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第四話 消えた挿絵
【十一】あの世でなにが
しおりを挟む「なあ、遼哉。今回はおいらたち何もしていないけどいいのか。なんか美味しいもの食べに行っただけって気がして申し訳ないような」
「確かにそうだな」
樹実渡の言う通りだ。今回は風狸が頑張ってくれている。本から消えた謎はすぐに判明してしまったし、何もしていない。
まあ、そういうときがあってもいいんじゃないだろうか。
「ニャン」
「んっ、どうしたグレン」
「源蔵が来たって言っているぞ」
「えっ、源じぃが来たのか」
どこだ、どこにいる。あたりを見回したが見当たらない。
「源蔵の部屋にいるってさ」
グレンはチラッとこっちを見遣ると、軽快な足取りで遼哉の部屋を出ていった。
樹実渡も慌てて駆け出すとグレンの背中に飛び乗った。
遼哉もすぐに立ち上がるとグレンの揺れる尻尾を見つつ、すぐに後追う。
源蔵の部屋の扉を開くと、手をあげて「おっ、遼哉来たな」と笑みを浮かべていた。
「源じぃ」
懐かしい笑顔に目頭が熱くなった。
「どうした、泣く奴があるか。まったく涙もろい奴だ」
そう言いながらも源じぃは優しく抱きしめてくれた。幽霊なのにぬくもりを感じる。
「また会えてうれしいよ」
「そうだな」
「涙の再会っていいもんだな。見ていたら、腹が減ってきた」
「なんだそれは。樹実渡の食いしん坊」
「相変わらずだな、樹実渡は」
高らかに笑う源じぃにつられるように笑ってしまった。樹実渡も頭を掻きながら笑い声をあげている。
「おっと、忘れるところだった。本の御魂三人衆に手伝ってもらいたいことがあって来たんだった」
「えっ、何かあったのか。簡単レシピでも知りたくなったか」
「樹実渡、そうではない。凛子のことだ」
凛子のことって。何かトラブルでも起こったのだろうか。源じぃが来るくらいだらか、きっとそうだ。
「まさか、生まれ変われなくなったとかじゃないだろう」
「うむ、それは大丈夫だとは思う。だが、ルール違反だと順番待ちしろと言われているらしくてな」
ルール違反。順番待ち。
長蛇の列の幽霊か。
遼哉は想像して苦笑いを浮かべた。
風狸はその列を無視してすぐに生まれ変わらせようとしていたらしい。あの世にもいろいろな取り決めがあるのだろう。これは風狸が悪いのか。きっとそうなのかもしれない。
「そこでおまえたちに人肌脱いでもらおうかと」
源じぃは続けて話して樹実渡を見た。
「おいらたちに何が出来るんだ。あっちの世界の決め事をどうにかできる力はないぞ」
「まあ、それはわかっている。がしかし、世の中特例というものがある。あの世にももちろんあるはずだ」
「それはわかるけどさ、おいらたちに出来ることがあるのか」
「ああ、あるとも」
本当に本の御魂三人衆に出来ることがあるのだろうか。特例として認めてもらうことは至難の業のように思えるけど。
「とにかく、火乃花と流瀧を呼ばなきゃいけないよな」
源じぃは何度も頷いていた。
「あの世でのことだからな。今回は遼哉と小海に頼むわけにはいかないからな。樹実渡、頑張ってくれよ」
「なんだ源蔵も手伝ってくれるんだろう」
「もちろんだとも」
「よし、そうと決まれば早速火乃花と流瀧を呼んでくるぞ。グレン頼む」
樹実渡はグレンを呼ぶと背に跨り玄関からではなく器用に窓を開けて飛び出していった。
「源じぃ、うまくいくかな」
「わからん。けど、やってみるしかない」
「策はあるんだろう」
「うーん、ない」
「ないって、嘘だろう」
「まあ、あいつらがうまくやってくれるだろう」
本当にそれで大丈夫なのか。凛子はうまく生まれ変わって来られるのか。違反だと取り消されたりしないのか。それなら、順番待ちして。いや、そうだとすると凛子の生まれ変わりとは会うことはできないのか。
風狸はすぐにでも生まれ変わらせたいはずだ。葵に合わせてあげたいはずだ。
果たして、どうなることやら。
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