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第十二話 抱かれる喜びを知ってしまった僕は❬芥川龍之介視点❭
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二日前、文に“抱いてほしい”と言われて了承したけど
その一方で僕は犀星君に“抱かれたい”と思っていた。
僕の中には文に対する思いは罪悪感と義務感が強かった。
“死にたい”と口にしていたあの頃の罪悪感。
“夫”として、“父親”としての義務感。
だけど、犀星君やとみ子さんの前では偽らず、そのままの感情をさらけ出せる。
“漠然とした不安”も“犀星君への恋心も”、
泣きたい時に泣け、笑いたい時に笑える。
家の中や外ではどうして“よき夫”、“よき父親”を演じなければならず
弱さや悲しみをさらけ出すことはできない。
昨夜、僕と犀星君は体を繋げた。
犀星君に抱かれている間は夢心地で全てを脱ぎ捨て、
ただただ、犀星君に甘えていた。
“よき夫”でも“よき父親”でも“作家・芥川龍之介”でもなく
恋人に甘える男になっていた。
情事の最中に囁かれた言葉。
「龍之介君、無理しなくていい、ずっとここにいていてからね」
耳に直接流れ込んできた艶っぽい声と言葉に
僕は最中に泣いてしまった。
突然泣き出した僕を犀星君は優しく抱き締めてくれた。
冷静になってから思い出すと恥ずかしいけど
犀星君の声と言葉は僕の気持ちを安らげてくれる。
「龍之介君、泣いていいんだよ。
それは恥ずかしいことじゃないし人として
普通のことだ。少なくとも、室生家では
龍之介の心のままに感情をさらけ出していい。
誰も君を責めないし笑わない。」
昨夜の回想をしていたら隣にいる犀星君に
抱き締められた。
「おはよう、龍之介君」
抱き締められた際に背中を撫でられ
小さく声を上げてしまった。
「ん、おはよう、犀星君」
僕の反応に犀星君はくすっと笑った。
「身体は大丈夫かい?
昨夜は無理させてしまったからね」
そんなことはなかった。
昨夜の犀星君は本当に優しすぎる程優しかった。
「君は優しかったよ。もっと乱暴でもよかったくらいにね」
僕が片目を閉じて言うと犀星君は肩を竦めたけど
表情は柔らかかった。
「君が望むなら……考えておくことにするよ」
頬に朱が差した僕を見て犀星君は
抱き締める腕に力を込めた。
「そんなに緊張しなくても、次に君と
体を重ねる時もちゃんと優しくするよ僕の愛しくて可愛い人」
引いたはずの頬の熱が再燃した。
「……ありがとう、犀星君」
「どういたしまして。君の心も身体も
僕に預けてくれていいんだよ?
全部、僕が受け止める」
犀星君の優しさに全力で甘えることにした。
「なら、膝枕してほしいな」
朝からするお願いじゃないけど僕はまだ
犀星君の温もりを感じていたかった。
「じゃぁ、どうぞ」
犀星君は僕の頭を自分の膝の上に乗せた。
頭を撫でてくれる手が心地よすぎて
再び寝てしまいしそうだ。
膝の上で頭を撫でられながら、僕は目を閉じた。
犀星君の手の温もりと鼓動が伝わり、
全身の力がゆっくりと抜けていく。
「龍之介君、目を閉じていいんだよ」
その声に従い、僕はゆったりと息を吐いた。
心の奥底にあった緊張や不安が、
少しずつ柔らかく溶けていく。
「……こんなにも安心できるのは、君のせいだ」
小さな声でそう呟くと、犀星君は微笑み、
僕の髪を優しく撫で続けた。
「君が心を許してくれるから、
僕も全力で君を守れる。
そして……甘えてくれる君が、
僕は愛おしくて仕方ないんだ」
言葉とぬくもりが混ざり合い、
僕の胸の奥に小さな火が灯る。
罪悪感や義務感ではなく、
純粋に「この人に抱かれていたい」という
思いだけが膨らんでいった。
膝の上で顔を埋める僕に、
犀星君はそっと唇を額に押し当てた。
その瞬間、全身の細胞が震えるような
幸福感に包まれた。
「……もっと、ずっとこうしていたい」
小さな声が洩れる。
「いいんだよ、龍之介君。ずっとここにいればいい」
二人の間に流れる時間は、
外の世界とは切り離された静かな楽園のようだった。
愛される喜び、受け入れられる安心、
そして甘える快感がひとつに溶け合う。
僕は初めて、誰かに全てを
委ねてもいいという感覚を心から味わった。
犀星君の腕の中で、僕は「抱かれる喜び」と
「心からの信頼」を同時に知ったのだ。
その一方で僕は犀星君に“抱かれたい”と思っていた。
僕の中には文に対する思いは罪悪感と義務感が強かった。
“死にたい”と口にしていたあの頃の罪悪感。
“夫”として、“父親”としての義務感。
だけど、犀星君やとみ子さんの前では偽らず、そのままの感情をさらけ出せる。
“漠然とした不安”も“犀星君への恋心も”、
泣きたい時に泣け、笑いたい時に笑える。
家の中や外ではどうして“よき夫”、“よき父親”を演じなければならず
弱さや悲しみをさらけ出すことはできない。
昨夜、僕と犀星君は体を繋げた。
犀星君に抱かれている間は夢心地で全てを脱ぎ捨て、
ただただ、犀星君に甘えていた。
“よき夫”でも“よき父親”でも“作家・芥川龍之介”でもなく
恋人に甘える男になっていた。
情事の最中に囁かれた言葉。
「龍之介君、無理しなくていい、ずっとここにいていてからね」
耳に直接流れ込んできた艶っぽい声と言葉に
僕は最中に泣いてしまった。
突然泣き出した僕を犀星君は優しく抱き締めてくれた。
冷静になってから思い出すと恥ずかしいけど
犀星君の声と言葉は僕の気持ちを安らげてくれる。
「龍之介君、泣いていいんだよ。
それは恥ずかしいことじゃないし人として
普通のことだ。少なくとも、室生家では
龍之介の心のままに感情をさらけ出していい。
誰も君を責めないし笑わない。」
昨夜の回想をしていたら隣にいる犀星君に
抱き締められた。
「おはよう、龍之介君」
抱き締められた際に背中を撫でられ
小さく声を上げてしまった。
「ん、おはよう、犀星君」
僕の反応に犀星君はくすっと笑った。
「身体は大丈夫かい?
昨夜は無理させてしまったからね」
そんなことはなかった。
昨夜の犀星君は本当に優しすぎる程優しかった。
「君は優しかったよ。もっと乱暴でもよかったくらいにね」
僕が片目を閉じて言うと犀星君は肩を竦めたけど
表情は柔らかかった。
「君が望むなら……考えておくことにするよ」
頬に朱が差した僕を見て犀星君は
抱き締める腕に力を込めた。
「そんなに緊張しなくても、次に君と
体を重ねる時もちゃんと優しくするよ僕の愛しくて可愛い人」
引いたはずの頬の熱が再燃した。
「……ありがとう、犀星君」
「どういたしまして。君の心も身体も
僕に預けてくれていいんだよ?
全部、僕が受け止める」
犀星君の優しさに全力で甘えることにした。
「なら、膝枕してほしいな」
朝からするお願いじゃないけど僕はまだ
犀星君の温もりを感じていたかった。
「じゃぁ、どうぞ」
犀星君は僕の頭を自分の膝の上に乗せた。
頭を撫でてくれる手が心地よすぎて
再び寝てしまいしそうだ。
膝の上で頭を撫でられながら、僕は目を閉じた。
犀星君の手の温もりと鼓動が伝わり、
全身の力がゆっくりと抜けていく。
「龍之介君、目を閉じていいんだよ」
その声に従い、僕はゆったりと息を吐いた。
心の奥底にあった緊張や不安が、
少しずつ柔らかく溶けていく。
「……こんなにも安心できるのは、君のせいだ」
小さな声でそう呟くと、犀星君は微笑み、
僕の髪を優しく撫で続けた。
「君が心を許してくれるから、
僕も全力で君を守れる。
そして……甘えてくれる君が、
僕は愛おしくて仕方ないんだ」
言葉とぬくもりが混ざり合い、
僕の胸の奥に小さな火が灯る。
罪悪感や義務感ではなく、
純粋に「この人に抱かれていたい」という
思いだけが膨らんでいった。
膝の上で顔を埋める僕に、
犀星君はそっと唇を額に押し当てた。
その瞬間、全身の細胞が震えるような
幸福感に包まれた。
「……もっと、ずっとこうしていたい」
小さな声が洩れる。
「いいんだよ、龍之介君。ずっとここにいればいい」
二人の間に流れる時間は、
外の世界とは切り離された静かな楽園のようだった。
愛される喜び、受け入れられる安心、
そして甘える快感がひとつに溶け合う。
僕は初めて、誰かに全てを
委ねてもいいという感覚を心から味わった。
犀星君の腕の中で、僕は「抱かれる喜び」と
「心からの信頼」を同時に知ったのだ。
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