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第四話 消えた挿絵
【一】源蔵の手紙
しおりを挟む「大変だ。遼哉、これを読んでくれ。源蔵からの手紙だ」
「源じぃから」
遼哉はパソコンから目を離して手紙を受け取った。
『突然、すまない。
時間がないので、用件だけ記しておく。
港町にある文港堂書店に急いでくれ。本の挿絵として描かれていた妖怪が消えたらしい。
詳しくは文港堂書店の佐久間店主から聞いてくれ。
佐久間とは親しくしていたから私の名前を言えば、きっと問題ない。
頼んだぞ
源蔵』
なんだこれは。いきなりそんなことを言われても港町の文港堂書店ってどこだ。挿絵の妖怪ってなんだ。何、現実離れしたこと言っているのだろう。
ありえない。
そう思った瞬間、樹実渡に目を向けて首を振る。不思議は存在する。ありえないと言えない。だとしても、挿絵が消えたからってなんだって言うんだろう。
遼哉は黙考して、息を吐く。源じぃが言うのだから、きっと何かある。
そもそも源じぃはなんでそんなことを知っている。
「樹実渡、これどういうことだ。この書店がどこにあるのか知っているか。なんで、源じぃがこんなこと」
「さあな。おいらにはわからない」
「それじゃ、どうにもできないじゃないか」
んっ、なんだ。
グレンが何かを銜えて、じっとみつめている。
「それはなんだ」
それも手紙か。手に取り確認すると、源じぃに来た手紙だった。
「あっ、それ」
突然の樹実渡の大声で、ビクッとしてしまった。
「なんだ、急に。びっくりさせるな」
「ごめん」
「で、知っているのか」
「こないだ届いたんだ。源蔵はもういないっていうのになって思っていて忘れていた」
「早く言えよな、樹実渡」
「けど、忙しかったからさ。宝文堂のことで」
そうか、宝文堂の復活を願って頑張っていたときに届いたのか。それなら仕方がないか。
源じぃ宛ての手紙は、源じぃに相談を持ち掛けるものだった。
なるほど、源じぃはこの手紙を読んだってことか。けど、いつ。まったく、あの世からここに来ているのなら顔を見せてくれてもいいのに。
今考えても仕方がないか。
よくわからないが、怪異が起きているってことか。本の挿絵が消えるって。心霊現象なのか。なんか寒気が。遼哉はあたりに目を向けて身を固くさせた。
源じぃの幽霊は怖くないのに、おかしなものだ
ちょっと待てよ。
源じぃにそんな事態を解決する術があるのか。
そうか。そういうことか。
樹実渡が目に映りなんとなく納得した。樹実渡が普通に話したり動いたりしていること自体が怪異だ。きっとそんな話をしたことがあるのだろう。
佐久間と言ったか。もしかしたら、源じぃは霊的なものに精通していると勘違いしているのかもしれない。
再び、樹実渡に目を遣り想像した。
御魂三人衆の力があれば、なんとかなるだろうか。
解決出来るかはわからないが、行ってみるか。
その前に、仕事はどうする。
あっ、いいこと思いついた。取材ということにしてしまおう。
まずは父に相談だ。
まるっきり嘘ではない。この件は、絶対に参考になる。『本の御魂』の続編に書ける内容になるはずだ。それなら、きっと了承してくれるだろう。
住所も名前も手紙にある。源じぃのためにも、自分のためにも行くしかない。
文港堂書店か。
行く前に電話でもしてみるか。ネットで調べれば電話番号はわかるだろう。
「なぁ、行くのか。行くんだろう。なら、おいらも一緒に行くぞ」
「ニャニャ」
「樹実渡もグレンも行くって言うのか」
「私も行く」
「えっ、火乃花。なんだ来ていたのか」
「なんだはないでしょ。もう、来てくれて嬉しいとかないわけ」
火乃花の言葉につい頬が緩んだ。
連れて行ったほうがいいだろうか。樹実渡と火乃花を連れて行くとなったら流瀧も一緒に連れて行くべきだろう。グレンはどうするか。宝文堂のほうも考えないといけない。本の御魂三人衆が誰か一人でもいたほうがいい。いや、猫だけでも大丈夫か。白猫と茶トラ猫に任せるか。ちょっと心配ではあるけど、どうしようか。
仕事も含めてなんとか調整しよう。
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