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俺が慎太郎さんへの想いを自覚したのはもうずっと昔だ。
うちの両親はアルファとオメガ。大抵子どももアルファかオメガのどちらかだと学校で習った。
二分の一の確率でオメガであろう俺に、母さんはオメガが幸せになる物語をたくさん読み聞かせ、幸せなオメガの一生を説き続けた。オメガでも幸せになれるのだと、全身全霊で俺に教えてくれた。
でもそれは暗に、オメガが幸せになるのは容易ではないと俺に伝えていた。もちろん母さんにはそんなつもりなくて、母さんなりの愛だったのだろうけれど。
今だからわかることだが、母さんはオメガとしての自分の人生に納得していない。結婚を機に大好きだった仕事を止めざるを得なくなったらしい。普段はそんなこと口にしないし、俺が子どもの頃はおくびにも出さなかった。
しかし一度だけ、落ち込んだ母さんが同じオメガのよしみとでも思ったのか、俺にだけそうこぼした。
子供のどちらかがオメガだったら、自分より幸せに生きてほしいと思ったのだろう。
そんなわけで、俺は自分のバース性が判明する前から、オメガだったら嫌だなと漠然と思っていた。心の拠り所と言えば運命の番と出逢えれば幸せになれるなんていう、子供じみた話だけ。
しかもそのお話が言う幸せがどんなものかもわからなかった。
当時の俺の夢は、お医者さんになって困っている人を救うことだった。いくら努力したところでオメガならその道はまず社会制度に阻まれるというのも、子供ながらに知っていて。
そして運命とやらが、それをなんとかしてくれるようになるとは思えなかった。
オメガになりたくない、なんて母には絶対に言えなかった。苦しませるだけだと知っていたから。
そのころちょうど龍之介が学校の友人だという慎太郎さんを家に連れて来て、幼い子供が大抵そうであるように三つ下の俺も混ざって遊んだ。
あの時は確か、龍之介がトイレに立ったんだったか。俺は何の気なしに聞いた。その日学校で発表させられたのかもしれない。
「将来の夢ってありますか?」
と。
バース性が明らかになる前の子供が夢を持つのは往々にして恐ろしいことだ。特に親の片方もしくは両方がアルファやオメガの場合は。
だってバース性にそれを、阻まれるかもしれないから。
そうしたら慎太郎さんは迷うことなく言った。
「性別関係なくみんなが思うように生きられる世の中を作りたい」
そんな答えがあるなんて思ってもみなかった。性別で、バース性でやりたいことが制限されるのは当たり前で、自分はただオメガになることに怯えているしかないと思っていたから。
当時慎太郎さんはまだ中学生になるかならないかくらいだっただろう。大人になった今考えても驚くような答えだ。
そこから俺はだんだん慎太郎さんに惹かれていった。
そして、一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、どんどん好きになっていった。
気遣いが出来るところ、周りをよく見ているところ、この世の理不尽にひとり密かに怒りを覚えているところ、絵画鑑賞が趣味なところ、実は臆病な部分があるところ、物持ちがいいところ......全部、好きだ。
うちの両親はアルファとオメガ。大抵子どももアルファかオメガのどちらかだと学校で習った。
二分の一の確率でオメガであろう俺に、母さんはオメガが幸せになる物語をたくさん読み聞かせ、幸せなオメガの一生を説き続けた。オメガでも幸せになれるのだと、全身全霊で俺に教えてくれた。
でもそれは暗に、オメガが幸せになるのは容易ではないと俺に伝えていた。もちろん母さんにはそんなつもりなくて、母さんなりの愛だったのだろうけれど。
今だからわかることだが、母さんはオメガとしての自分の人生に納得していない。結婚を機に大好きだった仕事を止めざるを得なくなったらしい。普段はそんなこと口にしないし、俺が子どもの頃はおくびにも出さなかった。
しかし一度だけ、落ち込んだ母さんが同じオメガのよしみとでも思ったのか、俺にだけそうこぼした。
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そんなわけで、俺は自分のバース性が判明する前から、オメガだったら嫌だなと漠然と思っていた。心の拠り所と言えば運命の番と出逢えれば幸せになれるなんていう、子供じみた話だけ。
しかもそのお話が言う幸せがどんなものかもわからなかった。
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そして運命とやらが、それをなんとかしてくれるようになるとは思えなかった。
オメガになりたくない、なんて母には絶対に言えなかった。苦しませるだけだと知っていたから。
そのころちょうど龍之介が学校の友人だという慎太郎さんを家に連れて来て、幼い子供が大抵そうであるように三つ下の俺も混ざって遊んだ。
あの時は確か、龍之介がトイレに立ったんだったか。俺は何の気なしに聞いた。その日学校で発表させられたのかもしれない。
「将来の夢ってありますか?」
と。
バース性が明らかになる前の子供が夢を持つのは往々にして恐ろしいことだ。特に親の片方もしくは両方がアルファやオメガの場合は。
だってバース性にそれを、阻まれるかもしれないから。
そうしたら慎太郎さんは迷うことなく言った。
「性別関係なくみんなが思うように生きられる世の中を作りたい」
そんな答えがあるなんて思ってもみなかった。性別で、バース性でやりたいことが制限されるのは当たり前で、自分はただオメガになることに怯えているしかないと思っていたから。
当時慎太郎さんはまだ中学生になるかならないかくらいだっただろう。大人になった今考えても驚くような答えだ。
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そして、一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、どんどん好きになっていった。
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