本の御魂が舞い降りる

景綱

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幕間三

本の御魂三人衆の箸休め・みたび

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「樹実渡、私たちのコーナーよ。出番よ」

 火乃花か。相変わらず、騒がしいな。今は箸休めのコーナーよりも目の前のかつおの刺身だ。

「もう、いるなら返事くらいしてよね。って何を食べているのよ」
「鰹だよ。新鮮な初鰹さ」
「美味しそう」
「そうだろう」
「ええ。ってそうじゃなくて。箸休めのコーナーよ。みんな私たちのこのコーナー楽しみにしているのよ」
「そうかな。楽しんでいるのは、おいらたちのほうだろう」
「あはは、そうかも」
「まあいいか。今日、流瀧は宝文堂で忙しくしているから二人でやろう」

 えっと、何をしようか。まったく考えていなかった。
 ふと視線を感じて振り返るとグレンがじっと鰹の刺身をみつめていた。

「グレンはさっき食べただろう」
「ニャ」

 もっと食べたいのか。けど、遼哉にも残しておかなきゃいけないからな。

「グレン、遼哉の分だからダメだぞ」

 そう告げるとグレンは日当たりのよい窓辺に行って丸まってしまった。

「グレン、不貞腐ふてくされちゃったんじゃないの」
「違うよ。わかってくれたんだよ」
「あっ、そうそう話は変わるけど、宝文堂が復活してよかったわよね」
「そうだな。宝文堂の本たち喜んでいたな。めでたし、めでたしだ」
「ところで第四話ってあるのかな」
「さあ、どうだろう。もしかしたら、これで終わりかもしれないよ」
「ええ、ヤダ、ヤダ、ヤダ。もっともっと私たちのこと知ってほしいもの」

 確かに。もっと活躍したい。グレンとのコンビも良い感じだし。

「じゃ、祈ろう」
「そんなんじゃダメ。私の炎で脅して続きを書かせるんだから」
「ええ、そんなことしちゃダメだよ。やるんなら、美味しいご馳走でもてなして書かせようよ」
「それいいね」

 火乃花の奴、満面の笑みで踊り出しちゃって。なんだか楽しそうだな。

「待て、待て。今は箸休めのコーナーやるんじゃなかったのか」

 火乃花は頭を掻き、ペロッと舌を出す。
 仕方がない奴だ。

「それじゃ、コーナーはじめよう。でも、何を話すの」

 小首を傾げて火乃花は考え込んでしまった。
 うーん、何を話したらいいのか。

 鰹の話でもするか。いや、これといった話は思いつかない。火乃花も難しい顔をしている。別に鰹じゃなくたっていいか。

『なめろう』がいいか。

「ねぇ、私はいいお話が思いつかない。また浦島太郎の話をするのもなんだしね」
「おいらがちょっとした料理を話すよ。なめろうって知っているか」
「知らない。あとは樹実渡に任せるわ。私はグレンと遊んでいるから」

 なんだよ、火乃花がこのコーナーやろうって言ってきたんじゃないのかよ。

「ニャニャ」
「なんだ、グレン。急に起き出してどうした」
「ニャ―ニャニャ」

 んっ、まさかグレンが箸休めのコーナーをやるって言うんじゃ。

「えっ、なに」
「ニャッニャッ」

 違うのか。コーナーやりたいんじゃないのか。グレンの視線が背後に向いている。
 サッと振り返ると、そこにいたのは源蔵だった。

「久しぶり」
「おお、源蔵だ。今、遼哉を呼ぶ。会いたがっていたからな」
「いやいや、あまり時間がないから呼ぶ必要はない。これを渡してくれればいい」

 手紙か、これ。

「源蔵。あっ」

 源蔵は笑みを浮かべて手を振って消えてしまった。
 行ってしまったか。

 いったい何が書いているんだろう。
 樹実渡は封をあけて読み「大変だ。遼哉、遼哉」と大声をあげて遼哉の部屋へと駆け出した。

「どうしたのかしら。箸休めのコーナーは中止なの。なめろうって何よ」

 樹実渡は足を止めて「火乃花も来い。箸休めのコーナーどころじゃない」と手招きして遼哉の部屋に飛び込んだ。

「まったく、うるさいんだから。何が来いよ。なめろうって何よ。気になるじゃない。あれ、こんなところにお菓子が。えっと、なによこれ、『まずい棒』だって。こんなの売れるの」
「火乃花、聞こえているぞ。なめろうもまずい棒もあとだ。早く来いって」
「もう、なによ。それじゃ、まずい棒だけでも教えてよ」
「しょうがないな。えっと、確か千葉県の銚子市にある鉄道会社が売り出したやつだな。経営悪化してまずい状況だから、『まずい棒』だってさ。遼哉の奴、少しでも助けてやろうって買ったみたいだけど。それ以外にもいろいろと売っているみたいだぞ」
「ふーん、そうなんだ」
「銚子に行けば買えるぞ。行かなくてもネットで買えたっけかな」
「ふーん」

 なんだ、あまり興味なさそうだな。まあいいか。あっ、そうじゃなくて大変だった。

「遼哉、大変だ、大変だ」


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