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6話 彼氏の様子がおかしいです(私が嫌ですか?)
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「あの、真木さん・・・何でもない」
私の手を引き何かを言いかけるも、私を見ると顔を赤くして俯いてしまう。
デートしてから、なんだか高橋くんの様子がおかしいです。
「あんた達何かあったの?」
夏木が呆れたように言った。
私の肩に額を擦り付けている高橋くん。いつもなら幸せそうに笑っている彼は今、頬を赤くして難しい顔で黙り込んでいる。
それでも私の手を離すことはないけれど。
「いや、特に何もないと思うんだけど」
私にも何故高橋くんがこうなったのかがわからない。夏木と二人首を傾げる。
グイッ。腕が引かれた。高橋くんに目を向けると、涙で潤んだ瞳で私を睨んでいる。
「僕を無視しないで・・・」
彼はムッとしながらも不安そうに呟く。拗ねた子供のような彼にクスリと笑い、頭を撫でるため手を伸ばす。
すると高橋くんはギュッと音がしそうなくらい強く目を瞑ってしまった。
あのふにゃりとした笑顔が見れると思っていた私は固まる。
──もしかして、本当に気付かないうちに私が何かしてしまったのか?
そう思ってしまったら、もう彼の頭を撫でる事は出来なかった。
「・・・・・・ごめん」
私の言葉に、高橋くんが目を開く。離れていく私の手を見て彼が驚いている。
「私、高橋くんに嫌な事してたんだよね。全然気付かなかった」
「え?真木さ・・・」
「ごめんね」
高橋くんが私の名を呼びかけていたけど、少し頭を冷やしたくて教室を出た。
彼のあの反応に拒絶された気がして、なんだか胸がひどく痛んだ。
一人静かな廊下を歩く。いつもなら隣に高橋くんがいるのに、今はいない。
その事実に胸に穴があいたような気持ちになる。やるせなくて溜め息をついた。
「真木!!」
夏木の声に背後を振り向く。彼女はひどく息を切らしていた。
「高橋くんがおかしいの!教室に早く戻って!」
その言葉を聞いた瞬間、廊下を走る。なんだが嫌な予感がした。
「何、これ・・・」
教室内の惨状に、呆然とする。
机や椅子が倒され、教科書や荷物が散乱していた。クラスメイト達は教室の片隅に集まって、床に俯き、座り込んでいる高橋くんを見ていた。
「真木!やっと来たか!」
安堵した男子の声に、肩を震わせ高橋くんが顔を上げる。
──ひどい顔だった。
暗く淀んだ瞳からホロホロと涙が零れ、顔は青褪めている。絶望しか感じられない、虚無の表情。
「高橋くん・・・?」
そっと彼の名を呼んで、近づく。
「真木、さん?どこに行ってたの?」
「僕から離れないでって、言ったのに」
「ずっと一緒だよって言ったのに」
私の手を引き、腕の中に抱き込んで彼は話続ける。痛いほどにキツい抱擁に、眉をひそめる。
「何で?僕の何がいけなかったの?」
「・・・高橋くん」
「もう頭を撫でてくれないの?」
「高橋くん」
「・・・・・・僕を、捨てるの?」
「高橋くん!!」
強く、叫ぶように彼を呼ぶ。
ビクリと体を揺らした高橋くんから力が抜けた。いまだに涙を流し続ける彼の頬に触れる。
血の気が引いて冷たい肌。
「・・・離れないよ。ずっと一緒にいるよ」
私は高橋くんの気持ちをわかっていなかった。只一方的に彼の気持ちを決めつけて離れた結果がこれだ。
私が、彼をひどく傷付けてしまった。
私を見つめる彼の瞳が不安に揺れる。
──本当に?
彼の声が聞こえた気がした。
「傷付けてごめんね。だから泣き止んで」
高橋くんの額に、目元に、頬に、キスを落とす。もう、泣かないで欲しかった。
「真木さん」
彼は顔を赤くさせて、ふにゃりと笑う。まだ涙は流れていたけど、私の好きなあの顔で。
あの後、クラスメイト達を間に挟みつつも高橋くんと話し合ったところ、彼のあの反応は私に対する拒絶ではなく、デート終わりに私がした額へのキスを意識してしまった故のものだったらしい。
「もっとしっかり話し合ってから行動しなさい!」
「真木は決めつけるのを止めろ!」
「高橋くんも悲しかったのはわかるけど、もう少し落ち着いて!」
「二人とももうハラハラさせないで」
「「「「わかった!?」」」」
「「ごめんなさい」」
話を聞いたクラスメイト達からはすごく怒られた。だけど皆教室の片付けを嫌がることなく手伝ってくれ、迷惑をかけてしまった私達を責める事もしなかった。
高橋くんと二人お礼を言えば、私達を仕方ない子を見るような目で見て笑う。
「改めて話の内容を聞くと盛大な惚気だもんな」
「さすがお似合いカップル」
「彼女いない俺への当て付けかよ」
「二人とも相思相愛じゃんね」
教室に笑い声が広がる。
──あぁ、嬉しいなぁ
私達はクラスメイト達に恵まれた。
彼と二人、目を合わせ笑う。皆の優しさが少し恥ずかしくて暖かかった。
彼氏の様子がおかしいです(私が嫌ですか?いいえ、好きすぎただけです)
私の手を引き何かを言いかけるも、私を見ると顔を赤くして俯いてしまう。
デートしてから、なんだか高橋くんの様子がおかしいです。
「あんた達何かあったの?」
夏木が呆れたように言った。
私の肩に額を擦り付けている高橋くん。いつもなら幸せそうに笑っている彼は今、頬を赤くして難しい顔で黙り込んでいる。
それでも私の手を離すことはないけれど。
「いや、特に何もないと思うんだけど」
私にも何故高橋くんがこうなったのかがわからない。夏木と二人首を傾げる。
グイッ。腕が引かれた。高橋くんに目を向けると、涙で潤んだ瞳で私を睨んでいる。
「僕を無視しないで・・・」
彼はムッとしながらも不安そうに呟く。拗ねた子供のような彼にクスリと笑い、頭を撫でるため手を伸ばす。
すると高橋くんはギュッと音がしそうなくらい強く目を瞑ってしまった。
あのふにゃりとした笑顔が見れると思っていた私は固まる。
──もしかして、本当に気付かないうちに私が何かしてしまったのか?
そう思ってしまったら、もう彼の頭を撫でる事は出来なかった。
「・・・・・・ごめん」
私の言葉に、高橋くんが目を開く。離れていく私の手を見て彼が驚いている。
「私、高橋くんに嫌な事してたんだよね。全然気付かなかった」
「え?真木さ・・・」
「ごめんね」
高橋くんが私の名を呼びかけていたけど、少し頭を冷やしたくて教室を出た。
彼のあの反応に拒絶された気がして、なんだか胸がひどく痛んだ。
一人静かな廊下を歩く。いつもなら隣に高橋くんがいるのに、今はいない。
その事実に胸に穴があいたような気持ちになる。やるせなくて溜め息をついた。
「真木!!」
夏木の声に背後を振り向く。彼女はひどく息を切らしていた。
「高橋くんがおかしいの!教室に早く戻って!」
その言葉を聞いた瞬間、廊下を走る。なんだが嫌な予感がした。
「何、これ・・・」
教室内の惨状に、呆然とする。
机や椅子が倒され、教科書や荷物が散乱していた。クラスメイト達は教室の片隅に集まって、床に俯き、座り込んでいる高橋くんを見ていた。
「真木!やっと来たか!」
安堵した男子の声に、肩を震わせ高橋くんが顔を上げる。
──ひどい顔だった。
暗く淀んだ瞳からホロホロと涙が零れ、顔は青褪めている。絶望しか感じられない、虚無の表情。
「高橋くん・・・?」
そっと彼の名を呼んで、近づく。
「真木、さん?どこに行ってたの?」
「僕から離れないでって、言ったのに」
「ずっと一緒だよって言ったのに」
私の手を引き、腕の中に抱き込んで彼は話続ける。痛いほどにキツい抱擁に、眉をひそめる。
「何で?僕の何がいけなかったの?」
「・・・高橋くん」
「もう頭を撫でてくれないの?」
「高橋くん」
「・・・・・・僕を、捨てるの?」
「高橋くん!!」
強く、叫ぶように彼を呼ぶ。
ビクリと体を揺らした高橋くんから力が抜けた。いまだに涙を流し続ける彼の頬に触れる。
血の気が引いて冷たい肌。
「・・・離れないよ。ずっと一緒にいるよ」
私は高橋くんの気持ちをわかっていなかった。只一方的に彼の気持ちを決めつけて離れた結果がこれだ。
私が、彼をひどく傷付けてしまった。
私を見つめる彼の瞳が不安に揺れる。
──本当に?
彼の声が聞こえた気がした。
「傷付けてごめんね。だから泣き止んで」
高橋くんの額に、目元に、頬に、キスを落とす。もう、泣かないで欲しかった。
「真木さん」
彼は顔を赤くさせて、ふにゃりと笑う。まだ涙は流れていたけど、私の好きなあの顔で。
あの後、クラスメイト達を間に挟みつつも高橋くんと話し合ったところ、彼のあの反応は私に対する拒絶ではなく、デート終わりに私がした額へのキスを意識してしまった故のものだったらしい。
「もっとしっかり話し合ってから行動しなさい!」
「真木は決めつけるのを止めろ!」
「高橋くんも悲しかったのはわかるけど、もう少し落ち着いて!」
「二人とももうハラハラさせないで」
「「「「わかった!?」」」」
「「ごめんなさい」」
話を聞いたクラスメイト達からはすごく怒られた。だけど皆教室の片付けを嫌がることなく手伝ってくれ、迷惑をかけてしまった私達を責める事もしなかった。
高橋くんと二人お礼を言えば、私達を仕方ない子を見るような目で見て笑う。
「改めて話の内容を聞くと盛大な惚気だもんな」
「さすがお似合いカップル」
「彼女いない俺への当て付けかよ」
「二人とも相思相愛じゃんね」
教室に笑い声が広がる。
──あぁ、嬉しいなぁ
私達はクラスメイト達に恵まれた。
彼と二人、目を合わせ笑う。皆の優しさが少し恥ずかしくて暖かかった。
彼氏の様子がおかしいです(私が嫌ですか?いいえ、好きすぎただけです)
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