37 / 43
第二章 陰謀戦争許さぬ意向
聖地巡礼原作再現side誠哉 前世の化学sideジュリアス
しおりを挟む
月明かりに照らされてキラキラと光る白い石造りの重厚な壁を、コツコツと叩いていく。
『ザクロの木から、十歩東』
これは、ヒロイン、ルミナス公爵令嬢の覚え書きだ。特装版の幼少期の話と、復習編最終巻ででてくる。ルミナスは幼少期、ジュリアス第一王子との顔合わせの時にこの抜け道を見つけた。この抜け道を使い、ジュリアス第一王子はルミナスと共に下町に護衛もつけず降りる。病弱なジュリアスは下町で倒れてしまい、ルミナスは暴漢に襲われる。そこをヒーローで、騎士見習いだったライラックが助け、フラグが立つ。印象的な大切なシーンだ。
そしてこの抜け道はラスト。国家転覆の時も使われる。思い描くのは、展城先生の挿絵、焼けゆく城の自室のベッドでシーツを赤く汚し絶命する、愚かなジュリアスと聖剣を鞘に納めるライラックだ。
そう、そうだ。俺がライラックの替わりにジュリアスを痛め付け、聖女ルミナスを、竜王の力を俺のものにするんだ。俺が強くて最強な、俺だけの国にするんだ!
こつ、こつ、かつっ!
音が変わった。ゆっくりとそれを押すと、壁はずずっと押し込まれ、人一人が四つん這いになったら通れそうな、小さな道が現れる。
あたりを見渡して、そう遠くない場所に実をつけてない、低い木を見つける。あは、は。幼少のルミナスの十歩ってこんな小さいのか。何回も通り過ぎちゃったよぉ。あぁ、可愛い!可愛いなぁ!ヤベェなぁ!小説を読んだ時の高揚が、湧き立つようなビリドーが、クラクラとするような酩酊感が俺を支配する。
腰には聖剣。頭は外套ですっぽりと覆って……。灯りは、ルミナスとライラックが泊まった宿屋のマッチだ。箱から取り出して、マッチ棒を壁に擦り当てるーー。
ーーー
ルミナスに話してからか、前世の変な記憶が鮮明に思い出せるようになった。少年雑誌の袋とじとか、福袋買ったこととか…そんな役に立たない記憶が多いけど…。より鮮明に思い出したことは日本小学生四年生の夏休みのことだ。
マッチについてご存知だろうか。マッチの頭を擦ると火種が出るーぐらいは知ってるだろう…。理科の実験で、アルコールランプに火をつける時、どうしてこんなに着きにくいんだ?!と思わなかったかな。オレは本当に疑問に思って、自由研究にマッチを調べて、古いマッチを沢山、おばあちゃん家から奪って展示して…。盗んだのがキャバレーのマッチだったのはよく笑い者にされたのは恥ずかしい思い出だ。
昔の中世のマッチ…黄燐マッチはすごく着火しやすかったんだ。マッチの頭を少し何かに擦るだけで発火する。海外のネコとネズミのクラシックなアニメでは、机や家の柱に擦って、黄燐マッチを使ってるシーンが見受けられる。このマッチ、実は大変取り扱いに注意が必要で、少しの気温変動でさえ着火した。とっても危険なもので、保管には十分気をつけなければならなかった。
現代では安全マッチって言って、マッチの頭の薬とマッチ箱のヤスリの側薬が化学反応を起こすことで着火するようになっている。だから、机に擦っても着火はしない。化学反応を起こすまでマッチを擦り付けなきゃダメだったんだ。
それをオレみたいに、義務教育で使った、黄燐を含まない安全マッチの要領で、雑に扱ったら……どうなると思う?
ーーー
『ザクロの木から、十歩東』
これは、ヒロイン、ルミナス公爵令嬢の覚え書きだ。特装版の幼少期の話と、復習編最終巻ででてくる。ルミナスは幼少期、ジュリアス第一王子との顔合わせの時にこの抜け道を見つけた。この抜け道を使い、ジュリアス第一王子はルミナスと共に下町に護衛もつけず降りる。病弱なジュリアスは下町で倒れてしまい、ルミナスは暴漢に襲われる。そこをヒーローで、騎士見習いだったライラックが助け、フラグが立つ。印象的な大切なシーンだ。
そしてこの抜け道はラスト。国家転覆の時も使われる。思い描くのは、展城先生の挿絵、焼けゆく城の自室のベッドでシーツを赤く汚し絶命する、愚かなジュリアスと聖剣を鞘に納めるライラックだ。
そう、そうだ。俺がライラックの替わりにジュリアスを痛め付け、聖女ルミナスを、竜王の力を俺のものにするんだ。俺が強くて最強な、俺だけの国にするんだ!
こつ、こつ、かつっ!
音が変わった。ゆっくりとそれを押すと、壁はずずっと押し込まれ、人一人が四つん這いになったら通れそうな、小さな道が現れる。
あたりを見渡して、そう遠くない場所に実をつけてない、低い木を見つける。あは、は。幼少のルミナスの十歩ってこんな小さいのか。何回も通り過ぎちゃったよぉ。あぁ、可愛い!可愛いなぁ!ヤベェなぁ!小説を読んだ時の高揚が、湧き立つようなビリドーが、クラクラとするような酩酊感が俺を支配する。
腰には聖剣。頭は外套ですっぽりと覆って……。灯りは、ルミナスとライラックが泊まった宿屋のマッチだ。箱から取り出して、マッチ棒を壁に擦り当てるーー。
ーーー
ルミナスに話してからか、前世の変な記憶が鮮明に思い出せるようになった。少年雑誌の袋とじとか、福袋買ったこととか…そんな役に立たない記憶が多いけど…。より鮮明に思い出したことは日本小学生四年生の夏休みのことだ。
マッチについてご存知だろうか。マッチの頭を擦ると火種が出るーぐらいは知ってるだろう…。理科の実験で、アルコールランプに火をつける時、どうしてこんなに着きにくいんだ?!と思わなかったかな。オレは本当に疑問に思って、自由研究にマッチを調べて、古いマッチを沢山、おばあちゃん家から奪って展示して…。盗んだのがキャバレーのマッチだったのはよく笑い者にされたのは恥ずかしい思い出だ。
昔の中世のマッチ…黄燐マッチはすごく着火しやすかったんだ。マッチの頭を少し何かに擦るだけで発火する。海外のネコとネズミのクラシックなアニメでは、机や家の柱に擦って、黄燐マッチを使ってるシーンが見受けられる。このマッチ、実は大変取り扱いに注意が必要で、少しの気温変動でさえ着火した。とっても危険なもので、保管には十分気をつけなければならなかった。
現代では安全マッチって言って、マッチの頭の薬とマッチ箱のヤスリの側薬が化学反応を起こすことで着火するようになっている。だから、机に擦っても着火はしない。化学反応を起こすまでマッチを擦り付けなきゃダメだったんだ。
それをオレみたいに、義務教育で使った、黄燐を含まない安全マッチの要領で、雑に扱ったら……どうなると思う?
ーーー
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,014
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる