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一章~伊角光希編~
59 嵐の過ぎた朝
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「おはよう、アシル」
「おはようございます」
「どこか痛むところは無い?」
「多分、大丈夫です。あの、ロラはどうなったんですか?」
「安心して。命に別状はない。あとでお見舞いに行くかい?」
ロラは意識のないまま発見された。見つけたのは料理長だったらしい。
そうか、畑を監修しているのは料理長だと言っていた。きっと畑の手入れに行くために、農具を取りにいったんだ。
そして小屋の前に倒れているロラを見つけ、助けを呼んだ……。
「私が丁度、屋敷に帰ってきた時だった。馬車から降りるとやけに騒がしいから、何事かと思えば、ロラが何者かに襲われたと言うじゃないか。ロラの元へ駆けつけると、アシル……と何度も訴えてきた」
声は出ておらず、読み解くのに時間を要したが、一緒にいるはずの僕の姿が見えないことに気が付いた。
アンナ様の仕業かと、最初は考えたらしい。
しかしアンナ様は野次馬感覚でロラの様子を伺いに来た。
そこで屋敷内にいるはずのキリアン様を疑い探したが、何処にもおらず、誰も見かけていないと言う。
エリアス様は全ての使用人に離れを隈無く探すよう命じ、自分は屋敷内を探した。
もしこの屋敷内にアシルを隠すとなれば、さっきロラが見つかった場所も考慮して、昔Ωの使用人が発情期の際に閉じ篭っていた部屋。あの辺だと狙いを定めた。
「昔はΩの使用人もいたんですね」
「今よりΩの人口が多かったというのもあるが、Ωを雇うと国から雇用手当も出ていたそうだ。仕事ならいくらでもある。自宅から通えないΩの使用人を、数人住ませていた」
Ωの人口が減り、よりβが増えた今、使用人や料理人に至るまでβのみと決めているそうだ。
だから、あの人が近寄らないような離れた部屋も使わなくなっているのか。
「私もロラの容態が心配だ。しかし、慌てる必要はない。アシルには私が付いているから、医師はロラに付き添ってくれと頼んである」
「じゃあ、あの……キリアン様は……?」
「キリアンは、私からの威圧でまだ意識が戻っていない。……アシル、弟がすまなかった」
「エリアス様のせいではありません。キリアン様は、前からアンナ様の手助けをしていましたし……あ、でも……」
思い出した。
僕を罵倒しながらも、キリアン様は真実を叫んだ。
「何か、思い出したことがあるとか?」
エリアス様は、襲われた時の事を言っているようだった。
「パーティーの時に、僕に発情誘発剤を飲ませたのは、キリアン様も加担していると思っていました。でも、そうじゃなかった……キリアン様は、何も知らなかったんです」
エリアス様は顎に手を添え、頭の中で整理したように頷く。
「他に、パーティーの事で思い出したり、分かったことは?」
「……ありません」
「無理はしなくていい。体に障る」
エリアス様は朝食を運ばせると言って、侍女の所へと向かう。
見たことはある……という程度にしか認識していない、若い侍女だ。
昨夜も、僕の手当をしてくれたそうだ。
「まだ不慣れで、ちゃんと手当てになっているかどうか……」
「いえ、ありがとうございます。助かりました」
「何かあれば、何でも申し付けください。温かい紅茶を淹れますね」
侍女がティーカップに紅茶を注ぐ。
アップルティーのフルーティーな香りが湯気と共にふわりと漂う。
『あっ……そうだ』
紅茶の香りでアシルが目覚めた。
何か閃いたように、ガバっと立ち上がったような勢いで。
『りんごだった。あのパーティーの時も、手渡されたのはりんごのシャンパーニュだったのを、思い出した』
「おはようございます」
「どこか痛むところは無い?」
「多分、大丈夫です。あの、ロラはどうなったんですか?」
「安心して。命に別状はない。あとでお見舞いに行くかい?」
ロラは意識のないまま発見された。見つけたのは料理長だったらしい。
そうか、畑を監修しているのは料理長だと言っていた。きっと畑の手入れに行くために、農具を取りにいったんだ。
そして小屋の前に倒れているロラを見つけ、助けを呼んだ……。
「私が丁度、屋敷に帰ってきた時だった。馬車から降りるとやけに騒がしいから、何事かと思えば、ロラが何者かに襲われたと言うじゃないか。ロラの元へ駆けつけると、アシル……と何度も訴えてきた」
声は出ておらず、読み解くのに時間を要したが、一緒にいるはずの僕の姿が見えないことに気が付いた。
アンナ様の仕業かと、最初は考えたらしい。
しかしアンナ様は野次馬感覚でロラの様子を伺いに来た。
そこで屋敷内にいるはずのキリアン様を疑い探したが、何処にもおらず、誰も見かけていないと言う。
エリアス様は全ての使用人に離れを隈無く探すよう命じ、自分は屋敷内を探した。
もしこの屋敷内にアシルを隠すとなれば、さっきロラが見つかった場所も考慮して、昔Ωの使用人が発情期の際に閉じ篭っていた部屋。あの辺だと狙いを定めた。
「昔はΩの使用人もいたんですね」
「今よりΩの人口が多かったというのもあるが、Ωを雇うと国から雇用手当も出ていたそうだ。仕事ならいくらでもある。自宅から通えないΩの使用人を、数人住ませていた」
Ωの人口が減り、よりβが増えた今、使用人や料理人に至るまでβのみと決めているそうだ。
だから、あの人が近寄らないような離れた部屋も使わなくなっているのか。
「私もロラの容態が心配だ。しかし、慌てる必要はない。アシルには私が付いているから、医師はロラに付き添ってくれと頼んである」
「じゃあ、あの……キリアン様は……?」
「キリアンは、私からの威圧でまだ意識が戻っていない。……アシル、弟がすまなかった」
「エリアス様のせいではありません。キリアン様は、前からアンナ様の手助けをしていましたし……あ、でも……」
思い出した。
僕を罵倒しながらも、キリアン様は真実を叫んだ。
「何か、思い出したことがあるとか?」
エリアス様は、襲われた時の事を言っているようだった。
「パーティーの時に、僕に発情誘発剤を飲ませたのは、キリアン様も加担していると思っていました。でも、そうじゃなかった……キリアン様は、何も知らなかったんです」
エリアス様は顎に手を添え、頭の中で整理したように頷く。
「他に、パーティーの事で思い出したり、分かったことは?」
「……ありません」
「無理はしなくていい。体に障る」
エリアス様は朝食を運ばせると言って、侍女の所へと向かう。
見たことはある……という程度にしか認識していない、若い侍女だ。
昨夜も、僕の手当をしてくれたそうだ。
「まだ不慣れで、ちゃんと手当てになっているかどうか……」
「いえ、ありがとうございます。助かりました」
「何かあれば、何でも申し付けください。温かい紅茶を淹れますね」
侍女がティーカップに紅茶を注ぐ。
アップルティーのフルーティーな香りが湯気と共にふわりと漂う。
『あっ……そうだ』
紅茶の香りでアシルが目覚めた。
何か閃いたように、ガバっと立ち上がったような勢いで。
『りんごだった。あのパーティーの時も、手渡されたのはりんごのシャンパーニュだったのを、思い出した』
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