こんこんさん

景綱

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なんで、こんなのおかしいよ

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 病院に着き病室へと入りかおちゃんはパパへと駆け寄った。

「パパ、起きて。おうちに帰ろう。ねぇ、パパ」

 パパからの返事はなかった。
 なんで、どうして。ここからじゃパパの横顔が少し見えるだけだ。こっち向いてよ。ママに目を向けると抱き上げてくれた。

「パパ」

 もう一度パパに呼びかけてみた。同じだった。まったく反応がない。

「パパ、起きてよ。また絵本読んでくれるんでしょ。パパ」

 お兄ちゃんが泣いている。ママも泣いている。
 パパは死んじゃうの。そんなのおかしいよ。パパは約束をやぶらない。絶対に元気になってまた『キツネのクッキー』を読んでくれるはず。キツネさんの形をした魔法のクッキーも焼いてくれるはず。

「パパ、パパ、パパ」
「かおちゃん、静かにね」
「だってママ、パパが起きてくれないんだもん」

 かおちゃんはパパのおでこをポンポンと叩いた。えっ、なんで。つめたい。パパのおでこがつめたい。パパ、凍っちゃったの。あっためてあげなきゃ。

「ママ、パパのおでこがつめたいの。おふとん持って来てもっとあっためてあげなきゃダメだよ。そうだ、かおちゃんがあっためてあげる。ベッドにおろして」

 ママは頭を振るだけでおろしてくれなかった。
 なんでパパ寒がりなのに。

「嫌だ、嫌だ。パパをあたためてあげるの」
「かおちゃん」

 ママはぎゅっとかおちゃんを抱きしめて泣きくずれてしまった。お兄ちゃんはパパを呼び続けてずっと泣いている。
 嫌だ、パパは元気になるの。死んだりしない。
 突然、激しい機械音が鳴り響く。何、何が起きたの。
 白衣を着たおじさんとおねえさんが病室へ入って来て何やら話している。変な機械も持ってきていた。なにしているの。パパになにしているの。パパの胸になにか押し当てている。パパをいじめないで。やめて、おねがい。
 しばらくすると白衣を着たおじさんがなにかをママに話して出ていった。

「かおちゃん、パパにお別れしないとね」

 泣きながらママはそう口にした。
 お別れ。なんで、どうして。

「嫌だ。パパとお別れなんてしない。元気になって帰って来るんだもん」
「かおちゃん。パパはね……」

 お兄ちゃんはベッドに眠るパパに抱きつき「パパ」と叫んでいた。
 かおちゃんはパパのつめたい手を取ると涙が次から次へとこぼれ落ちてきた。




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