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一章~伊角光希編~
17 キリアンからの宣戦布告
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「良く気付いたな、アシル」
頭の中でアシルが『キリアンお兄様……』と呟いた声が震えていた。
「キリアンお兄様こそ、僕とお茶したいなら声をかけてくだされば良かったのに」
「ほぅ。階段から落ちてから、随分と性格が変わったようだな。以前は大人しいだけのガキだったのに」
「そのガキにお兄様であるエリアス様を取られたのが、そんなに悔しいですか?」
「何を!? 俺はお前たちの結婚など認めないし、祝福もしない。アンナがあまりにも可哀想だ」
「アンナ様には申し訳ないことをしたと思っております。でも、仕方ありません。僕とエリアス様が運命の番だったから」
キリアンの顔に血が昇っていく。
アシル本人なら、絶対に言わないセリフなのは分かっている。
前世の僕でもこんな攻撃的な言葉は言わないだろう。
決して異世界に来て気が大きくなったわけではないが、何か言い返さないと傷付くのはアシルばかり。それに、何もかもアンナ様とキリアン様の思い通りになっている現状が許せなかった。
体の中でアシルが慌てている。
アシルはこんな喧嘩を売るような事は、絶対にしない。
声には出せないが「ごめん」と思う。
キリアン様は「必ずお前をここから追い出してやる!! それくらいしなければ、アンナが報われない」と叫び、去っていった。
どうせ僕が泣いて謝るとでも思ったのだろう。
そんなこと、するものか。アシルは悪いことなどしていない。
キリアン様の後ろ姿を睨みつける。
「ねぇアシル。キリアン様って、アンナ様のことが好きなんじゃない? ここは自分の家なのに、アンナ様を異常に気にかけすぎてる。もし家同士のことを思っているにしても、公爵様もエリアス様もそこまでアンナ様だけじゃなく、クロージャー家にさえ気遣っている様子はない。それなのに、キリアン様だけがアンナ様のことを立てすぎてるように思えて仕方ないんだ」
二人は、子供の頃から特に仲が良かったと聞いた。
もしかすると、キリアン様は幼い頃からアンナ様に好意を寄せていた。しかし成長と共に、エリアス様の許嫁だと知る。
ショックだったが、その辺は貴族だから飲み込めたのだろう。
でもエリアス様は、とあるパーティーで出会ったアシルに一目惚れ。運命の番だと悟った。それからアシルも一緒に遊ぶようになったが、キリアン様はその頃からアシルを良く思ってなかったように思える。
キリアン様は、きっとアンナ様の幸せが何より最優先なんだ。
僕は少しだけキリアン様が羨ましいと思った。
やり方は褒められたものではないが、それでもこの仮定が正解だとすれば、好きな人のためにそこまで一生懸命になれるなんて、まさに愛だ。
僕の人生に、そんなものはなかった。
ガゼボの椅子に座り、ロラが帰ってくるまでぼんやりとキリアン様のことを考えていた。
ロラにキリアン様が来たと伝えると、気を失いそうになっていたが、何もされていないと言っておいた。
僕とロラはガゼボでティータイムを楽しんだ。今やすっかり心を開いてくれているロラが、僕がエリアス様を未だに寝取ったと思っているかは分からない。
でも、パーティーで初めてアシルを見た時、天使が舞い降りたかと思った。なんて思い出話を色々と聞かせてくれた。
エリアス様と僕の恋の応援などは出来ないとロラは言う。
「ただの使用人でございます。ご主人様の言うことが全てなのです。ここの侍女たちはずっとそうやって仕えてきましたから」
ロラとは母親くらい歳が離れていそうだ。
ふくよかで背も高い彼女がそばにいるだけで、守ってくれている安心感さえ感じる。
エリアス様が、僕の侍女にロラを指名してくれて良かったと思った。
頭の中でアシルが『キリアンお兄様……』と呟いた声が震えていた。
「キリアンお兄様こそ、僕とお茶したいなら声をかけてくだされば良かったのに」
「ほぅ。階段から落ちてから、随分と性格が変わったようだな。以前は大人しいだけのガキだったのに」
「そのガキにお兄様であるエリアス様を取られたのが、そんなに悔しいですか?」
「何を!? 俺はお前たちの結婚など認めないし、祝福もしない。アンナがあまりにも可哀想だ」
「アンナ様には申し訳ないことをしたと思っております。でも、仕方ありません。僕とエリアス様が運命の番だったから」
キリアンの顔に血が昇っていく。
アシル本人なら、絶対に言わないセリフなのは分かっている。
前世の僕でもこんな攻撃的な言葉は言わないだろう。
決して異世界に来て気が大きくなったわけではないが、何か言い返さないと傷付くのはアシルばかり。それに、何もかもアンナ様とキリアン様の思い通りになっている現状が許せなかった。
体の中でアシルが慌てている。
アシルはこんな喧嘩を売るような事は、絶対にしない。
声には出せないが「ごめん」と思う。
キリアン様は「必ずお前をここから追い出してやる!! それくらいしなければ、アンナが報われない」と叫び、去っていった。
どうせ僕が泣いて謝るとでも思ったのだろう。
そんなこと、するものか。アシルは悪いことなどしていない。
キリアン様の後ろ姿を睨みつける。
「ねぇアシル。キリアン様って、アンナ様のことが好きなんじゃない? ここは自分の家なのに、アンナ様を異常に気にかけすぎてる。もし家同士のことを思っているにしても、公爵様もエリアス様もそこまでアンナ様だけじゃなく、クロージャー家にさえ気遣っている様子はない。それなのに、キリアン様だけがアンナ様のことを立てすぎてるように思えて仕方ないんだ」
二人は、子供の頃から特に仲が良かったと聞いた。
もしかすると、キリアン様は幼い頃からアンナ様に好意を寄せていた。しかし成長と共に、エリアス様の許嫁だと知る。
ショックだったが、その辺は貴族だから飲み込めたのだろう。
でもエリアス様は、とあるパーティーで出会ったアシルに一目惚れ。運命の番だと悟った。それからアシルも一緒に遊ぶようになったが、キリアン様はその頃からアシルを良く思ってなかったように思える。
キリアン様は、きっとアンナ様の幸せが何より最優先なんだ。
僕は少しだけキリアン様が羨ましいと思った。
やり方は褒められたものではないが、それでもこの仮定が正解だとすれば、好きな人のためにそこまで一生懸命になれるなんて、まさに愛だ。
僕の人生に、そんなものはなかった。
ガゼボの椅子に座り、ロラが帰ってくるまでぼんやりとキリアン様のことを考えていた。
ロラにキリアン様が来たと伝えると、気を失いそうになっていたが、何もされていないと言っておいた。
僕とロラはガゼボでティータイムを楽しんだ。今やすっかり心を開いてくれているロラが、僕がエリアス様を未だに寝取ったと思っているかは分からない。
でも、パーティーで初めてアシルを見た時、天使が舞い降りたかと思った。なんて思い出話を色々と聞かせてくれた。
エリアス様と僕の恋の応援などは出来ないとロラは言う。
「ただの使用人でございます。ご主人様の言うことが全てなのです。ここの侍女たちはずっとそうやって仕えてきましたから」
ロラとは母親くらい歳が離れていそうだ。
ふくよかで背も高い彼女がそばにいるだけで、守ってくれている安心感さえ感じる。
エリアス様が、僕の侍女にロラを指名してくれて良かったと思った。
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