この恋が運命じゃなくても

星川過世

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 「おまたせしました」
 「いえ、僕も今来たところです」
 かばんの中には一応ヒートの特効薬を忍び込ませていた。常用薬と比べると効果はイマイチだけれど、いざというときには頼りになる。
 多分大丈夫だとは思うけれど、念には念を。
 湊さんはかっこいい。高身長イケメンで服装もオシャレだ。こんなに素敵な人が俺の運命でいいのかなと思うけれど、運命だからそう見えている可能性もある。
 俺はコーヒー、湊さんは紅茶を頼んでしばらくの間雑談をした。
 今日初めて会ったよく知らない相手と話題なんてあるだろうかと思っていたが、思いのほか会話はサクサク進む。
 湊さんが上手いのが、これも運命だからなのか。
 「瞬さんは、どういったお仕事をされているんですか?」
 「製薬会社で働いています。将来的にはもっと長期的に効果の見られる抑制剤を作りたくて」
 「街中でオメガがヒートを起こしてって事件が後を絶ちませんからね」
 うんうん、と湊さんが頷いて見せる。やはり聞き上手のようだ。オメガの仕事の話を真剣に聞いてくれるアルファは少ないから、それだけで好感度が上がる。
 そこから仕事の話、趣味の話、くだらない話とまるで長年の友人同士かのように会話に花を咲かせた。
 「そう言えば今更ですが、瞬さんって恋人は?」
 「え......あ、いないです」
 「今すぐにとは言いませんが、運命同士が逢えたのも何かの縁、こうして定期的会いませんか?」
 「はい、是非!」
 湊さんと居ると楽しい。本能だけでなく自分自身も間違いなく湊さんに惹かれている。
 この人と居れば、幸せになれる。それが俺の望んだ形とは違ったとしても。
 なんとなく窓の方へ目をやって、思わず声が口から零れ落ちた。
 「慎太郎さん......?」
 「え?」
 「あ、いや。外に知り合いが居たもので」
 というか確実にこちらを見ていた。目が合ったら逸らされてしまったけれど。
 もう一度窓の外に目をやると、植え込みの所にこちらに背を向けて座っていた。
 迎えに来てくれたのだろうか。だが、今日のことは慎太郎さんには言っていない。うちの親や兄が慎太郎さんにわざわざ迎えを頼むほど遅い時間でもない。
 話に夢中になるうちに、皿もカップも空になっていた。
 「そろそろ出ましょうか。なにやら大事な人がお迎えに来ているようですし?」
 「大事な人!?」
 「ええ。瞬さんの表情を見ればわかりますよ。僕たちはまた、いつでも会えるんですから」
 そう言ってふたりで席を立ち、会計を済ませて店を出た。
 「あの、今日はありがとうございました」
 「こちらこそ。......ほら、早く」
 湊さんに背中を押されさっき窓から見えた場所へ向かった。湊さんは反対方向へ歩いて行った。
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