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第二章 それぞれの願い
3.笑顔を見せて
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「はい、できたよ」
ドリスさんのはわたしの周りをぐるりとあるき、あらゆる方角から確認すると満足げに頷いた。
「素材がいいから何を着せても似合うわねぇ。今日のフィーは王都の人間をみんな虜にしてしまうよ!」
「旦那様ももれなく虜にできるでしょうか?」
「ええ、きっとフィーに夢中になること間違いないね」
鏡の中を覗き込むと、ドリスさんに綺麗に化粧をしてもらって完璧におめかしをした自分が映っている。
(化粧をしてもらったのは初めてだわ)
お姉様がメイドにしてもらっているのを見たことは何度かあったけれど、自分がしてもらうことなんてなかったのだ。
鏡の前でくるりと回ってみる。
ドリスさんが急遽用意してくれたワンピースの裾がふわりと揺れた。
(このワンピースも素敵……。可愛い色だから自然と心がうきうきとする)
花のような色のワンピースは袖口にレースがあしらわれており、手の動きに合わせてふわりと揺れる。
背中には大きなリボンがつけられており、後ろまで可愛らしい型のワンピースだ。
「さあさあ、旦那様を待たせてはいけないよ」
「はぁい」
振り返って部屋を出ようとしたその時、頭にずきりと痛みが走る。
目の前の景色に白い靄のようなものがかかり――気付けば見知らぬ街の大広間に立っていた。
『ダレン、これが気になるのかい?』
溌剌とした女性の声に気付き、ここれがまた《おししょうさま》になる夢であるのに気付く。
わたしの視線の先には街の子どもらしい服装のダレンがいて、澄んだ青色の瞳で私を見つめている。
『違います。たまたま見ただけです』
『そうかい? 欲しそうにしていたと思ったんだけどな』
『……』
《おししょうさま》が歩き始めると、ダレンは先ほど立っていた場所を振り返る。
彼らは屋台の前にいたらしい。人気のお店のようで、街の人々が立ち寄っては、肉串を買って美味しそうにほおばっている。
名残惜しそうにしているダレンの姿を、《おししょうさま》は見逃さなかった。
『ん~……お腹空いたなぁ。ダレン、やっぱりさっきのお店で買い物をしよう!』
『おししょうさま?』
《おししょうさま》は瞬く間に屋台に行くと、肉串を二つ購入して戻ってきた。ゆっくりとかがんでダレンの目線に合わせると、彼に肉串を一つ差し出す。
『はい、食べてごらん』
『……』
ダレンは無防備な表情で肉の串焼きを見つめる。
『噛り付くんだよ……こうやってね』
こちらをじいっと見つめる瞳がきらきらと輝くと、彼はぱくりと肉に噛りついた。
小さな口をもぐもぐと動かして咀嚼している姿は小動物のようだ。
(可愛い。とても美味しかったのね)
あっという間に食べ終えたダレンの口元を《おししょうさま》がハンカチで拭ってあげている。
口元を汚したのが恥ずかしかったのか、照れくさそうにしているけれど、ダレンは彼女の手に頬を預けて甘えている。
……幸せな夢。
どうしてまたこの夢を見たのかはわからないけれど、ずっと見守り続けたくなる。
「フィー? ぼーっとしていないで早く出ておいで」
ドリスさんの声が聞こえてきて気付けば、自分の部屋の中に戻っていた。
「すみません! 今行きます!」
わたしは部屋を出て、エドが待っている居間へと向かった。
「旦那様、お待たせしました!」
「……」
エドは居間にある長椅子に座っていたのだけど、部屋に入ると待ち構えていたかのように立ち上がる。
口を固く結び、じっとわたしを見つめた。
「旦那様とお出かけできるのが嬉しいです。今日はよろしくお願いします」
「社会勉強であるのを忘れてはいけませんよ?」
「こ、心します……!」
「よろしい」
青色の瞳が優しく細められたのが見え、胸がこそばゆくなった。
ドリスさんのはわたしの周りをぐるりとあるき、あらゆる方角から確認すると満足げに頷いた。
「素材がいいから何を着せても似合うわねぇ。今日のフィーは王都の人間をみんな虜にしてしまうよ!」
「旦那様ももれなく虜にできるでしょうか?」
「ええ、きっとフィーに夢中になること間違いないね」
鏡の中を覗き込むと、ドリスさんに綺麗に化粧をしてもらって完璧におめかしをした自分が映っている。
(化粧をしてもらったのは初めてだわ)
お姉様がメイドにしてもらっているのを見たことは何度かあったけれど、自分がしてもらうことなんてなかったのだ。
鏡の前でくるりと回ってみる。
ドリスさんが急遽用意してくれたワンピースの裾がふわりと揺れた。
(このワンピースも素敵……。可愛い色だから自然と心がうきうきとする)
花のような色のワンピースは袖口にレースがあしらわれており、手の動きに合わせてふわりと揺れる。
背中には大きなリボンがつけられており、後ろまで可愛らしい型のワンピースだ。
「さあさあ、旦那様を待たせてはいけないよ」
「はぁい」
振り返って部屋を出ようとしたその時、頭にずきりと痛みが走る。
目の前の景色に白い靄のようなものがかかり――気付けば見知らぬ街の大広間に立っていた。
『ダレン、これが気になるのかい?』
溌剌とした女性の声に気付き、ここれがまた《おししょうさま》になる夢であるのに気付く。
わたしの視線の先には街の子どもらしい服装のダレンがいて、澄んだ青色の瞳で私を見つめている。
『違います。たまたま見ただけです』
『そうかい? 欲しそうにしていたと思ったんだけどな』
『……』
《おししょうさま》が歩き始めると、ダレンは先ほど立っていた場所を振り返る。
彼らは屋台の前にいたらしい。人気のお店のようで、街の人々が立ち寄っては、肉串を買って美味しそうにほおばっている。
名残惜しそうにしているダレンの姿を、《おししょうさま》は見逃さなかった。
『ん~……お腹空いたなぁ。ダレン、やっぱりさっきのお店で買い物をしよう!』
『おししょうさま?』
《おししょうさま》は瞬く間に屋台に行くと、肉串を二つ購入して戻ってきた。ゆっくりとかがんでダレンの目線に合わせると、彼に肉串を一つ差し出す。
『はい、食べてごらん』
『……』
ダレンは無防備な表情で肉の串焼きを見つめる。
『噛り付くんだよ……こうやってね』
こちらをじいっと見つめる瞳がきらきらと輝くと、彼はぱくりと肉に噛りついた。
小さな口をもぐもぐと動かして咀嚼している姿は小動物のようだ。
(可愛い。とても美味しかったのね)
あっという間に食べ終えたダレンの口元を《おししょうさま》がハンカチで拭ってあげている。
口元を汚したのが恥ずかしかったのか、照れくさそうにしているけれど、ダレンは彼女の手に頬を預けて甘えている。
……幸せな夢。
どうしてまたこの夢を見たのかはわからないけれど、ずっと見守り続けたくなる。
「フィー? ぼーっとしていないで早く出ておいで」
ドリスさんの声が聞こえてきて気付けば、自分の部屋の中に戻っていた。
「すみません! 今行きます!」
わたしは部屋を出て、エドが待っている居間へと向かった。
「旦那様、お待たせしました!」
「……」
エドは居間にある長椅子に座っていたのだけど、部屋に入ると待ち構えていたかのように立ち上がる。
口を固く結び、じっとわたしを見つめた。
「旦那様とお出かけできるのが嬉しいです。今日はよろしくお願いします」
「社会勉強であるのを忘れてはいけませんよ?」
「こ、心します……!」
「よろしい」
青色の瞳が優しく細められたのが見え、胸がこそばゆくなった。
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