真実は目の前に

華愁

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第十一話▽来客は伝説の副総長と雪花の元姫

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柚紀さんと瑠花さんが
雨竜の倉庫に来ることになったのは
あの日から一週間後だった。

『皆さんにお伝えすることがあるんです』

先に倉庫に来ていた
あたしと侑君。

「どうした侑司?」

礼君にも言ってなかったのか。

『もう少ししたらお客さんが来ます』

柚紀さんには特攻服を
着て来てもらうように頼んである。

「客?

それは、俺達に下にいるよに
言ったことと関係あるのか?」

紬はいい勘してる。

『えぇ、関係あります』

話していると
倉庫の外でバイクが止まる音がした。

「侑司・茉緒、来たわよ」

柚紀さんが外から声をかけてきた。

『早かったですね。
母さん・瑠花さんいらっしゃい』

倉庫のシャッターを上げ
二人を中に入れた。

『一週間ぶりです。

柚紀さん、着て来てくれたんですね』

あの日と同じ特攻服を
来ている柚紀さんは
本当に侑君の母親なのかと
思う程、キレで若々しい。

「茉緒さんと話しているのが
私の母で【白雪】の
二代目副総長です。

そして、隣にいらっしゃるのが
由々波の母で
【雪花】の元姫です」

サラッと爆弾を投下した侑君。

「はぁぁ!?」

普段、無口に近い礼君が叫んだ。

「伝説の副総長と雪花の元姫!?」

倉庫の中に緊張した空気が流れた。

「侑司から紹介があった
【白雪】の二代目副総長の
天城柚紀祢です」

「柚紀と同じく侑司君から
紹介してもらった
【雪花】の元姫の瑞原瑠花です」    

流石大人、この空気を
ものともせず、ニコニコと挨拶をしている。

「そう言えば、茉緒が
雨竜の姫になった経緯を
きいてなかったわね。

雪花の元姫だったのに何で?」

それは、闇の狂言で追い出されたから。

『その説明は私がさせて頂きます』

侑君……

『大丈夫だよ』

あいつらの仲間だったとか
瑠花さんには悪いけど
人生の汚点だ。

『しかし……』

きっと、あの時みたいに
あたしが泣いてしまうと
思っているんだろう。

今だからこそ
気にしちゃいないと思える。

目配せだけで伝わったんだろう。

『わかりました、
ではご本人からということで。

それから、お二人のことも
説明して差し上げてください』

そして、あたしは二人に説明した。

*現姫の狂言で追い出されたこと。

*学校をサボったら礼君に拾われ
雨竜の倉庫に連れてこられ
皆があたしを信じてくれたこと。

*泣いてしまったこと。

此処までが姫になった経緯。


*その現姫が雷鳥の姫であること。

*現姫の正体をバラしに行ったら
あたしの味方だった
琢海と泉までも追い出されたこと。

こっちが二人のこと。

説明し終わると案の定、
瑠花さんの眉間にシワが寄った。

「雪花の現総長や他の幹部は
茉緒を疑って
追い出したってことよね……克也は?」

『残念ながら茉緒さん達の担任は
雪花贔屓で現姫派で
茉緒さんを嫌ってます』

侑君の言葉にますます
眉間のシワが深くなった。

『理事長は味方ですけど』

闇みたいなのは嫌いって言ってたな。

「へぇ~そう」

瑠花さんからどす黒いオーラが(焦/汗)

すると、何処かに電話し始めた。

「《騎羅、今すぐ克也を
連れて雨竜の倉庫に来な‼》」

電話の相手は理事長みたいだ。

**数十分後**

「瑠花、何で此所にいる?」

担任が来た。

ある意味敵陣だよな。

「本当馬鹿‼

あんたが担任してる
瑞原由々波はわたしの子だし
雨竜の副総長の
侑司君は柚紀祢の子だよ‼
苗字で気づけ馬鹿」 

担任に二回馬鹿と言った瑠花さんは
少し呆け気味の担任を
容赦なく蹴り飛ばした。

「まぁ、気付かなかったことより
あんたは今の現姫派だってねぇ?

三人の話しも聞かずに
追い出すとはどういうわけ?」

あたし達のために怒ってくれるんだ。

正直、あたし達三人は
今更雪花に未練はない。

雨竜にいることが
何よりの幸せだから。

『瑠花さん、
あたし達は大丈夫ですから
担任を許してあげてください』

どうせ、授業はサボってる。

「駄目よ茉緒、
何が真実で何が嘘か
見抜けないなんて
この先、同じことが起きたら
また繰り返されるのよ?

ましてや、教師が一部の人間の
言うことだけを信じるなんて
一番やったら駄目なことよ」

この先、あたし以外の誰かが
傷付く可能性を秘めてるということか。

それは嫌だなぁ。

だけど……

『まぁ、そこは担任が今後
間違えなければいい話ですよ』

仮にも大人で教師なんだから。

因みに理事長は
柚紀さんの隣で傍観している。

「久しぶりに瑠花の
蹴り見たけど
あの頃と変わらないわね」

「まぁ、克也が悪いから
俺は助ける気はないし
柚紀もだろう?」

二人の会話が耳に入ってきた。

「まぁねぇ……

騎羅くんまで雪花側だったら
わたしは容赦なく騎羅くんを
ぶん殴ってたわね」

柚紀さん!?

「なら、こっち側でよかった。

柚紀に殴られるのだけは
遠慮したいからな(苦笑)」

あっ‼

理事長も柚紀さんのこと
好きだったのかも。

柚紀さんを見る目が優しい。

雨竜の倉庫で
突然始まった瑠花さんと
担任の喧嘩? が終結した。

担任はやられっぱなしだったな(苦笑)

「なぁ華表」

柚紀さんと話していたと
思っていた理事長に呼ばれた。

『何ですか?』

「多分、
どうでもいいだろうけど
真一の怪我、全治五ヶ月だってさ」

それは御愁傷様。

あの時の侑君は
相当キレてたから
礼君とあたしが止めなきゃ
半殺しにしてただろうな(苦笑)

「騎羅、どういうことだ‼

誰にやられたんだ⁉」

復活したらしい担任が
理事長に詰め寄る。

「そのままの意味だ……」

やった犯人を知っているのは
あたし・礼君・泉・理事長。

そして当人である侑君本人。

『すみませんね。

彼をやったのは私ですよ(ニヤリ)』

ありゃりゃ、白状しちゃったよ(笑)

「なっ⁉

何でそこまでした⁉」

その理由は
理事長には言ったよな。

『姫を仲間を愛する人を
侮辱されて黙ってられる程
私は大人ではありませんのでね』

一旦、そこで言葉を切ると
侑君は私に言っていいかと
目配せで聞いてきた。

いいよと合図した。

『そもそもの原因は
そちらの現総長さん達が
茉緒さんを拉致ったことですよ。

しまいには茉緒さんを
犯したかったなんて言ったそうです(怒)』

キレかけているけど
理事長がいるから抑えている。

「幸歩と蓮陏は華表がやったんだよな」

あの日、理事長室で
そう報告したからね。

担任は理事長の言葉に
またもや驚いている。

『そうですよ(ニヤリ)

雨竜の皆のおかげで
強くなれましたよ』

喧嘩も精神的にもね。

『あの二人は
全治二ヶ月ってとこじゃないですか?』

あたしの質問に理事長が頷いた。

「あいつらは自業自得だな。

今後一切、華表に近付かせないから
天城も雨竜の奴らも安心してくれ。

すまなかった」

理事長が私達に謝った。

この謝罪に笑っていたのは
柚紀さんと瑠花さん。

驚いたのは担任。

『今回は
茉緒さんも無事でしたし
終わったことですから(苦笑)

あの時は
少々我を忘れていましたので
私も謝罪させていただきます』

侑君が理事長に謝罪した。

『陸十、すみませんが
四人にお茶を出してくださいますか?』

「今、用意してるから待ってて」

キッチンの方から陸十の声がした。

用意ができたらしく、
トレイにあたし達の分まで乗せて来た。

『私達の分まですみません』

「白状すると
侑さん達の分はついでだよ」

ぁはは、陸十も素直だな。

『母さん達も
こちらに座ってください。

陸十の作る物は
何でも美味しいんですよ』

四人に構わず、
クッキーに手を伸ばした侑君。

あたしも料理はできるけど
めんどくさがりだから
気が向いた時しかしない。

「先生方もどうぞ」

中々手をつけない
大人四人に陸十が勧めた。

「頂くとしよう」

理事長がスコーンを手に取った。

「美味いな」

一口かじって感想を述べた。

「ありがとうございます」

ペコリとお辞儀を
するところが礼儀正しい。

『母さん達も食べてみてください』

今度は侑君が柚紀さん達に勧める。

「あら本当に美味しいわ」

瑠花さんがニコニコしながら言った。

★━━━━━━━━━━━━━━★

『陸十、明日の昼食なのですが……』

侑君が突然、口を開いた。

「うん? 何かリクエスト?』

何か食べたい物でもあるのかな?

『えぇ(苦笑)

甘い卵焼き、入れてもらえますか?』

可愛らしいリクエストだな。

「いいよ*♬೨

侑さんがリクエストなんて珍しいね」

二人のやり取りが
気になったのか
柚紀さんがあたしに訊いてきた。

「彼は年下よね?」

端からみたら異様だろう。

三年生の侑君が敬語で
一年生の陸十がタメ語なんだから(笑)

『はい。

一年生で下っ端ですけど
学年関係なく
全員タメ語っていうのが
雨竜のルールなんですよ』

あたしの説明に大人四人は
目を見開いている。

『礼哉が堅苦しいのは嫌
と言って先代達のルールを破ったんです』

私の後を継ぐように侑君が言った。

★━━━━━━━━━━━━━━★

あの後、解散となり
担任は複雑そうな表情かおのまま
理事長の車で帰り、柚紀さんと
瑠花さんも帰って行った。

喧嘩を教えてもらうのは
また後日ということになった。
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