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1.5章 竜王の聖女と逆里帰り出産又はハネムーン
決戦 お家に帰らせていただきます。
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「やられっぱなしで、いいのかい?」
「えっ? 」
おばあちゃんの目がまた光った気がした。
「ルミナスは坊やを傷つけるだけ傷つけた。不安にさせて、それっきりの男らしくもない男に、やられっぱなしで帰るつもりかい?」
「……そうかな。そうかも。」
言われてみると、そうかもしれない。ムクムクと、どうしようもない怒りがこみ上げてくる。
「それじゃあ、ババァはルミナスを呼んでくるからの。がんばりなさい」
「えっ、あ…ありがとうございます。」
結局、あのおばあちゃんは誰だったんだろう…。と怒りが一瞬遠くなる。おばあちゃんはキッと俺を睨み返した。
「坊やが怒らんで誰がルミナスを正すんだい!坊やが傷ついたことを、そのあと他のやつにもやったらどうする!今、正してやらないと一生そのままじゃよ!」
「はっ、はい!」
「はー……。こうも純だと……、怒りの香でも焚くかぇ…」
ぶつぶつと何かを言いながら、おばあちゃんはお香に火をつける。スパイシーな香りと、木の匂いが漂い始めた。じゃあの、と出て行ってしまう。
勢いに押されて言い返せぬまま流してしまったけど…本当に誰だったんだろう。
落ち着かない、自分の王宮にはなかった香りが立ち込める。ぴりぴりとした香辛料に近い香りが鼻をつく。竜王の谷では、この匂いがスタンダードなのかな…。慣れなきゃだめかな…。でも、ルミナスはもっとムスクやウッド系の落ち着いた匂いがするんだけどな。
床に座りっぱなしじゃだめだ…。とにかく起きなきゃと、寝台の柵に縋り立ち上がる。だめだ痛い。腰が痛い!ソファーと机には距離がありすぎる。仕方なく寝台にまた眠る。
『坊やが傷ついたことを、その後他のやつにもやったらどうする!』
ルミナスが、俺以外をお嫁さんとして連れてくるってこと?そんなのを考えるだけで胸が痛くなる。
ルミナスの隣に立つのは、可愛くて、賢い人だろうな。
ほわほわのウェーブのかかった、柔らかな体を持った可憐な女の子をルミナスの横に置く。2人の影が重なって、ぎしっと寝台を揺らすーー。
「……様。ジュリ……様」
2人が手を取り合って、子をもうけて、幸せそうに…。
「ジュリアス様!」
「…ルミナス」
「…あの、ジュリアス様。申し訳ありません…。私があなたに、気に食わないことをしてしまって…直しますから、どうか」
いつの間に部屋に入ってきていたんだろう。ルミナスはしおらしい態度で、オレの機嫌を伺いながら謝罪をしてる。その顔は焦燥しきっていて、演技っぽいところは一切ない。痛ましい、悲しい顔だ。こんな顔させたいわけじゃないのに。笑ってて欲しいのに。
「ルミナス。黙って。わかってないのに謝らないで。」
「あ、すみませ…」
「何度も同じことを言わせないでルミナス。オレたちはなんにも話してないじゃないか。オレがどうして怒ってるのかを聞いてくれ。ルミナスが何でこんなことをしたのか、ちゃんと教えてくれ。」
「ジュリアス様…。」
ルミナスがパァっと顔色を明るくする。まだ許すとも言ってないのに…お気楽な性格だなと少し呆れる。
「勘違いしないで。婚約破棄するかしないかは話し合いの結果次第だ。ルミナス・ヘイストス公爵」
「えっ? 」
おばあちゃんの目がまた光った気がした。
「ルミナスは坊やを傷つけるだけ傷つけた。不安にさせて、それっきりの男らしくもない男に、やられっぱなしで帰るつもりかい?」
「……そうかな。そうかも。」
言われてみると、そうかもしれない。ムクムクと、どうしようもない怒りがこみ上げてくる。
「それじゃあ、ババァはルミナスを呼んでくるからの。がんばりなさい」
「えっ、あ…ありがとうございます。」
結局、あのおばあちゃんは誰だったんだろう…。と怒りが一瞬遠くなる。おばあちゃんはキッと俺を睨み返した。
「坊やが怒らんで誰がルミナスを正すんだい!坊やが傷ついたことを、そのあと他のやつにもやったらどうする!今、正してやらないと一生そのままじゃよ!」
「はっ、はい!」
「はー……。こうも純だと……、怒りの香でも焚くかぇ…」
ぶつぶつと何かを言いながら、おばあちゃんはお香に火をつける。スパイシーな香りと、木の匂いが漂い始めた。じゃあの、と出て行ってしまう。
勢いに押されて言い返せぬまま流してしまったけど…本当に誰だったんだろう。
落ち着かない、自分の王宮にはなかった香りが立ち込める。ぴりぴりとした香辛料に近い香りが鼻をつく。竜王の谷では、この匂いがスタンダードなのかな…。慣れなきゃだめかな…。でも、ルミナスはもっとムスクやウッド系の落ち着いた匂いがするんだけどな。
床に座りっぱなしじゃだめだ…。とにかく起きなきゃと、寝台の柵に縋り立ち上がる。だめだ痛い。腰が痛い!ソファーと机には距離がありすぎる。仕方なく寝台にまた眠る。
『坊やが傷ついたことを、その後他のやつにもやったらどうする!』
ルミナスが、俺以外をお嫁さんとして連れてくるってこと?そんなのを考えるだけで胸が痛くなる。
ルミナスの隣に立つのは、可愛くて、賢い人だろうな。
ほわほわのウェーブのかかった、柔らかな体を持った可憐な女の子をルミナスの横に置く。2人の影が重なって、ぎしっと寝台を揺らすーー。
「……様。ジュリ……様」
2人が手を取り合って、子をもうけて、幸せそうに…。
「ジュリアス様!」
「…ルミナス」
「…あの、ジュリアス様。申し訳ありません…。私があなたに、気に食わないことをしてしまって…直しますから、どうか」
いつの間に部屋に入ってきていたんだろう。ルミナスはしおらしい態度で、オレの機嫌を伺いながら謝罪をしてる。その顔は焦燥しきっていて、演技っぽいところは一切ない。痛ましい、悲しい顔だ。こんな顔させたいわけじゃないのに。笑ってて欲しいのに。
「ルミナス。黙って。わかってないのに謝らないで。」
「あ、すみませ…」
「何度も同じことを言わせないでルミナス。オレたちはなんにも話してないじゃないか。オレがどうして怒ってるのかを聞いてくれ。ルミナスが何でこんなことをしたのか、ちゃんと教えてくれ。」
「ジュリアス様…。」
ルミナスがパァっと顔色を明るくする。まだ許すとも言ってないのに…お気楽な性格だなと少し呆れる。
「勘違いしないで。婚約破棄するかしないかは話し合いの結果次第だ。ルミナス・ヘイストス公爵」
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