本の御魂が舞い降りる

景綱

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第一話 謎の鍵が示す先

【十三】地下室の存在

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 ガタガタ、ガタン。

 んっ、なんだ。ビクッと顔を上げてあたりを見回す。
 あれ、ここは。
 ああ、そうか源じぃの家だった。どうやら寝てしまったらしい。

 あっ、仕事。
 パソコンの画面に目を向けて、ホッと息を吐く。
 五時十二分にメール送信済みになっている。
 そうそう、きっちり仕事を終えて寝たんだった。

 源じぃの原稿はすべてデータ化して両親の出版社へ送られている。父からの『お疲れ様』とのメールも届いていた。

 そういえば、さっきの物音はなんだったのだろう。
 あたりを見回すかぎり崩れているものはなさそうだ。暖房の暖かい風が吹き出す音が微かに聞こえるだけだ。そう思ったとき、窓ガラスがガタガタと揺れた。

 なるほど、そういうことか。
 どうやら風が強いらしい。時折風の唸り声も耳に届く。

 目が覚めたことだし、朝飯にするか。待てよ、何か冷蔵庫にあっただろうか。どう考えも冷蔵庫に食材はない。昨日引っ越してきて、買い物はしていない。したっけか。どっちだったろう。そんなことも忘れるなんて。脳みそが腐っちまったか。
 買いに行ってないよな。
 まったく、なに寝ぼけているんだか。

 とにかく何か腹に詰め込もう。何があったっけ。
 空腹に珈琲を飲むのは、気が進まない。ココアだったらいいか。いやいや、飲み物よりも食べ物だ。
 何か買いに行くしかないか。

 八時ちょっと過ぎか。まだスーパーはやっていない。この辺にコンビニってあっただろうか。どうしたものか。
 行きたくないなと外を眺めた。

 悲鳴のような風の唸り声が耳をつく。外は絶対に寒い。
 どうしようか。腹が空いてどうしようもない。目の前にコンビニでもあればいいのに。そう思ったらアツアツの肉まんが頭に浮かび、口の中に唾液だえきが溢れ出す。
 これは意地でもコンビニに行くしかない。寒さがなんだ。
 気合いだ。気合で寒さを乗り越えろ。

 まずは、コンビニの場所だとスマホを手に取り検索をする。一番近くにあるコンビニは、ここから五分くらいか。

 あれ、LINEが一件入っている。小海からだ。
 LINEのアドレス交換していたっけ。ちょっと考えて、首を傾げる。おそらく両親経由で辿り着いたのだろう。そういうことにしておこう。
 えっと、なになに。

『お婆ちゃん、知っていたよ。地下室の鍵だって。昔、小説を共同で書いていたときにそこで書いていたみたいよ』

 地下室の鍵。そうなのか。
 LINEはまだ続きがあった。

『けど、そんな地下室あったっけ。また学校帰りに寄るからそのとき話そう』

 また来るのか。
 小海も意外と暇なのか。そう思いつつ、自然と笑みが浮かんだ。

 それはそうと、地下室ってどういうことだろう。小海が言う通り、地下室なんてないはずだ。
 昨日、隈なく探した。地下室に繋がりそうな扉はない。隠し扉とかか。床をみつめて再び首を傾げた。

 リフォームしたときに、地下室はなくしてしまったのだろうか。
 そうだとしたら、源じぃが鍵を渡す必要はないか。ならば地下室はどこかにあるはずだ。いったいどこに。わからない。考えても答えは出てきそうにない。

 そう思ったところで腹の虫が鳴り、思わず笑ってしまった。
 今は、腹を満たさないと。糖分摂取すれば、きっと頭の回転も早まるだろう。
 遼哉はダウンジャケットを羽織って、財布だけ持つと玄関扉を開けた。

 うっ、顔が痛い。
 行くのやめようか。ダメだ。空腹のほうが耐えられない。

『ガンバレ、自分。ほら早く行け』と気合を入れた。

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