私を守ってくれるのですか?」
一瞬、沈黙。
夜風が二人の間を通り抜け、木々の葉がかすかに揺れる。
やがて、彼は小さく息をつき、呟いた。
「――俺は、君の父上に恩がある」
「父に……?」
「ああ。昔、俺がまだ一兵士だった頃、命を救われた。あの時、彼がいなければ、今の俺は存在しない」
穏やかな声が、夜空に溶けていく。
「だから、君を見つけた時……放っておけなかった」
「……そうだったんですね」
それだけのはずなのに、胸の奥が少し痛む。
恩返し――。
でも、それだけだろうか?
彼の視線が私に向けられた瞬間、何か言いかけたように口を開きかけて――結局、何も言わずに剣を鞘に納めた。
「今夜は冷える。もう中に入れ」
「……はい」
その背中を見つめながら、私は思った。
彼の心の奥にあるものを、知りたい。
恩義だけではない“何か”が、確かにそこにある気がしてならなかった。
――そして翌朝。
宿の前に届いた封書を見て、私は息を呑むことになる。
そこには王国の紋章とともに、こう書かれていた。
『元王太子殿下が、ルグラン王国に使節として来訪予定』
王太子が、再びこちらへ――。
それが何を意味するのか、まだ私は知らなかった。
カインが私の手に触れ、「俺の妻になる」と言った瞬間から、世界が少し違って見えた。
その言葉の余韻は、翌朝になってもまだ胸の奥に残っていた。
宿の厨房でパンを焼きながら、つい上の空になってしまう。
彼がそんな私を見て、くすりと笑った。
「アリア、今日は塩を入れ忘れている」
「えっ……あ、ほんとだ!」
「まぁ、焦るな。そんなお前も可愛い」
「か、かわ……っ、そんなこと言われても嬉しくありません!」
「顔が真っ赤だが?」
「……カインさんのせいです!」
思わず口を尖らせると、彼は穏やかな笑みを浮かべて肩をすくめた。
その仕草が、どうしようもなく優しくて、胸がきゅっと締めつけられる。
――どうして、こんなに優しいんだろう。
彼の過去をほとんど知らないのに、不思議とそばにいると安心する。
まるで、ずっと昔から知っていたような気がする。
それから数日後、カインは王都へ行く用があると言って宿を発った。
彼がいない間、私は宿の仕事をしながら静かに日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
宿の前に一台の豪華な馬車が止まった。
金と赤の紋章――それは間違いなく、グランベルト王国、つまり私の“元の国”の紋章だった。
「まさか……」
胸の鼓動が早まる。
馬車の扉が開くと、そこから降りてきたのは――懐かしくも見たくなかった顔だった。
「……アリア」
エドワード殿下。
私の“元婚約者”だ。
彼は以前より少しやつれたようで、その目にあった自信はもうどこにもなかった。
「どうして、ここに……」
「君を迎えに来た」
「……迎え?」
「君は、私の婚約者だ」
その一言に、私は言葉を失った。
周囲の宿の客たちがざわつく中、私は静かに口を開く。
「いいえ、違います。私はもう、ルグランの民です」
「そんなことは認めない!」
殿下の声が荒くなる。
「私は――君を手放してはいけなかった。あの日の言葉を撤回する!」
撤回? 今さら?
胸の奥に、苦いものが広がった。
あの日、彼の言葉で私はすべてを失った。
誇りも、居場所も、未来も。
なのに今になって、何を――。
「アリア。私と共に帰ってきてくれ。君がいなければ……私は――」
その言葉を遮ったのは、背後から響いた落ち着いた声だった。
「その“君”は、俺の妻だ」
ゆっくりと振り返ると、そこには旅装を脱ぎ、外套を羽織ったカインが立っていた。
青の瞳が、まるで氷の刃のように鋭く光る。
「……英雄カイン・アルベルト。ルグラン王国所属」
「っ、英雄……!?」
エドワードの顔が引きつる。
彼が“隣国の英雄”として知らぬ者などいない。
十年前、ルグランを滅亡寸前から救った伝説の将。だが、その姿を直接見た者はほとんどいない――。
「アリアを侮辱した王国の王太子殿下が、わざわざ彼女を奪い返しに来るとは……滑稽だな」
「な、何を……!」
「貧乏人とでも結婚すれば? そう言ったそうだな。だが――その貧乏人が、今は国を動かす英雄だったとは知らなかったようだ」
エドワードの顔から、血の気が引いていくのが見えた。
その光景を見て、私は初めて心の底から思った。
――あぁ、これが“ざまぁ”というものなのだ、と。
けれど、私は勝ち誇った笑みを浮かべることはできなかった。
それよりも、ただ静かに、目の前の男を見つめていた。
あの日、私を傷つけた人ではなく、今、私を守ってくれている人を。
「カインさん……」
「もう心配はいらない。どんな手を使おうと、お前を奪わせたりしない」
低く落ち着いた声が、耳の奥まで染み込む。
エドワードは唇を噛み、悔しそうに叫んだ。
「だが、そんな男と結婚して幸せになれると思うのか!? 君は王妃になるはずだったんだぞ!」
「……ええ。でも、今の私は“愛される妻”でいられます」
静かに言うと、殿下の目が揺れた。
彼は何かを言いかけたが、言葉を飲み込み、そのまま背を向けて馬車へと戻っていった。
馬車が遠ざかるのを見届けてから、カインは小さく息を吐いた。
「やれやれ……まるで子供だな」
「……本当に来るとは思いませんでした」
「俺もだ。だが、もう心配はいらん。お前のことは、俺が――」
そこで彼は言葉を切り、少しだけ顔を伏せた。
「……いや、まだ言うには早いか」
「え?」
「気にするな」
そう言って、私の頭を軽く撫でると、彼は宿の奥へ歩いて行った。
残された私は、胸の鼓動を押さえながら、月明かりの差す玄関先に立ち尽くした。
――妻。
彼は本気でそう言っていた。
でも、それは“守るための方便”なのか、それとも……。
その夜、宿の裏庭でカインが一人、剣を磨いている姿を見た。
月光が刃に反射し、青白い光を放つ。
普段の穏やかな彼とは違い、そこには“英雄”としての顔があった。
「……やっぱり、何か隠しているんですね」
思わず声をかけると、カインは少し驚いたようにこちらを見た。
「起きていたのか」
「眠れなくて……。さっきのこと、考えていました」
「殿下のことか?」
「いいえ、あなたのことです」
カインは小さく目を細めた。
「俺のことなど、気にするな」
「気になります。どうして、あんなふうに……私を守ってくれるのですか?」
一瞬、沈黙。
夜風が二人の間を通り抜け、木々の葉がかすかに揺れる。
やがて、彼は小さく息をつき、呟いた。
「――俺は、君の父上に恩がある」
「父に……?」
「ああ。昔、俺がまだ一兵士だった頃、命を救われた。あの時、彼がいなければ、今の俺は存在しない」
穏やかな声が、夜空に溶けていく。
「だから、君を見つけた時……放っておけなかった」
「……そうだったんですね」
それだけのはずなのに、胸の奥が少し痛む。
恩返し――。
でも、それだけだろうか?
彼の視線が私に向けられた瞬間、何か言いかけたように口を開きかけて――結局、何も言わずに剣を鞘に納めた。
「今夜は冷える。もう中に入れ」
「……はい」
その背中を見つめながら、私は思った。
彼の心の奥にあるものを、知りたい。
恩義だけではない“何か”が、確かにそこにある気がしてならなかった。
――そして翌朝。
宿の前に届いた封書を見て、私は息を呑むことになる。
そこには王国の紋章とともに、こう書かれていた。
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