指輪の送り主は……

華愁

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終話 比呂志の舞台俳優デビュー

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あの日、比較呂に論破された虎雄先生と文は帰って行った。

あれから十五年、僕の右手の薬指にはあのアクアマリンの指輪が嵌まっている。

今日は僕が書いた脚本で比呂志の舞台俳優デビューの日。

題名は「薄氷をすれすれで歩く者」。

帝国劇場ので主演を勝ち取った比呂志。

「“正しさ”で死ぬより“間違い”でも生きている方がいい」

あの日の比呂志本人の言葉をあえて使った。

「“正しさ”とは誰の基準なんだい? “世間”? そんな曖昧なもののために
この愛を引き裂き、僕を薄着で吹雪の中へ放り出すのか……」

悲しみと絶望が入り交じった声色と表情で比呂志は演じている。

「この“間違った”愛こそが、この指輪が、僕を現世に繋ぎ止める鎖であり、鍵だというのに……

いいだろう、君たちがこの鎖を無理やり千切り、鍵を奪うというのはなら、僕はこの薄氷を割り、冷たい海へ飛び込もうじゃないか。

だが、覚えておくといい、その“正義”という名の暴力が僕を殺したことを」

幕が降り劇場内は割れんばかりの拍手に包まれた。

僕たちは楽屋裏に回り、比呂志が出てくるのを待ち、三人で精養軒に向かった。

指輪の贈り主は僕の魂の半分を持つ者だ。
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