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1話 彼氏ができました(ただしヤンデレ)
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「僕と付き合って下さい」
そう言って私の目の前で頭を下げる高橋くん。一瞬の沈黙の後に教室中に響く悲鳴。混沌と化した教室の中で、何故こんなことになったのかと私は頭を抱えた。
すらりとした長い手足に、美しい顔立ち。誰にでも優しく、先生からも頼られるしっかり者。その容姿と性格から、学園のほとんどの女子が彼を好きらしく、抜けがけ禁止という暗黙の了解があるらしい。いつも優しい笑顔を浮かべている人。それが高橋くんの印象だった。
そんな彼に関われば厄介な事になると目に見えて分かっていた私は、特に関わることもなくクラスメイトの一人として接していたのだが、その日は違った。
朝はゆっくりと過ごしたい派の私は学校に早く行き、HRまで教室で読書をするのが日課である。何時もの様に教室の扉を開ければ、先客が居た。私に対して背を向けていた人影は、扉の開く音に反応し、勢いよくこちらを振り向いた。高橋くんだ。しかしいつも優しい笑みを浮かべている彼は、瞳に涙を浮かべていた。
私に泣き顔を見られた高橋くんは、涙を隠す為か制服の袖で目元を拭う。
「・・・・・・あー、擦ったら目が傷つくよ」
無意識だった。
強く目元を拭う様子が幼い弟に重なって、ついそう言って彼の目元を慰める様に撫でていた。
突然の私の行動に、彼は目を大きく開いて驚いていた。はっと気付いても時すでに遅し。高橋くんは怒りからか顔を赤く染め、口元を震わせていた。
──やってしまった。
後悔が頭の中を駆け巡る。そこからは反射だった。高橋くんが口を開く前に、私は教室を飛び出していた。
──私は何も見てない。何もしてない。
そう思い込み、HR前になに食わぬ顔で教室に戻った。何か言われると思って戦々恐々としていた私の気持ちとは裏腹に、高橋くんは私に話しかけて来なかった。
あぁ、彼も無かった事にしたんだと安心した──のが間違いだった。
彼は無かった事になどしていない。虎視眈々と機会を伺っていただけだったのだ。
そしてあの出来事から一週間たった今日。
席に座り、帰り支度をしていた私の目の前に高橋くんが来た。ざわつく周囲の様子が見えていないのか、彼は私に笑いかけて言った。
「真木さんが好きです。僕と付き合って下さい」
想像もしなかった出来事に固まる私。ぐるぐるといろんな考えが頭をめぐる。私が反応するまで動く気配の無い高橋くんに、とりあえず頭を上げてもらう様に声をかける。
頭をあげた彼は何時もの優しい笑顔に少しの不安をのせて、私の返事を待っている。
──そんな子犬みたいな目で見ないでくれ。
つい頭を撫でてしまいそうになるが、我慢。それよりも返事をしなくては。
「・・・・・・ごめんなさい。高橋くんとは付き合えないです」
高橋くんに対して深く頭を下げる。
何で私に告白したのかはわからないが、高橋くんと付き合ってしまえば学校中の女子から反感を買い、最悪いじめられる。そんな面倒事はごめんだ。
「・・・・・・何で?」
「え?」
「何で付き合ってくれないの?」
迷子になってしまった子供の様な声だった。
思わず頭を上げ、高橋くんの顔を見る。無表情だった。さっきまでの優しい笑顔は無い。
「僕の何が駄目?顔?髪型?性格?」
「駄目な所全部直すから!顔が嫌いなら整形するし、性格だって変えるよ!真木さんが好きなタイプになるから僕と付き合って・・・」
「・・・・・・付き合ってくれないなら、僕死んじゃうかも」
私の膝にすがり付いて、狂ったように捲し立てる高橋くん。最後なんて脅迫じゃないか。
さっきまで騒がしかった教室が嘘だったかのように、今は静寂が広がっていた。女子なんて顔面蒼白な子ばっかりだ。憧れの高橋くんがまさかこんな人だったとは思ってもいなかったのだろう。
最初は私を睨んでいたのに、今では同情の目になっている。いくら憧れの高橋くんでも、狂っているのは嫌なんだな。
「真木さん?何考えてるの?・・・・・・僕以外の事考えないで!」
あまりに衝撃的な出来事に、現実逃避していた私に気づいたのか、高橋くんがすがり付いた私の膝に置いていた手に力をいれてくる。めっちゃ痛いんだが?痣になりそうだ。
──なんて現実逃避もやめようか。
「高橋くん」
「・・・なぁに?」
高橋くんの手に触れる。彼は私を見上げて笑う。話しかけられて嬉しかったのか、とても恍惚とした笑みだった。彼は不安定な子供だ。否定したら壊れてしまう。何で私なのかはわからないが、原因はきっと私だ。
クラスメイトが固唾を飲んで見守る中、私は口を開いた。
「付き合おうか」
その瞬間。高橋くんが私に抱きついた。
「嬉しい・・・!真木さん大好き・・・」
ホロホロと涙を流しながら、彼は小さく呟いた。彼を泣き止ませる為に、頭を撫でながら私は息を吐く。
──とりあえずはなんとかなったが、これからどうしようかなぁ。
なんて思いながら、周りを見渡し頷く。クラスメイト達もホッとした顔をして頷いた。
『高橋くんはそっとしておこう』
クラスの暗黙の了解になった瞬間だった。
とりあえず、彼氏できました(ただしヤンデレ)
そう言って私の目の前で頭を下げる高橋くん。一瞬の沈黙の後に教室中に響く悲鳴。混沌と化した教室の中で、何故こんなことになったのかと私は頭を抱えた。
すらりとした長い手足に、美しい顔立ち。誰にでも優しく、先生からも頼られるしっかり者。その容姿と性格から、学園のほとんどの女子が彼を好きらしく、抜けがけ禁止という暗黙の了解があるらしい。いつも優しい笑顔を浮かべている人。それが高橋くんの印象だった。
そんな彼に関われば厄介な事になると目に見えて分かっていた私は、特に関わることもなくクラスメイトの一人として接していたのだが、その日は違った。
朝はゆっくりと過ごしたい派の私は学校に早く行き、HRまで教室で読書をするのが日課である。何時もの様に教室の扉を開ければ、先客が居た。私に対して背を向けていた人影は、扉の開く音に反応し、勢いよくこちらを振り向いた。高橋くんだ。しかしいつも優しい笑みを浮かべている彼は、瞳に涙を浮かべていた。
私に泣き顔を見られた高橋くんは、涙を隠す為か制服の袖で目元を拭う。
「・・・・・・あー、擦ったら目が傷つくよ」
無意識だった。
強く目元を拭う様子が幼い弟に重なって、ついそう言って彼の目元を慰める様に撫でていた。
突然の私の行動に、彼は目を大きく開いて驚いていた。はっと気付いても時すでに遅し。高橋くんは怒りからか顔を赤く染め、口元を震わせていた。
──やってしまった。
後悔が頭の中を駆け巡る。そこからは反射だった。高橋くんが口を開く前に、私は教室を飛び出していた。
──私は何も見てない。何もしてない。
そう思い込み、HR前になに食わぬ顔で教室に戻った。何か言われると思って戦々恐々としていた私の気持ちとは裏腹に、高橋くんは私に話しかけて来なかった。
あぁ、彼も無かった事にしたんだと安心した──のが間違いだった。
彼は無かった事になどしていない。虎視眈々と機会を伺っていただけだったのだ。
そしてあの出来事から一週間たった今日。
席に座り、帰り支度をしていた私の目の前に高橋くんが来た。ざわつく周囲の様子が見えていないのか、彼は私に笑いかけて言った。
「真木さんが好きです。僕と付き合って下さい」
想像もしなかった出来事に固まる私。ぐるぐるといろんな考えが頭をめぐる。私が反応するまで動く気配の無い高橋くんに、とりあえず頭を上げてもらう様に声をかける。
頭をあげた彼は何時もの優しい笑顔に少しの不安をのせて、私の返事を待っている。
──そんな子犬みたいな目で見ないでくれ。
つい頭を撫でてしまいそうになるが、我慢。それよりも返事をしなくては。
「・・・・・・ごめんなさい。高橋くんとは付き合えないです」
高橋くんに対して深く頭を下げる。
何で私に告白したのかはわからないが、高橋くんと付き合ってしまえば学校中の女子から反感を買い、最悪いじめられる。そんな面倒事はごめんだ。
「・・・・・・何で?」
「え?」
「何で付き合ってくれないの?」
迷子になってしまった子供の様な声だった。
思わず頭を上げ、高橋くんの顔を見る。無表情だった。さっきまでの優しい笑顔は無い。
「僕の何が駄目?顔?髪型?性格?」
「駄目な所全部直すから!顔が嫌いなら整形するし、性格だって変えるよ!真木さんが好きなタイプになるから僕と付き合って・・・」
「・・・・・・付き合ってくれないなら、僕死んじゃうかも」
私の膝にすがり付いて、狂ったように捲し立てる高橋くん。最後なんて脅迫じゃないか。
さっきまで騒がしかった教室が嘘だったかのように、今は静寂が広がっていた。女子なんて顔面蒼白な子ばっかりだ。憧れの高橋くんがまさかこんな人だったとは思ってもいなかったのだろう。
最初は私を睨んでいたのに、今では同情の目になっている。いくら憧れの高橋くんでも、狂っているのは嫌なんだな。
「真木さん?何考えてるの?・・・・・・僕以外の事考えないで!」
あまりに衝撃的な出来事に、現実逃避していた私に気づいたのか、高橋くんがすがり付いた私の膝に置いていた手に力をいれてくる。めっちゃ痛いんだが?痣になりそうだ。
──なんて現実逃避もやめようか。
「高橋くん」
「・・・なぁに?」
高橋くんの手に触れる。彼は私を見上げて笑う。話しかけられて嬉しかったのか、とても恍惚とした笑みだった。彼は不安定な子供だ。否定したら壊れてしまう。何で私なのかはわからないが、原因はきっと私だ。
クラスメイトが固唾を飲んで見守る中、私は口を開いた。
「付き合おうか」
その瞬間。高橋くんが私に抱きついた。
「嬉しい・・・!真木さん大好き・・・」
ホロホロと涙を流しながら、彼は小さく呟いた。彼を泣き止ませる為に、頭を撫でながら私は息を吐く。
──とりあえずはなんとかなったが、これからどうしようかなぁ。
なんて思いながら、周りを見渡し頷く。クラスメイト達もホッとした顔をして頷いた。
『高橋くんはそっとしておこう』
クラスの暗黙の了解になった瞬間だった。
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