ある日、AV男優になった元大学生

華愁

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第二十七話 「蒼原学園、旧校舎の闇」後日譚

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数日後、蒼原学園の正門前にはテレビ局の中継車が連日並び、
校門の外にはマイクやカメラを抱えた記者たちが張り付いていた。

通学する生徒たちはうつむき、制服の胸元を握りしめる。

中には、腕で顔を隠すように走り去る者もいた。

「学校としては、現在警察の捜査に全面的に協力しております」

応接室で取材に応じた新任の臨時校長は、
硬い表情でそう繰り返すばかりだ。

具体的な過去の対応や、
被害生徒の人数について問われても
「捜査中につき回答を控えます」の一点張り。

一方、黎都と阿久津には全国放送の
ワイドショーやドキュメンタリー番組から
連日の取材依頼が舞い込んでいた。

阿久津は取材を取捨選択し、
黎都には「被害者や現場の映像は、
必要以上に出さないほうがいい」と念を押す。

「わかってる。俺は、センセーショナルに見せたいんじゃない。

……真実を伝えたいだけだ」

黎都はそう言いながらも、
スマホに表示される通知の波に少しだけ眉をひそめた。

SNSでは依然として賛否両論が渦巻いていた。

《勇気をくれてありがとう》
《自分も被害者だった》といった匿名の感謝の声の一方で、
《正義感の暴走》《被害者を盾にした売名》
という冷たい言葉も容赦なく投げつけられる。

そんな中、黎都のもとに一通の封書が届く。

差出人は、かつて旧校舎で被害に遭ったという
名もなき卒業生だった。

便箋には、震えるような文字でこう綴られていた。

> 「あの日、誰も来てくれなかった。
でも、あなたは来てくれた。ありがとう」

黎都は封を閉じ、阿久津にだけ小さく笑みを見せた。

『……これだけで、十分だ』

黎都は封筒を机の引き出しにそっとしまい、深く息をついた。

阿久津が湯気の立つマグカップを差し出し、
椅子の背にもたれて腕を組む。

『……で、これからどうする?』

『まだ終わってない。林田と教頭だけじゃなく、
黙ってた奴らもいる。生徒を守らなかった大人たちも』

黎都の声は穏やかだったが、その奥には鋭い芯が通っていた。

その頃、新聞社やネットメディアでは、
事件の“背景特集”が組まれ始めていた。

【教育現場に潜む沈黙の構造】――記事には、
過去十数年間に蒼原学園の旧校舎で起きた
不審な退学や転校の記録が並び、
匿名証言として「演劇部にいたとき、
あの顧問に呼び出された」という卒業生の声が掲載されている。

夕方のニュースでは、旧校舎の外観を映し出しながら、
キャスターがこう告げた。

「警察は、林田容疑者らが複数年にわたり
不適切な行為を繰り返していたとみて調べを進めています」

記者会見の席で、新任校長の隣に座った弁護士は、
書面を読み上げる。

「被害に遭われた方々への補償や心のケアを最優先にいたします。

加えて、外部第三者委員会による調査を実施し――」

その声は会見場に響くが、
校門前に集まった保護者や卒業生たちの表情は険しいままだった。

会見をテレビで見ていた黎都は、リモコンを置き、短く呟いた。

『……言葉だけじゃ変わらない』

阿久津が横で静かに頷く。

『じゃあ、次は行動だな』

その夜、黎都はパソコンの画面を開き、
新しい企画書のタイトルを打ち込んだ。

――『旧校舎の闇 第二章――沈黙を破った声』


画面に浮かぶその文字を見つめ、黎都は指先に力を込めた。

彼の中で、次の戦いが始まっていた。

『陣さん、また手伝ってくれる?』

『当たり前だろう』

林田と教頭が捕まったのは始まりにすぎない。

かといって、そればかりかに気を取られているわけにはいかない。
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