冒険ファンタジー!旅人とシスターと獣人

まー

文字の大きさ
1 / 4

出会い系異世界

しおりを挟む
 ある朝目覚めると俺は異世界に居た。 

見たことの無い形の草木が生い茂る森の中、仰向けになって見上げる空にはまた見たことも無い生き物が飛んでいる。

なぜ異世界とわかったか、どうして取り乱していないのか。

 前者の理由は簡単だ。真横にいる女が明らかに人間の様相を成していないからである。
 程よくカールした赤茶色のロングヘア、それよりも濃い茶色の大きく勝ち気そうな瞳。縁取る睫毛が影を作っている。目元とは対象的に、控えめで小さな鼻と口。よく焼けた肌と上品な顔立ちのアンバランスな感じが少女を幼く見せている。
不可解な部分は側頭部に人の耳の代わりのように生えている犬の耳、それと簡単に布を巻き付けたような服の間から出ているふさふさの尻尾である。

「おめえ、どっから来た?」

耳をピルルッと振動させ興味深そうに覗き込んでくる。「異世界……かな?」後者の疑問に答えるとすれば、それは俺自身が望んだことだからである。

渡小次郎ワタリコジロウは異世界に行くことを望んでいた。
つまり、現実世界を嫌っていた。
高校卒業後アルバイトとして勤務していた喫茶店でそのまま雇って貰う契約をしていたが、オーナーの急逝に伴い喫茶店が廃業。
焦った小次郎はつなぎのバイトを探し、その後に就職活動をするつもりだったがバイトが決まって安心したのかグダグダと先延ばしにし続け気がつけば22歳が終わっていた。
高校時代の友人は大学に進学。今は就職が決まって遊び呆けている時期である。久しぶりに会った友人杉本も例外なく就職が決まり、小次郎を説教する立場になっていた。
 小次郎は思う。異世界に行きたい。ここでは無いどこかへ。夢と希望と不思議が蔓延る未知の世界へ。縁起が良さそうという理由から大きな神社の初詣で周りの迷惑を考えず5分ほど拝み倒した成果が出たのだろうか、
小次郎は異世界に存在している。

イヌミミ獣人少女はジスと名乗った。今年で14になるそうだ。彼女によるとここは「ヒナリア国のはしっこ」らしい。聞いたことのない地名のアバウトな説明で得た情報は少なかった。国があるということは町もあるだろう。一先ずの目的地が出来た。

「ジスはなんでこんなところにいるんだ?」
「モニカに薬草取って来いって言われたから」
「そのモニカって人のところに俺も連れてってくれないか?」

ジスと暫く喋っていてわかったが、こいつは人から聞いた知識を伝えているだけで意味は理解していないことが多い。「ヒナリア国のはしっこ」というのも人の受け売りだろう。モニカという人がジスに知識を与えている可能性が高いなら、今後の生活のためにもモニカに会っておくべきだろう。 

「おー、じゃあ薬草採るの手伝ってくれなー」

以外にもあっさり許可が出た。

「どんなやつなんだ?その薬草って」
「それ」

ジスが指さした黒い塊はその瞬間一直線に俺の首筋へたどり着き、鋭い歯で肉を抉る。
ヒュッ……、喉から息が漏れる。悲鳴をあげることすら出来ない。気が付かなかった。木陰の一部だと思っていた。ジスは最初から気がついていたのか?一瞬でそれらのことを考え、次いで痛みが襲ってくる。

「うァ……アアア、あ゛ぁ、、、」

夥しい量の血を見て思考が吹き飛ぶ。
怖い。ただ目の前の獣が怖い。目は血走り、黄色い歯は血で赤く染まっている。くちゃくちゃと見せつけるように俺の肉を咀嚼している姿は本能のまま肉を貪る獣のそれではなかった。

もうこれ以上見たくない。

小次郎の心の声に答えるように脳は外の世界を認識するのを止めた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

薬師だからってポイ捨てされました!2 ~俺って実は付与も出来るんだよね~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト=グリモワール=シルベスタは偉大な師匠(神様)とその脇侍の教えを胸に自領を治める為の経済学を学ぶ為に隣国に留学。逸れを終えて国(自領)に戻ろうとした所、異世界の『勇者召喚』に巻き込まれ、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。 『異世界勇者巻き込まれ召喚』から数年、帰る事違わず、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居るようだが、倒されているのかいないのか、解らずとも世界はあいも変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様とその脇侍に薬師の業と、魔術とその他諸々とを仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話のパート2、ここに開幕! 【ご注意】 ・このお話はロベルトの一人称で進行していきますので、セリフよりト書きと言う名のロベルトの呟きと、突っ込みだけで進行します。文字がびっしりなので、スカスカな文字列を期待している方は、回れ右を推奨します。 なるべく読みやすいようには致しますが。 ・この物語には短編の1が存在します。出来れば其方を読んで頂き、作風が大丈夫でしたら此方へ来ていただければ幸いです。 勿論、此方だけでも読むに当たっての不都合は御座いません。 ・所々挿し絵画像が入ります。 大丈夫でしたらそのままお進みください。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...