こんこんさん

景綱

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ウソだ、ウソだ

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 カレンダーにつけられた赤いマル。
 かおちゃんは学校から帰るなりカレンダーをみつめた。気持ちが落ち着かなかった。

「キツネさん、パパ戻って来るよね。元気になって戻って来るよね」

 何も言わずにちょこんと座っているキツネさんのぬいぐるみ。それでもかおちゃんは話し続けた。

「今日だよね。あの赤いマルの日だよね。パパ、帰って来るよね」

 ダメだ。キツネさんのぬいぐるみに話しても答えてくれない。当たり前だけど。

「ママ、パパは今日帰って来るんでしょ」

 かおちゃんがママに訊いた瞬間、電話が鳴った。
 パパからかも。迎えに来てって電話かも。
 電話に出たママの横でワクワクしながら聞き耳を立てる。

「わ、わかりました。すぐに向かいます」

 あれ、どうしたんだろう。ママの顔がくらい。えっ、なに、なに。ママ、泣いているの。

「ママ」
「かおちゃん、すぐに病院に行くから準備して」

 準備って、このままでいいでしょ。

「かおちゃん、もう行けるよ。パパをむかえに行くんでしょ」

 ママはなぜか答えてくれなかった。
 なんだか変だ。
 悲しそうな顔をしている。なんで、どうして。パパに何かあったの。

「ママ、ねぇ、パパ帰ってくるんだよね」

 ママは涙を拭いて頷いた。

「そうね。パパ、帰って来るんだもんね」

 やっぱりおかしい。
 ママは病院に行く前にお兄ちゃんをむかえに小学校へ寄った。あれ、兄ちゃんも悲しい顔をしている。

「お兄ちゃん、どうしたの。なんでそんな顔をしているの」
「なんだ、かおちゃんは聞いていないのか」
「何を」
「パパの病気が悪化してあぶないんだって」

 あぶない。病気が悪化。え、どういうこと。

「なにそれ。わかんないよ」
「だから、パパが死にそうなんだよ」

 お兄ちゃんが泣き出してしまった。ウソだ、ウソだ。パパは元気になって帰って来るんだ。死にそうなんかじゃない。ママもお兄ちゃんもかおちゃんをだまそうとしているんだ。
 ウソだ、ウソだ、ウソだ。
 みんなウソつきだ。

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