この恋が運命じゃなくても

星川過世

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慎太郎のはなし 1

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 うちには子供が一人しか居なかった。両親がアルファとオメガだったから、俺はおそらくアルファかオメガ。
 両親どころか親戚中が俺がアルファであることを望んでいた。
 あからさまに口に出すことはなかったけれど、そういうのって子供には案外わかるものなのだ。
 そこには多少の打算もあったのかもしれないが、ほとんどが純粋な愛だった。アルファになれば将来は約束される、幸せになれる。子供の幸せを願う大人たちの優しさに他ならない。
 きっとみんな、アルファだろうがオメガだろうが幸せになれる世の中を、それよりずっと願っていただろうけど。

 だからアルファだとわかったときは心底安心した。これで幸せになれるのだと。
 しかし当然だがアルファだからと理不尽な目に遭わないわけではない。特に俺は本当にアルファか? と疑いたくなるほど何をやらせても駄目だった。
 優しい両親にさえ「アルファなのにどうして」「アルファなんだからもっとできるでしょ」と何かの結果が出るたびに言われた。
 逆に頑張って出した成果は全て、「アルファだから当然」と締めくくられる。教師だって友達だってそうだった。
 アルファは数が少ないから、わかってくれる人も少なかった。だから小学校から一緒の龍之介がアルファだったのは、幸運だったのだろう。彼は優秀だったし、俺ほど悩んではいないように見えたが。

 次第に周りの重圧が嫌になって、夜遊びのようなことを始めた。いずれオメガと結婚することになるだろうと思っていたから、ベータの女性とばかり遊んだ。こちらがアルファだと言えば、興味を持って向こうからいくらでも来る。
 正直な所、別に楽しくもなかった。こんなものか、という感じ。アルファだと自分から言ってしまっている以上、向こうの態度は知り合いとそう変わらなかった。

 そのうちアルファであることを隠して夜の街に出るようになった。明らかに周りの態度が変わった。いい意味でも悪い意味でも。気安く接してくれる人も増えたし、明らかに舐め腐った態度の奴も増えた。
 これがアルファじゃなかった人生か。良くも悪くも。

 そこで「アルファをどう思う?」と気まぐれに聞いた相手はたまたま夜の街で会ったオメガだった。
 その子は優秀、かっこいい、と一通り並べた後にちょっと怖い、と付け足した。
 「怖い?」
 「そう、怖い。ベータの男だって強いけど、アルファはその比じゃないじゃない。襲われたらひとたまりもないわ。もちろんそんなことする奴らばかりじゃないけど、警戒はしちゃうよね」
 それからここが夜の街だと思い出したのか、こうも付け足した。
 「合意の上でもさ、セックスの最中に何か嫌なことをされても興奮状態のアルファは口で言ったって聞かない。もちろんフィジカルじゃかなわない。特にオメガはうなじを無理やり噛まれて番になんてされたらたまったもんじゃないよ。何より......万が一抑制剤が効かなくてヒートが起きたら。近くにアルファが居たら。もう一巻の終わり」
 そうか、アルファは怖いのか。
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