ある日、AV男優になった元大学生

華愁

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第十九話 四年越しの謝罪

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久地・南田・華山の三人を風見ヶ丘公園に
呼び出したと鷺沼から連絡が来たのは
鷺沼が黎都に謝罪してから一週間後のことだった。

「黎都、一週間ぶり。阿久津さんもお久しぶりです。

ほら、おまら、黎都が来てくれたんだ。

四年前のこと、きちんと謝れ」

鷺沼の言葉が公園の静かな空気に響く。

久地は俯き、重い息を吐いた。

「……黎都、本当に、すまなかった。

あの時は俺たちも、何も考えられなくて……」

彼の声は震えていたが、どこか諦めにも似た弱さがあった。

南田は手をポケットに突っ込み、目をそらしながらも小さく言った。

「……あの日のことは、俺も忘れられない。

俺も傷つけた。申し訳ない」

声は低く、言葉少なだが、胸の奥から絞り出すようだった。

華山は少し間を置いてから、真っ直ぐ黎都の目を見て口を開く。

「謝るよ。言葉じゃ足りないけど……

あの時の自分が本当に恥ずかしい」

その表情には後悔と痛みが浮かんでいた。

三人はそれぞれ、五年前の重い過去を背負ったまま、
今こうして向き合っていることの苦しさと、
初めての謝罪の重みを抱えていた。

鷺沼の促しがなければ、決して言葉にはできなかっただろう。

『久地先輩・南田先輩・華山先輩は
鷺沼先輩が声をかけなければ自ら俺に
謝罪しにくる気はなかったんですよね?』と、
黎都は静かに言葉を放った。

その声は穏やかに見えたが、
その奥には深い憤りと複雑な感情が渦巻いていた。

黎都の隣にいる阿久津は口を挟まずに聞いている。

「あの時は本当にすまなかった」

最初に口を開いたたのは華山だった。

「二年前、妹が被害に遭って俺は怖くなった。

俺は、俺たちは妹に無理やりやった奴らと同じなんだと気付いた。

本当にすまなかった。

赦してくれなんて言わない……黎都、本当に悪かった」

『妹さんはその後、トラウマになっていませんか?』

黎都の問いかけに恋人の阿久津さえも驚いた。

「被害に遭って一年半くらいは俺にも怯えていて
引きこもってたが半年前から大学に復学して通ってる」

黎都は一瞬、ホッとした表情をした。

『それならよかったです。

ご家族で心のケアをしてあげてくださいね』

四年前とはいえ自分に危害を加えた一人の
家族の心配をする黎都の優しさにその場にいる全員が息を飲んだ。

南田が口を開いた。

「……俺は、あの時の自分を正当化しようと、ずっとしてきた。

『久地に便乗しただけ』とか『その場の空気が』とか……

でも、それも嘘だ。本当は怖かったんだよ。

お前が何もできないのをいいことに、
加担した自分を認めたくなくて……」

黎都は黙ってその言葉を受け止める。

視線はまっすぐ南田を見据えているが、
何の感情も表に出さない。

「俺、あの日から一度も心から笑えたことがなかった。

笑おうとすると、必ずあの時のお前の顔が浮かんで……」

南田の声は掠れて途切れる。

久地は唇を噛み、拳を握ったまま低く言った。

「……俺は、一度も謝りに行かなかった。

行けば、自分が加害者だって事実を突き付けられるから。

卑怯だった。それだけだ」

沈黙が降りる。蝉の声が、やけに遠くで響いていた。

黎都はゆっくりと息を吸い、静かに口を開く。

『皆さんの言葉を、今すぐ受け入れることはできません。

でも……こうして向き合ったことは、
確かに事実です。四年かかったけれど、ようやく、ですね』

阿久津が一歩前に出ようとしたが、黎都が軽く手で制した。

『赦すかどうかは、俺が決めます。

今日じゃない、今じゃない。これから、です』

その言葉に、三人は黙って頷くしかなかった。

風が、公園の木々を揺らし、夏の匂いが漂った。

その中で、六年間止まっていた時計が、
ほんの少しだけ動き出したように感じられた――。
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