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未来の息子がやってきた!?

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「え!?こんな可愛い子があんたの子!?確かに見た目はあんたそっくりだけど……、中身はママに似たのね…。良かったねぇ~」
「…おい、アニッサお前俺様に失礼だろう。俺様に。」
「は?お前に失する礼が一ミクロンでもあるとでも?あるとすれば未来のあんたの嫁に旦那を悪く言ってごめんなさい~ぐらいだわ。」
「…っチッ!」
「まぁまぁ、二人とも…。」

 俺らは教室に戻ると、ソフィアとアニッサにパトリックを紹介した。気まずくなるから母親の情報は伏せたが、未来から来たらしいということを伝えた時の幼馴染の反応は酷かった。解せぬ。



「でも、どうして過去に…?」

 ソフィアがパトリックを膝に抱えながら尋ねる。教室に戻るや否やパトリックはソフィアの膝が良いと可愛らしく甘え、母性本能をくすぐられたソフィアはパトリックに言われるがまま膝のを差し出し、だっこしているのだ。
 うらやましいなんて言わない。


「ぼくが来たかったの!」
「パパの過去に?」
「ぐっ…!」

 ソフィアの『パパ』発言が心臓にクる。胸を抑えながら苦しみ藻掻く俺を見ながらクリスとアニッサが「ウケる~」「記録しよ~」とか言いながら魔法水晶を取り出したが、それどころじゃない。

 俺の、妻が、息子を膝に抱っこして、微笑み合っている…?


「え?…天国?」
 思わず涙が零れた俺を見て遂に限界を超えたのか、「ブフォッ!」と吹き出し顔を抑え静かに笑う二人を俺は魔力で吹き飛ばした。

 


「え!?…何、何事?」
「あ?あいつらがうるせぇから。」

 「え~?この壁どうするの…。」などと言いながら穴の開いた壁を見つめるソフィアを俺は見下ろす。桃色でサラサラな髪と湖のように澄んだ瞳。全てが宝石の様に輝いて見える。俺はドキドキと胸を打つ鼓動を意識しないように、踵を返しながらパトリックを膝から奪い取った。


「おい。次さぼるぞ。」
「え?」
「俺の餓鬼が甘いもん食いたいんだと。」
「パトリックが?」
「おう。」
「え…、じゃあ、今じゃなくて放課後にでも皆で…――、」
「おら、ちんたらしてねぇでいくぞ。」
「え、ちょっとっ!」

 ソフィアの手を引き無理やり教室から連れ出す。左手でパトリックを抱き、右手はソフィアの手を握る。


(…俺の嫁と息子…。)


 胸がこそばゆく感じた。


(――あ、やべぇ、今手つないでる。)
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