【完結】死ぬことが許されない未来社会。仮の肉体を継いでなお生きる理由はあるのだろうか? ~プシュケの彼方~

上杉

文字の大きさ
55 / 59
9章 再

3 本当のふたりで ※

しおりを挟む

 唇を合わせ、舌を絡ませながら、千逸は快楽から逃れられないように、霧島の頭を優しく手で抱えた。
 口内を犯される感覚に霧島が気を取られている間に、もう片方の手は優しく服の下へと入っていく。そして上も下も器用に脱がしながら、あらわになった白い肌へそっと触れた。

「あっ――」

 その手の感覚を知っていたはずなのに、その触れ方はいままで以上に繊細で、自然と声が漏れてしまう。
 不意に霧島は思った。
 千逸はこれまで、きっと霧島のからだに負担がないようにと考えつつ、自分の欲を押さえるのに必死だったのだろう。いま思えば、どこかこわごわとした手つきで、直接快感を感じやすいところを触れていたような気がした。
 一方で、いまのからだへの触り方はそれとはまったく異なった。
 指はいまだ霧島の肌のうえをなめらかに動いていたし、それは霧島の反応を追いかけるように絶えず動き回った。そうして霧島がからだを震わせるたび、そこを二度三度とさまざまな力加減で触れていく。
 その、これまで以上にたっぷりとした愛撫の時間は、霧島とのこの時間を大切にしているように思えた。
 不意に、背のぞわりとするところを撫でられ、

「……あ……うぁっ」

 と大きな声が漏れてしまう。するとなぜか突然千逸はその手を止めてしまった。
 霧島はどうしたのかと思い、身体を震わせながら見上げると、なぜか彼は考えごとを始めたようにみえた。

「…………千逸?」

「そういえば、先輩はずっとSR155系統なんですよね」

「ああ。そうだけど……」

「この素体は、先輩からサンプリングした遺伝子をもとに一番最初に発注したものだから……おそらく感じ方もそのままなんでしょうね」

 目を細めながら言う千逸を前に、霧島は思い出す。

「……そういえば、むかつく機械知性に凡人の皮って言われたな」

「ははは。まったく、彼らは数値しか見ませんからね。先輩の素晴らしさはわからないんですよ」

 そう呆れた様子で笑いながら、不意に霧島の腰を撫でる。

「――っ……」

「ふふっ。先輩のオリジナルのからだもこんなに感度がよかったと思うと、少し妬けますね」

 そう言って千逸は霧島の背に口付けをはじめたので、ふと疑問に思い聞いてみる。

「……………誰に?」

 するとなぜか千逸はしばらく沈黙したあと、静かに口を開いた。

「先輩……まさか、童貞のまま交換しちゃったんですか?」

「え、だって意味なかったし……別にお前だって一世代目は童貞だっただろ」

 霧島がそう答えると、千逸は下を向いて大きなため息をついた。

「まあ、確かに生殖としては意味をなしませんでしたが……そういうところ、先輩は相変わらずですね」

 ――絶対に馬鹿にしている。

 霧島がそう思っていると、千逸は何かに気づいたような表情をした。

「……そういえば『とこよ』でぴんときたのも、そんなことを言っていたからだった気がします」

「なら、よかったじゃないか。俺だと気付けたんだろ?」

「……まあ、そういえばそうですね。それに……俺だけが先輩の身体を感じさせて開発していると思うと、実際嬉しいですし」

 そう言いながら顔を近づけてくる千逸に、霧島はぴしゃりと言う。

「でも、お前は俺だけじゃないんだろう?」

「………………それは、その……どうしようもなかったというか……」

 突然自信なさげに声が小さくなった千逸は、まるであの頃の空山のようにみえた。

「俺は、ずっと先輩に会うことを諦めていたんです。もちろんどこかで探してはいましたけど。ただ、顔からだが変わってしまうこの世界では、探し続けることは難しかった。だから、空いた心の隙間を埋めるために、先輩と同じ素体を使っていたひとに声をかけて、求められるままにしていました。まあ……全然違ったんですけどね」

 そう語る千逸を見ていると、胸の奥がじり、と傷んだ気がした。

 ――俺だけに見せる顔をさせたい。 

 霧島は反射的に千逸の下腹部へ手を伸ばすと、大きく張りあがったそこから彼自身を取り出した。

「――先輩!……っ」

 そうしてぶるんとそそり立つ太いものを自分の口に含んだ。
 熱い肉棒は想像以上に硬く大きく、霧島は歯があたらないように必死に口をすぼめ、口内の柔らかいところで包みこむように覆った。
 そして千逸の手のひらが自分に触れる感覚を思い浮かべながら、陰茎を口内で上下し愛しはじめた。

「――っ……先輩……」

 動くたび千逸の足の筋肉は、それに呼応するようにぴくりと反応をみせた。
 余裕の出てきた霧島が不意に顔を上げると、千逸は快感をこらえるように顔をしかめ、目を閉じていた。その反応は霧島にとって新鮮だった。

 ――もっと喜ばせたい。

 そう思い上下する動きを早めながら、単調にならないよう、自分が好きな裏筋を口のなかで舐めあげるように舌を動かしてみた。

「先……輩っ……なんでそんなに上手いんですか」

 想像通りの反応に、霧島はにやりとする。

「それは……俺も男だし。お前も反応よすぎじゃないか?」

 そう言って鬼頭の裏を舌で舐めると、千逸は悶絶し同時にものもどくんと脈打った。

「そこは……ずるいです」

「ははは。お前が空山とわかれば、もう前みたいにお前にばかりさせないからな」

「……っ……それは燃えますね」

 千逸はそう目を尖らせると、突然自分の指を舐めはじめた。
 それに霧島が気づいたときには、千逸はからだを起こしてその手を霧島の尻に伸ばすと、秘穴を広げはじめたのだった。

「ふっ……あぁ」

「先輩。……先輩こそ、期待しちゃってるじゃないですか。俺の足に垂れてるのは、何ですか?」

 霧島はそう言われようやく気づいた。
 自身の剝き出しの肉棒は、いまだ直接触れていないにもかかわらず、透明な液を流し糸を引いているではないか。それは千逸の足にだらりと垂れ、月光にちらちらと輝いていた。

「っ……お前のだろ」

「先輩のですよ。……それに、穴も指をきゅうきゅう締め付けてます」

「ふっ……あぁっ…………お前っ……ねちっこいぞ」

 千逸のなかに入り込んだ千逸の指は、気持ちいいところを掠めては去っていく。その快楽をからだが自然と追ってしまうのは、自分ではどうすることもできなかった。
 快感に翻弄され、千逸を愛撫する口の動きも止まってしまう。
 その瞬間、千逸のもう片方の手は霧島そのものに伸び、上下に動き始めた。

「……くそ」

 千逸と向かい合ったまま、前も後ろも翻弄されてしまう。

「ふふふ。先輩、そろそろ欲しいんじゃないですか?」

 目の前で意地悪そうに、にやりと笑みを浮かべる千逸に霧島は思わず言ってしまう。

「千逸、お前…………そっちが素だろ」

「え?何かいいましたか?」

 千逸は変わらずに手を動かし続けたものの、その中途半端に与えられる快楽に、霧島はもう耐えられなかった。

 ――はやく、はやく入れてくれ。

 穴の奥が彼そのものを求めていた。
 霧島は千逸の手首を握ると、涙にうるませた目を向け口を開く。

「わかってるなら……はやく入れてくれ」

「はい先輩。仰せのままに」

 その笑顔を見た瞬間、霧島は優しく後ろに倒された。
 両足を投げ出し、くぷりと広がった秘孔と反り上がった肉棒を千逸に見せつけるようで、すこしだけ恥ずかしくなる。
 いわゆる正常位となり、千逸のからだは上から覆い被さり、入口に熱いものが触れた。そう思った瞬間、それは肉をめくり上げるようにずぶりとなかに入った。
 ゆっくりと、なかを広げるように押し入る千逸自身を感じながら、霧島はうめく。

「……お前……こんなに大きかったか?」

「そういえば、昔の俺のものを見たことはなかったですよね?」

 千逸は耳元で囁くように言った。

「――ちなみに、ここは調整していないので当時のままです。先輩に気に入ってもらえているようで……嬉しいです」

 そう言うと、勢いよく腰を打ち付けはじめた。
 そのいいところを直接刺激する快感に、霧島は悶絶する。

「はあっ……んんっ……あっ」

 千逸の肉棒が突き上げるたび、腹の奥からぐわりと快楽がこみ上げた。
 また千逸のからだが揺れるたび霧島自身も擦られて、その外と内からの強い刺激に悶えるしかできない。
 その様子に千逸は気づいたようで、腰を動かしながらも霧島の両腿の裏を掴むようにからだを起こし、見下ろしながらにやり笑う。

「ふふふ。わかりやすいですね」

 そう言うと、なんと直接霧島の棒を触りはじめたではないか。

「さ、触るな!……ああっ」

 それは、すでに先端から溢れた透明な液体でどろどろになっており、千逸のてのひらの暖かさも相まって、霧島はもはや自分を抑えられなくなった。
 腰は浮き、肉棒は熱を吐き出そうと、自然に千逸の手を求めこすりつけてしまう。
 その動きを追うように千逸は腰を動かし、霧島はもう耐えられない。

「あっ……ああぁ…………いく」

 先端から白いものがどぷりどぷりと噴き上がり、霧島の腹に小さな水たまりを作った。
 千逸はそれを優しい眼差しで見守ったあとで、顔に汗を浮かべながら再度霧島に覆いかぶさり、

「……先輩」

 そう小さく言って霧島のなかに自身の熱を吐き出した。
 しっとりと濡れ、上下する千逸のひんやりとする背中に腕を回しながら、霧島はひとりこころのなかで誓った。
 記憶も、千逸も。もう絶対に自ら離しはしない、と。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した

あと
BL
「また物が置かれてる!」 最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…? ⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。 攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。 ちょっと怖い場面が含まれています。 ミステリー要素があります。 一応ハピエンです。 主人公:七瀬明 幼馴染:月城颯 ストーカー:不明 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。  そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。   最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m

処理中です...