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第一話 謎の鍵が示す先
【一】現実なのか、幻なのか
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右も左も前も後ろもどこを見ても闇しかない。もちろん、上も下も闇だ。
目に映るものは漆黒の闇だけ。光さえも呑み込んでしまう闇だ。
いったいどこへ来てしまったのだろう。
あの世だろうか。まさか、そんなはずはない。なら、ここはどこだろう。
手を伸ばしたところで、闇にその手が溶け込んでしまう。顔の前に手を翳して見たところで結果は同じだった。果たしてここに自分は存在しているのだろうか。そう思ってしまうくらい深い闇だ。
真の闇だ。
立っているだけで、方向感覚がおかしくなってくる。実は立っていないってこともあるのかもしれない。目を開いていることさえ疑わしくなってくる。
光のない世界とは、なんと心が騒めくのだろう。
心臓に糸を通して引っ張られているような気持ち悪さが襲い掛かってくる。
んっ、何か動いた。
見えていないはずなのに、そう感じた。誰かいる。気配を感じる。
高宮遼哉は動きを止め生唾を呑み込み、目だけ動かして様子を窺った。もちろん、目に映るのは漆黒の闇だけ。
視力を奪われるとはなんて恐ろしいものなのだろう。どうにも嫌な想像をしてしまう。何かとんでもない者がいるようで落ち着かない。
幽霊、妖怪、化け物の類がもしかしたら嘲笑っているかもしれない。実際には何もいないのに恐れているだけかもしれない。それでも、心は幻想に囚われる。
勇気を出して一歩踏み出してみようか。ふとそんな思いが湧き起こる。一歩だけだ。
足を前に踏み出そうとしてすぐに戻す。一歩先に奈落の底が待っていたらどうする。足元から風が吹き上げてきた気がした。気のせいだろうか。
もしかしたら、後ろ崖かもしれない。右も左も崖かもしれない。
ああ、もうダメだ。叫びたい。
んっ、何か聞こえなかったか。サッと背後を見遣り、肩を震わせた。
誰かがクックックと笑わなかったか。それだけじゃない。獣の唸り声もする。
自分の想像力をこれほど呪った日はない。ありもしない幻聴と幻覚が膨れ上がっていく。
ほら、そこに蠢く何者かが睨み付けてきている。音もなく近づいてくるじゃないか。
待て、待て。音もないのになぜ近づいているってわかる。おかしいじゃないか。
何かが光った。なんだ、白くて鋭いものが見える。もしかして牙か。そう思ったら牙にしか見えなくなった。
化け物でもいるのか。
殺されるのかも。
待て、そんなことがあってたまるか。
目の前にいる存在は、現実のものなのか。それとも幻か。探る術はない。いや、ある。近づけばいい。ただそれだけだ。簡単なことじゃないか。けど、足が竦む。
本当にそこに存在していたら、どうする。近づけば即アウトだ。
目を閉じて頭を振り、深呼吸をする。
再び眼前をみつめて、肩の力を抜く。
すべて幻だ。ほら、よく見てみろ。闇が広がっているだけじゃないか。誰もいやしない。
闇、闇、闇だ。
化け物なんていない。大丈夫だ。
本当にそうなのか。闇をグルッと見回して息を吐く。こんな状況で安心などできるはずがない。
考えてみろ。闇に何が潜んでいたしてもわからないんだぞ。それにもしも視力を失っていたとしたら、どうする。実はここは、陽の光ある場所で闇ではないとしたらどうする。
いや、そんなはずはない。
ごくりと生唾を呑み込む音が鼓膜を震わせる。
うわっ、出た。
眼前に突然灯る明かりが二つ。
火の玉が大きく揺れて、近づいていくる。ハッとして仰け反り、尻餅をつく。
そうじゃない。よく見ろ。あれは目だ。そう思った瞬間、一筋の光が天より差し込んできて徐々に明るさを増していく。まるでスポットライトみたいに降り注ぐ煌めく光だ。
その光の中央に現れた者は猫だった。灰色の猫だ。
猫が、猫が……。後ろ足だけで立っている。
目に映るものは漆黒の闇だけ。光さえも呑み込んでしまう闇だ。
いったいどこへ来てしまったのだろう。
あの世だろうか。まさか、そんなはずはない。なら、ここはどこだろう。
手を伸ばしたところで、闇にその手が溶け込んでしまう。顔の前に手を翳して見たところで結果は同じだった。果たしてここに自分は存在しているのだろうか。そう思ってしまうくらい深い闇だ。
真の闇だ。
立っているだけで、方向感覚がおかしくなってくる。実は立っていないってこともあるのかもしれない。目を開いていることさえ疑わしくなってくる。
光のない世界とは、なんと心が騒めくのだろう。
心臓に糸を通して引っ張られているような気持ち悪さが襲い掛かってくる。
んっ、何か動いた。
見えていないはずなのに、そう感じた。誰かいる。気配を感じる。
高宮遼哉は動きを止め生唾を呑み込み、目だけ動かして様子を窺った。もちろん、目に映るのは漆黒の闇だけ。
視力を奪われるとはなんて恐ろしいものなのだろう。どうにも嫌な想像をしてしまう。何かとんでもない者がいるようで落ち着かない。
幽霊、妖怪、化け物の類がもしかしたら嘲笑っているかもしれない。実際には何もいないのに恐れているだけかもしれない。それでも、心は幻想に囚われる。
勇気を出して一歩踏み出してみようか。ふとそんな思いが湧き起こる。一歩だけだ。
足を前に踏み出そうとしてすぐに戻す。一歩先に奈落の底が待っていたらどうする。足元から風が吹き上げてきた気がした。気のせいだろうか。
もしかしたら、後ろ崖かもしれない。右も左も崖かもしれない。
ああ、もうダメだ。叫びたい。
んっ、何か聞こえなかったか。サッと背後を見遣り、肩を震わせた。
誰かがクックックと笑わなかったか。それだけじゃない。獣の唸り声もする。
自分の想像力をこれほど呪った日はない。ありもしない幻聴と幻覚が膨れ上がっていく。
ほら、そこに蠢く何者かが睨み付けてきている。音もなく近づいてくるじゃないか。
待て、待て。音もないのになぜ近づいているってわかる。おかしいじゃないか。
何かが光った。なんだ、白くて鋭いものが見える。もしかして牙か。そう思ったら牙にしか見えなくなった。
化け物でもいるのか。
殺されるのかも。
待て、そんなことがあってたまるか。
目の前にいる存在は、現実のものなのか。それとも幻か。探る術はない。いや、ある。近づけばいい。ただそれだけだ。簡単なことじゃないか。けど、足が竦む。
本当にそこに存在していたら、どうする。近づけば即アウトだ。
目を閉じて頭を振り、深呼吸をする。
再び眼前をみつめて、肩の力を抜く。
すべて幻だ。ほら、よく見てみろ。闇が広がっているだけじゃないか。誰もいやしない。
闇、闇、闇だ。
化け物なんていない。大丈夫だ。
本当にそうなのか。闇をグルッと見回して息を吐く。こんな状況で安心などできるはずがない。
考えてみろ。闇に何が潜んでいたしてもわからないんだぞ。それにもしも視力を失っていたとしたら、どうする。実はここは、陽の光ある場所で闇ではないとしたらどうする。
いや、そんなはずはない。
ごくりと生唾を呑み込む音が鼓膜を震わせる。
うわっ、出た。
眼前に突然灯る明かりが二つ。
火の玉が大きく揺れて、近づいていくる。ハッとして仰け反り、尻餅をつく。
そうじゃない。よく見ろ。あれは目だ。そう思った瞬間、一筋の光が天より差し込んできて徐々に明るさを増していく。まるでスポットライトみたいに降り注ぐ煌めく光だ。
その光の中央に現れた者は猫だった。灰色の猫だ。
猫が、猫が……。後ろ足だけで立っている。
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