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第六話 威厳な糯田家の父親は実は“家族”には優しい
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夕飯後、俺は父さんの執務室に呼ばれた。
璃羅は母さんと一緒にいる。
『父さん、入っていいか?』
「真人か、入っていいぞ」
俺が執務室の扉を閉めると父さんはなりふり構わず俺を抱き締めた。
「真人、よくやった!!」
『父さんならそう言ってくれると思ってたよ』
父さんの腕は相変わらず強く、肩に食い込むほどだった。
俺は苦笑しながらも、その力強さに心が温まる。
「当たり前だ。……お前が璃羅を守った、その事実が何よりも誇らしい」
父さんはゆっくりと俺から体を離し、真正面から俺を見つめる。
その眼差しは厳しい社長としてのものではなく、
一人の父としての優しさを帯びていた。
「真人、いいか。家というのは“守るもの”だ。
金や名声ではない。人だ。
──お前にとっての“守りたい人”を選んだなら、それが正解だ」
俺の胸の奥に、ズシンと響いた。
『……璃羅は、俺が守る。どんなことがあっても』
「ふふ、言うようになったな
さて、リビングに戻るか」
父さんが立ち上がり、俺もその後に続く。
重厚な執務室を出て廊下を歩くと、ほのかに甘い香りが漂ってきた。
母さんがよく淹れるハーブティーの香りだ。
リビングに入ると、母さんが優しく微笑み、隣には少し緊張気味の璃羅が座っていた。
俺と父さんの姿を見て、璃羅はホッとしたように肩の力を抜く。
「おかえりなさい、二人とも。話は終わったの?」
「ああ」父さんが短く答え、璃羅に目を向けた。
その鋭い眼差しに、璃羅は思わず背筋を伸ばす。
だが父さんは、ふっと口元を緩めて言った。
「璃羅さん──真人を信じてくれてありがとう」
『え……?』
璃羅の瞳が大きく揺れる。
「真人はまだ未熟だが、必ず強くなる。君を守ると、
そう断言した息子を私は信じている」
璃羅の頬が赤く染まり、隣に座る母さんが小さく微笑んだ。
母さんはカップを差し出しながら言う。
「璃羅さん、緊張しなくて大丈夫よ。うちの人、
仕事では厳しいけれど……家族にはとても甘いの」
母さんは笑いながら父さんの方を向いて言った。
「君はもう、糯田家の一員で私と瑠美の子だ。
煮雪家に璃羅を帰すつもりはない。
璃羅が気になるなら真人の婚約者というのはどうだろうか」
父さんはしれっと何を言い出すんだか……
『……それ本気で言ってんのか?』
「当然だろう」
父さんはまるで商談の結論を出すかのように淡々と答える。
横で母さんが「もう、あなたったら」と笑みを浮かべているけど、
止める気はさらさらなさそうだ。
ちらりと璃羅を見ると真っ赤になって固まっていた。
いや、耳まで真っ赤だ。
『私が真人君の婚約者……』
まぁ、毎日、学校の渡り廊下で「真人君、抱いて」と
大声で叫ぶし卒業したら抱いてやると約束しているから
曖昧な関係に名前が付くのはある意味いいのかもしれない。
『璃羅が毎日、学校で俺に対して叫んでる言葉を
考えりゃちょうどいいじゃねぇか』
母さんと父さんは当然知らないから首を傾げている。
『そう……だけど……//////』
『毎日、学校で出会い頭の一言目は「真人君、抱いて」じゃねぇか。
大義名分ができたじゃねぇか、な、璃羅?』
璃羅は俯いたまま、耳まで真っ赤に染めてぷるぷる震えていた。
『ま、真人君っ……それは……い、言わなくてもいいことまで……』
母さんがぱちりと瞬きをし、父さんは「抱いて?」と低く呟いた。
俺は肩を竦めながらも続ける。
『いやいや、毎日のことだし。俺だって最初は戸惑ったけどさ、
もう習慣みたいなもんだろ?』
『ま、ままま真人君!!』
璃羅は思わず立ち上がり、両手を振って慌てて否定しようとするが、
その仕草がかえって真実味を帯びている。
母さんは思わず口元を押さえて笑い、
父さんは腕を組んで「なるほど……大胆な娘だな」と妙に感心していた。
「真人、お前はなかなかいい相手を選んだようだ」
「そうね。私も璃羅さんのこと、気に入っているわ」
璃羅は『やめてぇ……』と小さく消え入りそうな声で呟き、ソファに座り直すと、
うつむいたまま俺の袖をぎゅっと掴んだ。
俺はその小さな手の温もりを感じながら、笑って言う。
『だからさ、婚約者っていうのも……悪くねぇんじゃねぇか?』
璃羅の肩がびくりと震え、赤い顔のまま俺を見上げた。
「……ほんとに、そう思ってるの?」
その問いかけはいつもの『抱いて』みたいな茶化しじゃなく、
真剣で、震える声だった。
『ああ。……俺は璃羅を守るって決めた。なら、婚約者だろうとなんだろうと、もう関係ねぇ』
俺がそう答えると、父さんが満足そうに頷き、母さんは柔らかく笑った。
璃羅の瞳がじわりと潤み、唇を噛んでから小さな声で呟いた。
『……ありがとう、真人君』
そして俺の袖を掴んだまま、璃羅はそっと俺の肩に額を寄せてきた。
──家族の前なのに、こいつ……。
父さんと母さんが目を細めて見守るなか、
俺は少し照れながらも璃羅の肩に腕を回した。
『……もう、逃げんなよ? 俺からも、糯田家からも』
璃羅はコクリと頷いた。
璃羅は母さんと一緒にいる。
『父さん、入っていいか?』
「真人か、入っていいぞ」
俺が執務室の扉を閉めると父さんはなりふり構わず俺を抱き締めた。
「真人、よくやった!!」
『父さんならそう言ってくれると思ってたよ』
父さんの腕は相変わらず強く、肩に食い込むほどだった。
俺は苦笑しながらも、その力強さに心が温まる。
「当たり前だ。……お前が璃羅を守った、その事実が何よりも誇らしい」
父さんはゆっくりと俺から体を離し、真正面から俺を見つめる。
その眼差しは厳しい社長としてのものではなく、
一人の父としての優しさを帯びていた。
「真人、いいか。家というのは“守るもの”だ。
金や名声ではない。人だ。
──お前にとっての“守りたい人”を選んだなら、それが正解だ」
俺の胸の奥に、ズシンと響いた。
『……璃羅は、俺が守る。どんなことがあっても』
「ふふ、言うようになったな
さて、リビングに戻るか」
父さんが立ち上がり、俺もその後に続く。
重厚な執務室を出て廊下を歩くと、ほのかに甘い香りが漂ってきた。
母さんがよく淹れるハーブティーの香りだ。
リビングに入ると、母さんが優しく微笑み、隣には少し緊張気味の璃羅が座っていた。
俺と父さんの姿を見て、璃羅はホッとしたように肩の力を抜く。
「おかえりなさい、二人とも。話は終わったの?」
「ああ」父さんが短く答え、璃羅に目を向けた。
その鋭い眼差しに、璃羅は思わず背筋を伸ばす。
だが父さんは、ふっと口元を緩めて言った。
「璃羅さん──真人を信じてくれてありがとう」
『え……?』
璃羅の瞳が大きく揺れる。
「真人はまだ未熟だが、必ず強くなる。君を守ると、
そう断言した息子を私は信じている」
璃羅の頬が赤く染まり、隣に座る母さんが小さく微笑んだ。
母さんはカップを差し出しながら言う。
「璃羅さん、緊張しなくて大丈夫よ。うちの人、
仕事では厳しいけれど……家族にはとても甘いの」
母さんは笑いながら父さんの方を向いて言った。
「君はもう、糯田家の一員で私と瑠美の子だ。
煮雪家に璃羅を帰すつもりはない。
璃羅が気になるなら真人の婚約者というのはどうだろうか」
父さんはしれっと何を言い出すんだか……
『……それ本気で言ってんのか?』
「当然だろう」
父さんはまるで商談の結論を出すかのように淡々と答える。
横で母さんが「もう、あなたったら」と笑みを浮かべているけど、
止める気はさらさらなさそうだ。
ちらりと璃羅を見ると真っ赤になって固まっていた。
いや、耳まで真っ赤だ。
『私が真人君の婚約者……』
まぁ、毎日、学校の渡り廊下で「真人君、抱いて」と
大声で叫ぶし卒業したら抱いてやると約束しているから
曖昧な関係に名前が付くのはある意味いいのかもしれない。
『璃羅が毎日、学校で俺に対して叫んでる言葉を
考えりゃちょうどいいじゃねぇか』
母さんと父さんは当然知らないから首を傾げている。
『そう……だけど……//////』
『毎日、学校で出会い頭の一言目は「真人君、抱いて」じゃねぇか。
大義名分ができたじゃねぇか、な、璃羅?』
璃羅は俯いたまま、耳まで真っ赤に染めてぷるぷる震えていた。
『ま、真人君っ……それは……い、言わなくてもいいことまで……』
母さんがぱちりと瞬きをし、父さんは「抱いて?」と低く呟いた。
俺は肩を竦めながらも続ける。
『いやいや、毎日のことだし。俺だって最初は戸惑ったけどさ、
もう習慣みたいなもんだろ?』
『ま、ままま真人君!!』
璃羅は思わず立ち上がり、両手を振って慌てて否定しようとするが、
その仕草がかえって真実味を帯びている。
母さんは思わず口元を押さえて笑い、
父さんは腕を組んで「なるほど……大胆な娘だな」と妙に感心していた。
「真人、お前はなかなかいい相手を選んだようだ」
「そうね。私も璃羅さんのこと、気に入っているわ」
璃羅は『やめてぇ……』と小さく消え入りそうな声で呟き、ソファに座り直すと、
うつむいたまま俺の袖をぎゅっと掴んだ。
俺はその小さな手の温もりを感じながら、笑って言う。
『だからさ、婚約者っていうのも……悪くねぇんじゃねぇか?』
璃羅の肩がびくりと震え、赤い顔のまま俺を見上げた。
「……ほんとに、そう思ってるの?」
その問いかけはいつもの『抱いて』みたいな茶化しじゃなく、
真剣で、震える声だった。
『ああ。……俺は璃羅を守るって決めた。なら、婚約者だろうとなんだろうと、もう関係ねぇ』
俺がそう答えると、父さんが満足そうに頷き、母さんは柔らかく笑った。
璃羅の瞳がじわりと潤み、唇を噛んでから小さな声で呟いた。
『……ありがとう、真人君』
そして俺の袖を掴んだまま、璃羅はそっと俺の肩に額を寄せてきた。
──家族の前なのに、こいつ……。
父さんと母さんが目を細めて見守るなか、
俺は少し照れながらも璃羅の肩に腕を回した。
『……もう、逃げんなよ? 俺からも、糯田家からも』
璃羅はコクリと頷いた。
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