この恋が運命じゃなくても

星川過世

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 「......ってことがあってさ」
 休日。出かける準備をする俺に龍之介が「またシンか?」と聞いてきたのでこの間偶然出会った運命の片割れと食事に行くのだと説明した。
 別に友達と出かけるとでも言えばよかったのだろうが、誰かに聞いてほしかったのかもしれない。
 「へぇ、運命ね。母さんが好きそうだな」
 「だから母さんには言うなよ。絶対大事にされる」
 俺の言葉に確かにと言って龍之介が笑った。
 「けど、運命に逢える確率なんてすごい低いのによく出逢えたな。良かったじゃん」
 「うん。びっくりだよ。すごいことだよね」
 「......でも、その割には嬉しそうじゃないけど?」
 荷物をかばんに入れる手が自然と止まった。
 「......嬉しいよ。それに運命ってすごいね。ほとんど言葉も交わしていないのに、もう惹かれてる。ついその人のことばかり考えちゃうし、考えるとドキドキする」
 「その割にはお前、最近もシンの話しかしてねぇよな」
 「それは......母さんにバレたら困るから」
 「なんで困るの? 運命って言って大事にされたくないなら、別にそこは言わなければいいじゃん。まぁその歳で家族にいちいち好きな人の話をするのもあれだけどさ、お前シンの話は隙あらばしてくるし」
 龍之介を見た。龍之介は明後日の方向を見ていた。
 慎太郎さんのことは家族全員知っているから。俺はわかりやすいから直接的に言わなくてもバレそうだから。
 反論はいくらでもできた。でも問題はそこじゃない気がした。
 「何が、言いたいの」
 「いや、別に。でも、後悔しないようにな」
 今更かもしれないが、うちの兄は過保護なんじゃないだろうか。
 「ご飯を食べに行くだけだよ?」
 「まぁ、そうだけど。......まあ、シンもいつまでもウダウダしてるからなぁ。愛想尽かされても仕方ないか」
 「だからそういうのじゃないってば」
 運命には、本能には、誰も抗えない。俺がどれだけ慎太郎さんを好きでも、どれだけともに過ごした時間があっても、意味なんてない。

 それに、運命の番と結ばれるのが一番幸せなことだから。
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