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3話 彼氏の気持ち(狂気に満ちています)
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「高橋くんは私の事どう思ってるの?」
ある日ふと気になって、ほんの軽い気持ちで高橋くんに聞いてみた。
それが彼の闇を垣間見る事になるとは知らずに。
──いつからか笑顔を浮かべるのが癖になっていた。
きっかけはほんの些細な事だった。昔から両親は二人とも働いていて、いつも忙しくしている二人に心配をさせないように、大人しく笑って、良い子でいるようにした。
そうすれば二人が安心して働けると思ったから。
学校に通い始めたら先生に、クラスメイトに頼られるようになってきた。
『高橋くんなら大丈夫』
なんて、僕に期待を押し付けてくるようになる。笑顔の仮面が年々分厚くなっていく。
両親にも、教師にも、友達にも、本当の自分が出せなくなった。
──あぁ、しんどいなぁ
ふとそんな気持ちが胸を占めて、どうしようもなく泣きたくなる。
その日も誰にも見つからないように、朝早くに教室で一人声を押し殺して泣いた。
ホロホロと栓が抜けたように次々に涙が頬を伝う。
ガラッ。扉の開く音に一瞬自分が泣いていることも忘れ、反射的に勢いよく振り返る。
そこに居たのは、同じクラスの真木さんだった。彼女は僕の姿を見ると驚いた表情を浮かべる。
──涙を拭いて、笑わないと。
頼れる高橋くんに戻らないといけない。僕は慌てて涙で濡れた目元を拭う。
「・・・・・・あー、擦ったら目が傷つくよ」
ふわりと目元が撫でられた。真木さんが僕の目元を優しく撫でた。そこには何の打算もない。純粋に僕を心配してくれての行動。
ドクリと心臓が大きく鳴った。
顔がどんどん熱くなって、気を抜くと口元が緩んでしまいそうになる。こんな感情は初めてで、もっと撫でて欲しいなんて思ってしまった。
彼女に話しかけようとしたのに、真木さんは僕に背を向けて教室から出ていく。
──どこに行くの?僕から離れるの?
仄かに暗い感情で胸が埋め尽くされた。
真木さんの事が頭から離れない。
結局その日は彼女に話しかける事が出来なかった。翌日話しかけようとするも、真木さんは僕を避けているようだ。
好き。ずっと一緒に居たい。僕を以外見ないで。
──僕を好きになって。
気持ちが押さえられない。誰にも渡さない。渡したくない。どうすればいい?
あぁ、そうだ。教室で、クラスメイトの前で告白しよう。牽制にもなるし、きっと真木さんも頷いてくれる筈だ。
「・・・・・・ごめんなさい。高橋くんとは付き合えないです」
告白した僕に対して、彼女が深く頭を下げる。
──断られた
疑問で頭が埋め尽くされた。何がいけない?どこを直せばいい?
表情が抜け落ち、考えていることが口から漏れ出す。
真木さんに受け入れて貰いたい。その一心で彼女の膝にすがり付いて、懇願する。
周りの事なんて、もうどうでもいいよかった。
汚いと、卑怯だと言われようが絶対に諦めない。彼女しかいらない。彼女が断るなら、死んでやる。そう決意して真木さんを見つめる。
ふと彼女の目がどこか遠くを見つめ、僕を写さなくなった。何を、誰の事を考えているの?
──僕が目の前に居るのに!
思わず彼女の膝に置いていた手に力が入る。
「高橋くん」
「・・・なぁに?」
僕の手に彼女が触れる。
彼女が僕を見つめて、触れてくれた。
それだけでものすごい幸福感で満たされる。無意識に甘えた声になり、顔が綻んでしまう。
「付き合おうか」
そして真木さんが言ったその瞬間、僕は彼女に抱きついていた。
「嬉しい・・・!真木さん大好き・・・」
涙が流れて止まらない。真木さんはそんな僕の頭を撫で続けてくれた。
やっと手にいれた。どんな手を使っても絶対に逃がさない。
ずっとずっと一緒に居ようね。
つらつらと私に対する思いを話している高橋くんを前に、私は悪寒が止まらない。
──彼から目を離したら危ない。私の想像以上に狂っていた
「ずっと一緒だよ!真木さん・・・」
私から目をそらさないで、うっとりと笑いかけてくる高橋くんの仄かに暗い瞳に私は何も言うことができず、只彼に笑い返すことしか出来なかった。
彼氏は私が大好きです(それは狂気にまみれた好意でした)
ある日ふと気になって、ほんの軽い気持ちで高橋くんに聞いてみた。
それが彼の闇を垣間見る事になるとは知らずに。
──いつからか笑顔を浮かべるのが癖になっていた。
きっかけはほんの些細な事だった。昔から両親は二人とも働いていて、いつも忙しくしている二人に心配をさせないように、大人しく笑って、良い子でいるようにした。
そうすれば二人が安心して働けると思ったから。
学校に通い始めたら先生に、クラスメイトに頼られるようになってきた。
『高橋くんなら大丈夫』
なんて、僕に期待を押し付けてくるようになる。笑顔の仮面が年々分厚くなっていく。
両親にも、教師にも、友達にも、本当の自分が出せなくなった。
──あぁ、しんどいなぁ
ふとそんな気持ちが胸を占めて、どうしようもなく泣きたくなる。
その日も誰にも見つからないように、朝早くに教室で一人声を押し殺して泣いた。
ホロホロと栓が抜けたように次々に涙が頬を伝う。
ガラッ。扉の開く音に一瞬自分が泣いていることも忘れ、反射的に勢いよく振り返る。
そこに居たのは、同じクラスの真木さんだった。彼女は僕の姿を見ると驚いた表情を浮かべる。
──涙を拭いて、笑わないと。
頼れる高橋くんに戻らないといけない。僕は慌てて涙で濡れた目元を拭う。
「・・・・・・あー、擦ったら目が傷つくよ」
ふわりと目元が撫でられた。真木さんが僕の目元を優しく撫でた。そこには何の打算もない。純粋に僕を心配してくれての行動。
ドクリと心臓が大きく鳴った。
顔がどんどん熱くなって、気を抜くと口元が緩んでしまいそうになる。こんな感情は初めてで、もっと撫でて欲しいなんて思ってしまった。
彼女に話しかけようとしたのに、真木さんは僕に背を向けて教室から出ていく。
──どこに行くの?僕から離れるの?
仄かに暗い感情で胸が埋め尽くされた。
真木さんの事が頭から離れない。
結局その日は彼女に話しかける事が出来なかった。翌日話しかけようとするも、真木さんは僕を避けているようだ。
好き。ずっと一緒に居たい。僕を以外見ないで。
──僕を好きになって。
気持ちが押さえられない。誰にも渡さない。渡したくない。どうすればいい?
あぁ、そうだ。教室で、クラスメイトの前で告白しよう。牽制にもなるし、きっと真木さんも頷いてくれる筈だ。
「・・・・・・ごめんなさい。高橋くんとは付き合えないです」
告白した僕に対して、彼女が深く頭を下げる。
──断られた
疑問で頭が埋め尽くされた。何がいけない?どこを直せばいい?
表情が抜け落ち、考えていることが口から漏れ出す。
真木さんに受け入れて貰いたい。その一心で彼女の膝にすがり付いて、懇願する。
周りの事なんて、もうどうでもいいよかった。
汚いと、卑怯だと言われようが絶対に諦めない。彼女しかいらない。彼女が断るなら、死んでやる。そう決意して真木さんを見つめる。
ふと彼女の目がどこか遠くを見つめ、僕を写さなくなった。何を、誰の事を考えているの?
──僕が目の前に居るのに!
思わず彼女の膝に置いていた手に力が入る。
「高橋くん」
「・・・なぁに?」
僕の手に彼女が触れる。
彼女が僕を見つめて、触れてくれた。
それだけでものすごい幸福感で満たされる。無意識に甘えた声になり、顔が綻んでしまう。
「付き合おうか」
そして真木さんが言ったその瞬間、僕は彼女に抱きついていた。
「嬉しい・・・!真木さん大好き・・・」
涙が流れて止まらない。真木さんはそんな僕の頭を撫で続けてくれた。
やっと手にいれた。どんな手を使っても絶対に逃がさない。
ずっとずっと一緒に居ようね。
つらつらと私に対する思いを話している高橋くんを前に、私は悪寒が止まらない。
──彼から目を離したら危ない。私の想像以上に狂っていた
「ずっと一緒だよ!真木さん・・・」
私から目をそらさないで、うっとりと笑いかけてくる高橋くんの仄かに暗い瞳に私は何も言うことができず、只彼に笑い返すことしか出来なかった。
彼氏は私が大好きです(それは狂気にまみれた好意でした)
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