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第一話 妊娠
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「犀星君、居るかい?」
玄関に向かうと酷く疲れた顔をした芥川君がいた。
「芥川君!? とりあえず中へどうぞ」
居間に通した、お茶を淹れた。
「犀星君、僕は君の子を宿しているみたいなんだ……
“間性”と言って、“男”でも“女”でもどっちつかずの“性”らしい」
「不勉強ですまない、それはその……」
「僕が犀星君の子を宿せる体質だってことさ。
最近、吐き気と眠気が酷くて、食べ物の匂いも煙草の匂いも駄目で
医者にいったら、“妊娠”していると言われたよ。
ごめん、迷惑だろう?今なら中絶できる期間らしいから……」
「中絶だって?」
とみ子との最初の子を亡くしている僕には“中絶”という言葉は
鈍器で頭を殴られたのと同じくらいの衝撃を受けた。
「芥川君自身はどう思っているんだい? 僕との子は“いらない子”かい?
僕は一度、子と死別しているんだ……中絶するなんて言わないでおくれ……
とみ子にも話して、君の体調管理や妊娠中に
食べられそうな物を教えてもらおう」
夕方、僕はとみ子に包み隠さず全て話した。
僕と芥川君が“恋仲”だということ、芥川君が“間性”という稀な体質で
僕の子を宿しているが、つわりが酷いことを。
「わかったわ。
犀星さんが芥川さんに“親友”以上の感情を抱いていることには
気付いていたし、芥川さんの体質には驚いたけど
つわりが酷いなら、匂いがきつい物は駄目ね。
芥川さんは今、どちらに?」
「二階の客室だよ。つらそうだったから布団を敷いて寝かせている」
「私は匂いの少ないお粥を用意するから犀星さんは
酸味の強い果物を買って来てくださいな」
とみ子に言われて僕は青果店へ走った。
玄関に向かうと酷く疲れた顔をした芥川君がいた。
「芥川君!? とりあえず中へどうぞ」
居間に通した、お茶を淹れた。
「犀星君、僕は君の子を宿しているみたいなんだ……
“間性”と言って、“男”でも“女”でもどっちつかずの“性”らしい」
「不勉強ですまない、それはその……」
「僕が犀星君の子を宿せる体質だってことさ。
最近、吐き気と眠気が酷くて、食べ物の匂いも煙草の匂いも駄目で
医者にいったら、“妊娠”していると言われたよ。
ごめん、迷惑だろう?今なら中絶できる期間らしいから……」
「中絶だって?」
とみ子との最初の子を亡くしている僕には“中絶”という言葉は
鈍器で頭を殴られたのと同じくらいの衝撃を受けた。
「芥川君自身はどう思っているんだい? 僕との子は“いらない子”かい?
僕は一度、子と死別しているんだ……中絶するなんて言わないでおくれ……
とみ子にも話して、君の体調管理や妊娠中に
食べられそうな物を教えてもらおう」
夕方、僕はとみ子に包み隠さず全て話した。
僕と芥川君が“恋仲”だということ、芥川君が“間性”という稀な体質で
僕の子を宿しているが、つわりが酷いことを。
「わかったわ。
犀星さんが芥川さんに“親友”以上の感情を抱いていることには
気付いていたし、芥川さんの体質には驚いたけど
つわりが酷いなら、匂いがきつい物は駄目ね。
芥川さんは今、どちらに?」
「二階の客室だよ。つらそうだったから布団を敷いて寝かせている」
「私は匂いの少ないお粥を用意するから犀星さんは
酸味の強い果物を買って来てくださいな」
とみ子に言われて僕は青果店へ走った。
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