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図書塔の知られざる住人
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図書塔に配属された歴代の司書たちが辞めていった理由の一つが、幽霊である。
昼間でも仄暗い場所があり、そこでは足音がしたり物が勝手に動いたりでともかく怪奇現象の宝庫だそうだ。
夕方になり暗くなってきた塔の中は少し気味が悪い。人の居ない部屋で作業するのはいささか怖いものである。そんな中で本を整理していると、突然首筋を冷たい手で掴まれて私は声を上げた、が口を塞がれてしまう。
「シーっ。司書長様に聞かれたらまたあの魔法を使われちゃう」
振り返るとノアがすぐ後ろに立っている。どうやらちょっかいをかけに来たようだ。
口を塞いでいた彼の手が離れ、私は溜息をついた。
ノアはよく私にちょっかいをかけに来る。かまってちゃんなのだ。そして、ハワード候爵はそんなノアを叱りに来る。
ハワード候爵には素っ気ないのに私にはかまってちゃんを発揮するのよね。そういう戦略なの?それとも無自覚でそんなことをしているから候爵の方がノアにのめり込んでいってるの……?恐ろしい……。
この数日間で様子を観察したところ、ハワード候爵の方がノアにぞっこんのように見える。初日だってノアを押し倒していたし。
ノアのこの対応を改善しないとハワード候爵に嫉妬されそうだ……。
「実は俺、シエナちゃんに謝らなきゃならないことがあるんだ」
「何ですか?もしかして服に食べ物こぼしました?」
「……俺はガキか?」
彼がジト目で見てきたので笑って誤魔化す。
「実は俺、シエナちゃんが初めて来た日、シエナちゃんに魔法を使って意地悪しようとしたんだ」
「え??なんともなかったのですが?」
「うん、すぐに気づいた司書長さまに邪魔されたからね」
もしかしてあの時身体が不自然に反応したのってノアの魔法のせい?それなら、候爵が拘束の魔法を使ったのは嫉妬じゃなくて私を守る為だったの?
「シエナちゃんにちょっかいかけないように口酸っぱく言われたから面白くなくてさ、ちょっとからかってやろうと思っていたんだよね」
まさか……ノアからの宣戦布告だったの??ハワード候爵から構ってもらえなくなるかもしれなくて???
ええい、ややこしい。
「何考えているの?」
「え?」
「俺の目を見てよ。もっとシエナちゃんの事知りたいな」
これまでに聞いたことの無いような声色に驚き私はノアの顔を見た。オレンジ色の瞳が寂しそうにこちらを見ている。夕日を彷彿とさせる美しい宝石のような瞳。しかしその瞳の奥を見ることは何故か阻まれる気がした。
彼は私の首筋をおさえていない方の手で私の顎を掴む。
その瞬間、小さな影がさっと現れノアに直撃した。突然のことで、彼はバランスを崩して床に倒れる。目にもとまらぬ速さで次々と小さな影が現れ、ノアに攻撃してゆく。
もしかしてこれが噂の幽霊さん?
私は思わず悲鳴を上げた。すると、その悲鳴を聞きつけたハワード候爵が現れた。
「フェレメレン、大丈夫か?!」
「私は大丈夫ですが、ノアが幽霊に襲われています!」
ハワード候爵は足元に転がるノアと彼の周りを動き回る小さな影を見て笑った。
え?笑顔初めて見た。
「安心しろ、フェレメレン。このお方たちは本や我々を守ってくれるのだ」
「このお方たち……?」
そう言って、候爵は手を伸ばして影を捕まえる。私は候爵に差し出された影の正体をまじまじと見た。
「こ……このお方は!!!」
「そうだ!このお方こそが図書塔の猫警備隊隊長のシモンである!」
シモンはチョコレート色の毛と白い毛で美しい模様が描かれている雄猫だ。淡い青の瞳が美しく、肉球は薄桃色でプニプニである。
そのなんとも愛くるしいお姿に思わず口元が緩んでしまう。しかし、候爵の前でこんなゆるい顔をしていてはシバかれてしまう!
私はなんとか表情を整えて侯爵を見た。すると、心なしか彼の眉間の皺が薄くなっている気がする。
もしかして猫好きか?同士の予感がする。
そう言えば王立図書館にもネズミから本を守るために猫警備隊が居るのだが、やはり図書塔にも居るものなのね。ここには居ないと思って落ち込んでいたから嬉しい。
シモンがにゃあと鳴くと、ゾロゾロと猫たちが出て来た。こんなにたくさんいるのに今まで気づかなかったとは……さすが手練れの近衛騎士である。
ハワード候爵がシモンを抱っこさせてくれたので、私はそっと彼を受け取った。フワフワの頭に頬を寄せると、彼はゴロゴロと喉を鳴らし始める。
なんという至福……!
「君は本当に猫が好きだな」
候爵は小声でそう言ってきた。確かにそうなのだが、いつそのことを話したのかは覚えていない。
昼間でも仄暗い場所があり、そこでは足音がしたり物が勝手に動いたりでともかく怪奇現象の宝庫だそうだ。
夕方になり暗くなってきた塔の中は少し気味が悪い。人の居ない部屋で作業するのはいささか怖いものである。そんな中で本を整理していると、突然首筋を冷たい手で掴まれて私は声を上げた、が口を塞がれてしまう。
「シーっ。司書長様に聞かれたらまたあの魔法を使われちゃう」
振り返るとノアがすぐ後ろに立っている。どうやらちょっかいをかけに来たようだ。
口を塞いでいた彼の手が離れ、私は溜息をついた。
ノアはよく私にちょっかいをかけに来る。かまってちゃんなのだ。そして、ハワード候爵はそんなノアを叱りに来る。
ハワード候爵には素っ気ないのに私にはかまってちゃんを発揮するのよね。そういう戦略なの?それとも無自覚でそんなことをしているから候爵の方がノアにのめり込んでいってるの……?恐ろしい……。
この数日間で様子を観察したところ、ハワード候爵の方がノアにぞっこんのように見える。初日だってノアを押し倒していたし。
ノアのこの対応を改善しないとハワード候爵に嫉妬されそうだ……。
「実は俺、シエナちゃんに謝らなきゃならないことがあるんだ」
「何ですか?もしかして服に食べ物こぼしました?」
「……俺はガキか?」
彼がジト目で見てきたので笑って誤魔化す。
「実は俺、シエナちゃんが初めて来た日、シエナちゃんに魔法を使って意地悪しようとしたんだ」
「え??なんともなかったのですが?」
「うん、すぐに気づいた司書長さまに邪魔されたからね」
もしかしてあの時身体が不自然に反応したのってノアの魔法のせい?それなら、候爵が拘束の魔法を使ったのは嫉妬じゃなくて私を守る為だったの?
「シエナちゃんにちょっかいかけないように口酸っぱく言われたから面白くなくてさ、ちょっとからかってやろうと思っていたんだよね」
まさか……ノアからの宣戦布告だったの??ハワード候爵から構ってもらえなくなるかもしれなくて???
ええい、ややこしい。
「何考えているの?」
「え?」
「俺の目を見てよ。もっとシエナちゃんの事知りたいな」
これまでに聞いたことの無いような声色に驚き私はノアの顔を見た。オレンジ色の瞳が寂しそうにこちらを見ている。夕日を彷彿とさせる美しい宝石のような瞳。しかしその瞳の奥を見ることは何故か阻まれる気がした。
彼は私の首筋をおさえていない方の手で私の顎を掴む。
その瞬間、小さな影がさっと現れノアに直撃した。突然のことで、彼はバランスを崩して床に倒れる。目にもとまらぬ速さで次々と小さな影が現れ、ノアに攻撃してゆく。
もしかしてこれが噂の幽霊さん?
私は思わず悲鳴を上げた。すると、その悲鳴を聞きつけたハワード候爵が現れた。
「フェレメレン、大丈夫か?!」
「私は大丈夫ですが、ノアが幽霊に襲われています!」
ハワード候爵は足元に転がるノアと彼の周りを動き回る小さな影を見て笑った。
え?笑顔初めて見た。
「安心しろ、フェレメレン。このお方たちは本や我々を守ってくれるのだ」
「このお方たち……?」
そう言って、候爵は手を伸ばして影を捕まえる。私は候爵に差し出された影の正体をまじまじと見た。
「こ……このお方は!!!」
「そうだ!このお方こそが図書塔の猫警備隊隊長のシモンである!」
シモンはチョコレート色の毛と白い毛で美しい模様が描かれている雄猫だ。淡い青の瞳が美しく、肉球は薄桃色でプニプニである。
そのなんとも愛くるしいお姿に思わず口元が緩んでしまう。しかし、候爵の前でこんなゆるい顔をしていてはシバかれてしまう!
私はなんとか表情を整えて侯爵を見た。すると、心なしか彼の眉間の皺が薄くなっている気がする。
もしかして猫好きか?同士の予感がする。
そう言えば王立図書館にもネズミから本を守るために猫警備隊が居るのだが、やはり図書塔にも居るものなのね。ここには居ないと思って落ち込んでいたから嬉しい。
シモンがにゃあと鳴くと、ゾロゾロと猫たちが出て来た。こんなにたくさんいるのに今まで気づかなかったとは……さすが手練れの近衛騎士である。
ハワード候爵がシモンを抱っこさせてくれたので、私はそっと彼を受け取った。フワフワの頭に頬を寄せると、彼はゴロゴロと喉を鳴らし始める。
なんという至福……!
「君は本当に猫が好きだな」
候爵は小声でそう言ってきた。確かにそうなのだが、いつそのことを話したのかは覚えていない。
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