【本編完結済】うろ覚えの転生令嬢は勘違いで上司の恋を応援する

柳葉うら

文字の大きさ
13 / 48

ティータイム大作戦

しおりを挟む
 翌日、ハワード候爵の執務室を掃除しに行くと客用のテーブルにティーカップが残っていた。ハワード候爵は貴族だけど、どうやら自分でお茶を淹れることができるみたいだ。
 昨日の候爵聖剣伝説幼少期のお話を聞いたこともあって意外なギャップであるが、図書塔に使用人を入れることはできないから仕方なく覚えたのかもしれない。

「昨日はお客様が来られていたんですね?」
「ああ、片付けを頼む」
「承知しました。どなたがいらっしゃったのですか?」
「……王宮関係だ。そういえば、塩を撒き忘れていたな」

 そう言って候爵は立ち上がりどこからともなく塩が入った瓶を取り出すと1階部分に行く。

 もしかしてそれの為だけの塩なの?この世界では貴重な物なのよ?

 さすが日本の会社が作った乙女ゲーム。その文化がこの中世ヨーロッパな世界にも浸透しているのね。まさか候爵のあのご尊顔からそんな台詞を聞ける日が来るとは思っていなかった。

 そもそも図書塔ここに入れるってことは王宮でもかなりの御要人が来たってことだよね?
 ここって実は王族の近衛騎士の次くらいに実力がある近衛騎士が警備するような場所で担当司書官以外は国王陛下と神官長と魔術師団長の許しが無いと入れないんですよ?

 中の人たちはこんな感じですが。

 前に神官長が来られた時とは様子が違うあたり、苦手な方が来たのかもしれない。鬼と恐れられるハワード候爵にも苦手な人っているんだな……。

「そういえば、第二騎士団の騎士から君宛てのお礼を預かっているぞ」
「え?!引っ越しのお礼ですのにお礼をいただくとは……。パスカル様からも昨日お礼をしていただきましたのに」

 1階から戻ってきたハワード候爵は執務室の隣にある寝室に入り、第二騎士団の皆様から頂いたお礼の品々を渡してくれた。

「君の差し入れとやらをパスカルも絶賛していたぞ。貴族令嬢なのに料理をするとは意外だな」
「え、えーと……領地で使用人が作っているのを見て興味が湧いたから教えてもらったんですよ。思いのほか面白くて息抜きで作ることもあるんです」

 前世で趣味だったとは言えない……。

 候爵が何か言いかけたが、目が合うと言葉を飲み込んでしまった。私も話しかけるタイミングがつかめず、見つめ合うしかない。ちょっと気まずくなったので私は一言お断りの言葉をかけて3階の部屋に行ってティーカップを洗った。

 王立図書館にはこういうお茶出し係をしてくれる使用人的な方もいるのだが、ここには居ないため私の仕事となるのだ。
 
 ティーカップを洗い終わると紅茶を淹れて候爵の机の上に置く。彼はお礼を言って受け取ってくれた。

「そういえば、ここではアフタヌーンティーはしていないのですね?」
「ああ、見ての通りこの人数でまわしているからな」

 王立図書館では小休憩と職員同士の交流も兼ねてアフタヌーンティーをしていた。王宮の調理人たちが用意してくれていたお菓子と紅茶をいただくのだ。

「よろしければ、私がお菓子を持って来てアフタヌーンティーをしてもいいですか?その方がハワード候爵とノアも少し気分転換できるかと思うのですが……」

 ハワード候爵もノアもずっと活字を追う作業をしている。どちらも朝から晩まで続けばしんどいに違いない。それに、アフタヌーンティーと称して二人が顔を合わせられる機会が増えるのは良いことだろう。

 私が寮に帰ってからは知らないけれど、2人が一緒に居ることはあまりないのだ。

 ……まあ、私が帰った後は知らないんですけど!

「良いのか?……しかし、そうすればフェレメレンの仕事が増えるぞ。寮に帰ってからも仕事をすることになるだろう」
「お菓子作りは趣味なので大丈夫です!」

 候爵は顎に手を当ててちょっと悩んでいたが、意外にもOKしてくれた。「そんな時間は無い!」って一蹴される予感もしていたのでちょっと驚いた。

 それでは、上司様に塩を送り返すとしますか!

 お菓子作りするきっかけができて、私は少し浮足立って執務室を後にした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さら
恋愛
 私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。  そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。  王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。  私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。  ――でも、それは間違いだった。  辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。  やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。  王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。  無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。  裏切りから始まる癒しの恋。  厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ
恋愛
教師との悲恋、そして突然の死をもって転生をした少女、シャーロット・ジェム。凍れる国にて、小さな魔法屋を営んでいた。名門学園からの推薦状が届いたことにより、平和だった日々に暗雲が訪れるように。 今世も彼女に死は訪れる――未来を望むには二つ。 ――ヤンデレからもたらされる愛によって、囲われる未来か。そして。 ――小さくて可愛いモフモフ、女神の眷属と共に乗り越えていくか。 鳥籠に囚われるカナリア色の髪の少女、ヤンデレホイホイの彼女が抗っていく物語。 生きていく物語。 小説家になろう様でも連載中です。

巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。 学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。 「好都合だわ。これでお役御免だわ」 ――…はずもなかった。          婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。 大切なのは兄と伯爵家だった。 何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

処理中です...